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アルバイトの「社員登用」手続きにおける労務上の注意点

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こんにちは。しのはら労働コンサルタントの篠原宏治です。

2017年の有効求人倍率は1.50倍に達し、44年ぶりとなる高水準を記録しました。歴史的な人材不足を背景に、最近は、優秀な人材を確保するためにアルバイトやパートを積極的に正社員登用する会社が増えてきています。更には、アルバイトから社員登用後、役員クラスにまで昇進するようなケースも耳にします。

それでは社員登用するにあたって具体的にどのように進めればよいのでしょうか?

今回は、アルバイトやパートを正社員登用する際における手続きや取扱いの留意点について解説します。

(1)社員登用における「保険」関係の取扱い

社会保険(健康保険・厚生年金)の取扱い

【アルバイト期間には社会保険に加入していなかった場合】

年金事務所に被保険者資格取得届を提出し、正社員登用日から被保険者とします。保険料計算の基礎となる標準報酬月額は、正社員登用後の賃金額に基づいて算出する「資格取得時決定」によって決定されます。

【アルバイト期間から社会保険に加入していた場合】

正社員登用を理由として行わなければならない手続きはありません。賃金額や賃金体系が変更されることになっても、引き続きアルバイト期間中に決定した標準報酬月額に基づいて保険料計算を行います。

ただし、正社員登用から3ヶ月間の賃金支給額から算出した標準報酬月額が、以前の標準報酬月額と比較して2等級以上変動した場合には、その時点(4ヶ月目)で標準報酬額を変更する「随時改定」の手続きを行う必要があることに注意してください。

雇用保険の取扱い

【アルバイト期間に雇用保険に加入していなかった場合】

ハローワークで資格取得手続きを行います。

【アルバイト期間から雇用保険に加入している場合】

社会保険と同様に正社員登用に伴って行わなければならない手続きは特にありません。

(2)社員登用における「労働基準法の適用」に関する取扱い

勤続年数や労働時間の考え方

労働基準法には「正社員」や「アルバイト」という区分はなく、全て「労働者」という取扱いとなるため、労働者としての身分が継続している限りその取扱いを変える理由は生じません。

そのため、正社員登用があったとしても勤続年数や労働時間はその前後で全て通算されます。

例えば、36協定届によって1年間に行わせることができる残業の上限は原則年360時間ですが、協定期間の途中に正社員登用したとしても、アルバイト時代の残業時間はリセットされることはなく、通算した残業時間が上限規制の対象となります。

有給休暇の取扱い

アルバイト期間中に付与された未消化の有給休暇は、正社員登用後も引き続き使用可能です。また、正社員登用後は、アルバイトから通算した勤続年数に基づいた日数の有給休暇を付与する必要があります。

なお、週の勤務日数が4日以下かつ週30時間未満の短時間労働者については、勤務日数に応じて付与日数を少なくした「比例付与」がされますが、比例付与の対象となるかどうかは、原則として付与日現在の労働条件によって決まります。

例えば、週2日勤務のアルバイトを付与日当日に正社員登用した場合、有給休暇は付与日の直近1年間に8割以上の出勤率がある場合に付与されるため、出勤率はアルバイト期間である登用日前日までの1年間で確認することになります。

一方、出勤率を満たしていた場合には、正社員として通常の日数の有給休暇を付与する必要があります。

(3)その他の取扱いに関する留意点

正社員登用によって労働条件が大きく変わることになるため、労働条件通知書や雇用契約書は改めて作成しておきましょう

また、アルバイト時に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を受けていない場合には、正社員登用の時点で提出させるようにしましょう。

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