"キャリア自律と成長"が働き続けたい組織に ~経営に響く人事戦略~【SmartHR Agenda#2 レポート】

働き続けたい組織となるために、企業はHRテックをどのように活用しているのか。企業の担当者から直接事例をうかがい、視聴者とともに考えるオンラインイベント「SmartHR Agenda #2 〜HRテック活用事例に学ぶ働き続けたい組織〜」。

Day1のクロージングセッションⅠでは、積水ハウス株式会社 執行役員 人財開発部長の藤間美樹さんを迎え、「自律的なキャリア形成を支援する人事制度改革」について単独講演を行っていただきました。

【スピーカー】

積水ハウス株式会社 執行役員 人財開発部長 藤間 美樹氏

1985年神戸大学卒業。同年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)に入社、営業、労働組合、人事、事業企画を経験。人事部では米国駐在を含め主に海外人事を担当。2005年にバイエルメディカルに人事総務部長として入社。2007年に武田薬品工業に入社し、本社部門の戦略的人事ビジネスパートナーをグローバルに統括するグローバルHRBPコーポレートヘッドなどを歴任。

2018年7月に参天製薬に入社し執行役員人事本部長などを歴任。2020年12月に積水ハウスに入社し、2022年2月より現職。M&Aは米国と欧州の海外案件を中心に10件以上経験し、米国駐在は3回、計6年となる。グローバル化の流れを日米欧の3大拠点で経験し、グローバルに通用する経営に資する戦略人事を探究。人と組織の活性化研究会「APO研」メンバー。

積水ハウスが掲げる5つのアジェンダ

今回のオンラインイベント【SmartHR Agenda#2】ですが、「アジェンダ」には、今まさに取り組まなくてはいけない課題や臨場感、そしていい意味での緊張感があると思います。本日は、積水ハウスでの取り組みを紹介しながら「働き続けたい組織」について意見交換させていただきます。

弊社の人事では、現在さまざまな改革を行っていますが、大きな柱として「キャリア形成の改革」があります。本日は「自律的なキャリア形成を支援する人事制度改革」を中心にお話ししていきますが、まずは積水ハウスの5つのアジェンダを紹介します。

  1. グローバルビジョンを実現する人財戦略
  2. 多様なキャリアを実現する複線型キャリア制度
  3. キャリア自律と社員の幸せ/キャリア面談
  4. キャリア実現をサポートする仕組み
  5. 経営・事業・従業員のつながり/経営に響く人財戦略

1.グローバルビジョンを実現する人財戦略

積水ハウスは2050年に向けたグローバルビジョンとして「『わが家』を世界一幸せな場所にする」を掲げています。そのためには「お客さまや世の中の幸せの実現」のみならず、「従業員の幸せ」も同時に考えなくてはなりません。その2つによって「積水ハウスを世界一幸せな会社にする」という目標が達成できると考えています。

従業員の幸せについては「ダイバーシティ&インクルージョン」と「働き方改革」の2本柱に「自律的なキャリア形成のサポート」を加えて人事制度改革を推進しています。この3つの柱は共に上司とメンバーのコミュニケーションが大事です。

人事制度改革をすすめようとした頃、「ジョブ型」「メンバーシップ型」という話も色々ありました。こういう取り方がわかりやすいかもしれませんが、「ジョブ型」が外国タイプ、「メンバーシップ型」が日本タイプ。そして、メンバーシップ型の日本がジョブ型を導入しはじめていて、うまくいっている企業もあれば、そうでない企業もあります。

ネックになっているのは、日本と海外ではマネージャーの責任と権限が異なり、マネジメント慣行の違いがあることが大きいと思います。それを裏付けるように、IMDの世界競争力ランキングでは、日本は63カ国中34位ながら、マネジメント慣行は最下位の63位であるなど、その傾向が表れています。

出典:日本経済新聞「世界競争力、デンマークが首位 日本は過去最低の34位」

比較論になりますが、海外に比べて日本は、マネージャーの頑張りよりもメンバーの頑張りで支えているのが大きいのではと感じ、人事制度改革を進めるうえで意識しました。

また、積水ハウスは製造業のなかでも特異的なビジネスモデルを行っている企業です。たとえば同じ製造業でも工業製品は、工場で作った画一的な商品を販売していますが、積水ハウスはお客さまのご要望に応じてオーダーメイドで家を造ります。

このように専門性を必要とするビジネスモデルということもあり、専門性で貢献している人を処遇していくことも考慮して、人事制度改革の骨子を作っています。たとえば複線型キャリアコースでは、マネジメントコース以外にスペシャリストのコースも設定するなど、それぞれ自律的なキャリアを実現できる形にしています。

そして、一般社員が管理職になるまで、いろいろな仕事に挑戦してキャリアの軸を探しやすいように意図的に職能資格制度を残しています。年功制を排除するにあたり、最短8年で管理職になることも大きな目玉です。そのためキャリア自律を推進するためのキャリア面談を重視しています。

2.多様なキャリアを実現する複線型キャリア制度

複線型キャリア制度では、管理職になる段階で「マネージャー職」「スペシャリスト職」のどちらかのコースを選択します。実際にやってみて変更したい場合、キャリアのコースを変えられる柔軟な制度になっています。

ジョブディスクリプションでよくいわれる7つの要素には、「報酬」「評価」「採用」「サクセッション」「要員計画」「キャリアマネジメント」「役割・責任明確化」があります。積水ハウスでは、このなかから3つにフォーカスしてジョブディスクリプションを作っています。

1つ目は「役割責任の明確化」です。戦略を形にする組織を作り、それぞれのポジションの役割を明確化することによって、戦略を達成する組織を作る役割を狙っています。

2つ目の目的は「サクセッションプラン」です。それぞれのポジションの役割や責任が明確化され、人の配置などにも活かされています。

3つ目は「キャリアマネジメント」。弊社ではジョブディスクリプションを社内に公開しており、「キャリアアップの機会があるか」「目指すポジションには何が求められているのか」「ポジションにたどり着くためには何をすればいいのか」などを従業員自身が考えられる仕組みになっています。

3.キャリア自律と社員の幸せ/キャリア面談

「キャリア自律と社員の幸せ」について話す際、私はアメリカの伝説の経営者、ジャック・ウェルチの「自分の運命は自分でコントロールすべきだ。さもないと誰かにコントロールされる」という言葉を引用しています。この言葉から、会社に対して我慢を重ねるのではなく、会社と社員が対等な関係となることで、自らがキャリアを構築できると思いました。

キャリア自律には「目標やビジョンに向けて進んでいる」「成長している」という実感がなければ、モチベーション維持が困難です。それを維持するためには従業員の気づきが必要で、弊社ではキャリア面談という1on1(ワンオンワン)面接を導入しています。

聞き役の上司には「話を聞くことに専念してください」「振り返りや内省を進めてください」と伝えています。もちろんそれだけでは不十分です。キャリアビジョンは、内的動機によって導き出されるものなので、キャリア面談では内的動機づけを促す外的環境を意識してサポートしています。

人財開発と組織開発の考え方

キャリア自律のための面談は、個々にフォーカスしています。組織は人の集まりなので、一人ひとりの能力を高めること、人財開発のアプローチで組織を強くすることが必要です。

また、関係性のアプローチも重視しています。上司が部下の話を傾聴することで関係性が深まり、「この人になら気持ちを打ち明けても大丈夫」という心理的安全性が増します。キャリア面談を通じてキャリア自律とともに心理的安全性の高い組織作りを心がけています。

積水ハウスでは、2020年と2021年に「幸福度診断」を実施しました。そのなかには「幸福の4つの因子」があり、「ありがとう因子」がもっとも高く現れました。積水ハウスが目指す幸せが、さまざまな角度で見えてきて面白いと思いました。

「ありがとう因子」とは、相手の幸せのために何かを行い、それを自分が幸せだと思うことです。積水ハウスの企業理念に「相手の幸せを願い、その喜びを我が喜びとする」とあり、まさに私たちが培ってきた企業風土が現れています。このように各社の企業理念を紐解いてみるのも、1つのアプローチになるのではないでしょうか。

4.キャリア実現をサポートする仕組み

「グローバルビジョンを実現する人財戦略」でもお伝えしましたが、弊社にはキャリアビジョンを描いてキャリア実現をしていくためのさまざまな工夫があります。

1つはジョブディスクリプションを公開することによって、「社内におけるキャリアアップの機会」や「目指すポジションのために求められること」「どのようにすればポジションにたどり着くか」などを明らかにしています。

私たちは「キャリアロードマップ」と呼んでいますが、キャリアコース別のコンピテンシーとして、どのような能力をどのような方法で伸ばすかも示しています。ジョブポスティングとして、掲げているキャリア自律に合致する形で、自ら希望のポジションを取りにいき、キャリア実現をしてもらう「キャリアオーナーシップ」を醸成する取り組みも開始しています。

5.経営事業従業員のつながり/経営に響く人財戦略

経営には「何を持って世の中に貢献するか」という理念が大切だと思います。従業員のキャリア自律に対する思いはそれぞれ異なりますが、世の中に貢献するキャリアビジョンがあってもいいと思います。

積水ハウスには「イノベーション&コミュニケーション」という言葉があります。「コミュニケーションのなかからイノベーションが生まれる」という想いです。

会社のグローバルビジョンと従業員のキャリアビジョンが合致することで、経営戦略とキャリア自律のベクトルが同じ方向を示す。それが「働き続けたい組織」の要件ではないかと考えています。

SmartHR Mag. は人事労務手続きを自動化するクラウド型ソフトウェア SmartHR からスピンアウトして生まれた、人事労務にフォーカスしたメディアです。人事労務に関わる人はもちろん、経営者や従業員も含む、すべての働く人たちにとって、価値あるメディアを目指します。
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