Q:会社として「女性管理職の比率を高める」と宣言したのに、なかなか進まない【人材マネジメントQ&A】


少子高齢化が進む現在では、優秀な人材を採用・確保・育成するために、人材マネジメントの重要性はますます高まっています。この企画では人事担当者が見えにくい「マネジメントの悩み」を人材マネジメントのプロが解説。ビジネスの現場でマネージャーが抱える課題に効果的なヒントをご紹介します。

今回はカルビー株式会社 常務執行役員の武田雅子さんに、女性管理職を登用するためのポイントについてご回答いただきました。

A:人事と現場が連携して動機づけ、マインドセット、リソースの確保をしましょう

私が執行役員を務めているカルビーは、女性管理職の比率をまさに高めている最中なので、気持ちがよくわかります。一言で女性管理職比率と言っても、会社によって、詰まっているポイントは異なるはずです。一番大切なのは、「なぜ女性管理職の比率を上げたいのか」を全社で共有できていることになります。

営業組織を例に挙げてみましょう。「目標数値」と「女性管理職を増やすというHOW」が決まると、HOWが独り歩きして、戦術に対するWHYやWHATが、かすんでしまうケースが少なくありません。HOWと数字は光のように早く伝わるのですが、WHYやWHATは伝わるスピードが遅いため、必ずと言っていいほど置いていかれてしまいます。

HOWと目標数値だけで進んでしまうと、たいていの場合、関係する社員が疲弊し、戦略の実行を継続できない事態になりがちです。女性管理職の比率を継続的に向上したいのであれば、「どうして取り組むのか」「そもそも取り組むことによって、会社にどのような利益をもたらすのか」というWHYとWHATを全社に浸透させておくことが重要です。

「男性のような働き方」をしなくてよい仕組みを構築

大切なのは、女性管理職が、まるで男性のような働き方をしている状態にしないことです。「ボーイズルール」に則った働き方の女性の先輩を見ていると、後輩は苦しくなってしまうので「私は管理職にはなりたくない」という気持ちを抱きます。なぜ多様性が大事で、組織でどのように活かされるのか、自分たちにとっての多様性をどのように使ったら成果に結びつくのかを、全員が答えられないといけません。

そのためにも、まず人事権を持つ上層部に、女性活躍推進の意味・意義がしっかり共有されていないと推進は難しくなります。そして、上層部の次に重要なのが、女性管理職の周囲にいる女性メンバーたちへのフォローです。「お手並み拝見」と見ているだけではなく、しっかりサポートして盛り立てていきましょう。体制を含めて、全社に動機づけられているかがカギを握ります。

目標数値だけが走ってしまうと、女性活躍推進はポジションが増えない限り、男性のポジションを減らすことになるので、男性の心が荒んでいきます。組織にとって必要だとわかっていれば、フラットなよいポジション争いにつながるのです。しかし、性別だけでHOWが走ってしまうと、男性陣に納得がいかない場合も多く、協力してもらえなくなってしまいます。

「動機づけ」「サポート体制」「できると思える経験」を提供する

組織によっては、数字のために無理やり女性を管理職に登用するケースもありますが、女性も疲れて、男性もふてくされているという最悪の状態になりかねません。環境を整備した後に、昇格させたい女性にフォーカスして、「動機づけられているか」「マインドセットされているか」をチェックしましょう。

毎日会っている上司から伝えて納得できれば一番よいのですが、場合によっては研修の場であったり、経営陣から言ってもらったり、いつもと違う場所に呼んでお話をするなどの方法も効果的です。

その次に、仕事に必要なスキルや知識があるかを検討しましょう。もちろん異動の場合もあると思うので、補完する仕組みやサポート体制があるかどうかも重要な要素になります。メンバーがまだ育成途中で、右腕になる人がいないのも困るので、本人のスキルや知識だけではなく、メンバーも含めて仕事に必要なリソースがそろっているかも大事です。

そして一番、忘れがちなのが「私でもできる」と思う気持ちです。これに効果的なのは、練習でバッターボックスに立つ経験をさせること。練習で何回かバッティングしていれば、来る球や、振ったときの感じがわかるようになります。

しかし練習をほとんどさせず、大抜擢といって周りだけ喜んで、本人はガックリきていることもよくあります。突然登用するのではなく、何かのプロジェクトリーダーに任命するとか、小さなチームでリーダーの経験をさせてみる。自分のなかで手応えになるように、「これくらいだったらできるかもしれない」という練習をさせてあげることが大切です。

人事と現場の連携で女性の管理職登用は成功する

今お話しした後ろの2つは、現場の連携がないと人事だけではできません。とくに「リソースがあるか」は、彼女たちの周りにいる上司が用意したり、確認しなければいけないので、人事と現場の連動が必要になります。

小さいバッターボックス、小さいチャンスをあげるというのも、職場やプロジェクトにアサインされているかなど、人事には計り知れないところで動いていることも多いので、連携しなければなりません。なんとなく職場の上司が「彼女はできるから」と登用してしまいがちですが、人事と現場が連携して3つの準備ができると、登用は成功するケースが多いのです。

その後、女性マネージャーのコミュニティをつくったり、メンターをつけたり、女性の先輩たちが失敗をたくさん話してあげたりするなど、継続的にフォローしていくことも必要です。

まじめにやる方ほど視野が狭くなってしまうので、「全体のなかで見ると、あなたの仕事はこのように役立っている」とか、逆に「これくらいの失敗だったら、全体で見たら全然問題ない」と、俯瞰して全体を話してくれる人がいれば、登用後もマネジメントは継続していくでしょう。

株式会社クレディセゾンで、全国のセゾンカウンターで店舗責任者を経験した後に、営業推進部トレーニング課で、現場の教育指導に携わる。その後、戦略人事部で組織開発・人材開発に関わり、2014年人事担当取締役に就任。2016年には営業推進事業部の責任者として、組織改革を推進する。2018年5月にカルビー株式会社へ転職し、全員が活躍する組織の実現に向けて、人事制度・施策改革に取り組んでいる。
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