給与が支払えなくなったとき、経営者がとるべき行動とは?
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一説では、起業してから10年後に存続している企業の割合は10%未満ともいわれています。
毎日当たり前のように会社勤めをしているとなかなか感じられませんが、事業がうまくいかなくなり、破産や精算をする企業は想像以上に多いのが現実です。
経営が苦しく資金繰りに行き詰まった場合、経営側からすると人件費が重く負担となってのしかかります。そして、給与の支払が非常に困難となることがあります。
このような時にベストな対応は、給与遅配について労働者の理解を得つつ、紛争を回避することですが、これは簡単なことではありません。
では、どのような対応をするべきなのでしょうか?
給与未払いには制裁がある
前提として知っておくべきことは、給与未払いには制裁があるということです。
給与は、労働者の生活基盤そのものであり、給与の不払いがあると、直ちに生活に困窮する上、労働者の家族にも直接重大な悪影響を与えかねます。
そのため、労働基準法上、賃金の不払いには罰則が科せられており、未払賃金には遅延損害金が付加されるなど、様々な制裁があります。
経営側としては、給与未払いを回避する最大限の努力をしなければなりません。
事業の再構築のための法制度
法律上、資金調達の方法は、新株発行(増資)、社債発行、金融機関からの融資などがありますが、すでに給与支払にも困窮するような状況に陥っている場合、通常時のこれらの資金調達は現実的ではありません。公的な融資や助成も、あまり期待できないかもしれません。
そうすると、事業を再構築して抜本的に再出発するしかありません。
現在の会社を継続する前提で考えれば、事業の存続自体が危ぶまれるような状況の場合、従業員の整理解雇(リストラ)が可能となります。
実際には、ほぼ倒産間近まで陥っている会社であれば、整理解雇とするまでもなく、従業員の側から辞職することの方が多いです。
他には、会社更生や民事再生の手続による立て直しも利用できる場合があります。
早めに手を打った方が良い
給与未払いがあっても、特に在職中は、従業員は未払賃金を請求しないことも多いです。これは職場にいながら会社相手に請求するのはためらうからです。
しかし、給与未払いがあっても、何も請求されなかったからといって、安心して放置することは避けるべきです。
会社財産がまだある場合、退職などにより会社から離れた後で、高額な遅延損害金を付加して、労働審判などにより未払賃金全額の請求をするケースはよくあります。
賃金債権の消滅時効は2年間なので、2年分の未払賃金を遅延損害金付きで一括請求されることになり、届いた労働審判申立書や訴状の高額な請求額をみて驚くことになります。
給与未払となっていた間、それを前提に事業をぎりぎりで継続していると、元従業員1人の2年分の未払賃金を一括で支払を命じられるだけで、資金ショートする可能性もあります。
賃金未払をしてようやく営業を継続できるような綱渡りの状況は長く続きません。
過去の未払賃金一括請求が引き金となって会社資金がショートした場合、取引先から連帯保証人に請求がされることになります。
代表者個人も含めて、周囲の多数の関係者に迷惑をかける事態に陥る前に、給与未払いになりそうな段階で、早めに事業の再構築や、再編手続をとり、経済的に再出発することも視野に入れて検討すべきでしょう。