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「生涯で52日も経費精算に費やしている」ITツール×生産性向上のヒントとは?【働き方を考えるカンファレンス2018】

公開日
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2018年2月15日、一般社団法人at Will Work主催の、働き方を考えるカンファレンス2018『働くを定義∞する』が開催されました。

【人 × テクノロジー】を軸に、株式会社コンカー 代表取締役社長 三村 真宗さんと、株式会社SmartHR 代表取締役社長・宮田 昇始が登壇。モデレーターは一般社団法人at Will Work 理事でSansan コネクタの日比谷 尚武氏 さんです。

全4回に分けてお送りするセッション内容をお届けします。1記事目の今回は「IT×生産性向上で働き方をどう変えていくのか」について迫ります。

IT×生産性向上で働き方をどう変えていくのか?

日比谷さん

本日はお越しいただきまして誠にありがとうございます。今回、「IT×生産性向上で働き方をどう変えていくのか」をひとつのテーマとして進行させていただきたいと思っております。

コンカーの三村さんはグローバルのITソリューション企業にお勤めになられた後、現在はコンカーを率いているため、ITを使ったソリューションによって様々な組織がどのように変わってきたのかをたくさん見ていらっしゃいます。

続いて、宮田さん率いるSmartHRは、やはり気鋭のベンチャー企業であり、企業のバックオフィス業務をITの力によっていかに効率化するかということに取り組まれています。

おふたりとも、行政の動向も見据えて様々な仕掛けをされたり、またひとりの経営者として、会社を率いる中で様々な工夫をされていらっしゃるので、「ベンダー」、「経営者」の両視点からのお話を伺いたいと思っています。本日は宜しくお願い致します。

人は生涯で「52営業日」も経費精算に費やしている

日比谷さん

それでは、ここから本編に入っていきます。まずは「ITでどう生産性が変わるのか」という質問です。

それぞれたくさんのクライアントさんがいらっしゃって、各サービスを導入することで、組織やチームの改革とか生産性向上に取り組まれていると思います。その事例の中から、どんな会社が先進的に取り組もうとしているかとか、その中で何が壁にぶつかるポイントなのか、そして導入後どんな成果があったのか、などについて事例を交えつつご紹介いただければと思います。

まずは三村さんから宜しいでしょうか?

三村さん

はい。まずコンカーが「経費精算」のサービスに着手した背景なんですが、「経費精算」っていうと、問題が2つあって、1つが「不正が起こりかねない」こと、そしてもう1つが「単純に面倒くさい」こと。

サービス開始当初は、どちらかというと「不正抑止」という目的が多かったんですが、近年ですと働き方改革の広がりととともに、この「面倒くささ」といいますか、いわゆる「生産性改善」のために取り組みという企業が非常に増えています。

私どもの仕組みというのは、経費精算を全自動化するというビジョンで取り組んでおります。経費精算にかかる時間は、月あたり1人約48分かかると言われています。これを生涯換算すると実に52日間(※)も経費精算に費やしている計算になりますが、コンカーの経費精算システムを用いることで、その時間を大体5割~8割減できる仕組みになっております。

(※編集部注:働く期間を23歳から65歳までの43年間、働く時間を1営業日あたり8時間とすると、48分 × 12ヶ月 × 43年÷ 60分 ÷ 8時間 ≒ 52営業日)

人は生涯で「52営業日」も経費精算に費やしている

経費精算の自動化を通じ働き方改革に寄与する

三村さん

考え方としては、「経費を使って」それを後から「精算して」っていう2ステップを手動でやるのではなく「経費を使ったら、自動的に精算も終わる」という1ステップで完了する自動化の仕組みですね。

例えば昨年、JR東日本との提携を発表しました。電車の乗車実績ってSuicaの中に入っています。しかしながら、交通費の計算をする際、スケジュール表をひっくり返しながら、「Yahoo!路線情報」か何かで1回1回交通費を調べて……、と経費精算をしているケースが多いと思います。

それで今回JR東日本と提携して、Suicaの乗車実績データベースとコンカーをつなぎ合わせる協業を開始することになりました。具体的には改札でSuicaを使って通ると、ただちにコンカーに乗車情報が連携され、経費精算が完了するという内容になっています。

これを代表的な例として、「経費精算業務」そのものを自動化していくということを通じ、働き方改革に寄与するという取り組みに励んでおります。

一方、「経費規定」見直しには労組などのハードルも

日比谷さん

導入するにあたっては、皆さんスパッと決断されるものなんですか? そういう仕組みを導入しようかなと悩むお客さまもいるかなと思うんですが、商談はすんなりいくんでしょうか。

三村さん

やっぱり「経費規定」や「消費プロセス」など、そういったものの簡素化をしないと、なかなか導入した後に効果が出にくいんですね。しかも、経費規定を見直すときに、例えば歴史の長い日本企業さんですと、労組が非常に強いことが多く、「経費規定」をなかなか見直せないといったような課題もあります。
で、いま日本は好景気で、最近ならではと思うんですが、「経費規定」を見直すにあたっても“有利なほう”に見直すので、全体的にシンプルにする方向で、労組と交渉している企業も最近増えてきています。

日比谷さん

なるほど。業務フローなどの効率化のために経費規定を変えねばならず、それには労組など関係各所と調整する必要がでてくるいうハードルがあるわけですね。

三村さん

そうですね。例えば、出張費として1万円もらって、その1万円の中で泊まるなどの「計画支給」が日本は多かったのですが、コンカーでは経費の実データを捉まえるので、「計画支給」ではなく「実額ベース」での支給となると、今までは1万円の中で節約して浮いた金額をお小遣いにしていた部分が無くなってしまうような、従業員にとってのある種の“不利益”も起こりかねないんです。

日比谷さん

新幹線ではなく鈍行とか夜行バスで行って、ちょっと経費浮かして小遣いにする、みたいなことができなくなっちゃうと。でも、それは企業からしたら本来不正というか……。

三村さん

そうですね。

日比谷さん

それはつまり、実データを捉まえようとする動き自体は本来正しいことなんだけれども、一方そこにインセンティブを感じていたような実態があったことを考えれば、従業員側としては抵抗を感じることもあるというわけですね。

三村さん

はい、その抵抗感はあると思います。

課題の深い人事労務のタスク。「紙文化」がボトルネックに

課題の深い人事労務のタスク。「紙文化」がボトルネックに

日比谷さん

ありがとうございます。では、続いて宮田さん、SmartHRさんはいかがですか?

宮田

元々はIT企業を中心にひろがったサービスでして、今でもやっぱりIT系の会社さんの比率が高いですが、最近では飲食業や小売業などでチェーン展開する大手のお客さまでの導入も増えてきています。

お客さまの、そもそもの課題としては、やはり人事労務周りのタスクは紙での手続き・管理がものすごく多く、アナログなんですよね。
例えば、アルバイトがたくさんいらっしゃる企業さんの場合だと、入退社のときに発生する社会保険手続きって、毎月のように大量に発生するんですよね。しかも、必ずやらなきゃいけないと。最近導入が増えているチェーン業界では、人材の入れ替わりが多いため尚更です。

会計や勤怠管理などの分野では昔からソリューションがあった一方、SmartHRが取り組んでいる社会保険手続きなどの人事労務分野では、いまだに「紙」「手書き」であるため、手続きはもちろん管理も煩雑で大きなボトルネックになっています。

その課題感が深いため、SmartHRの存在を知ってさえいただければ、その後は比較的スムーズに導入へと進むことが多いですね。なので導入におけるハードルはあまり無いかなと思います。

むしろ3,000名規模のお客さまでも、商談2回ほどで導入が決定したりすることもあります。本当に課題の深い領域であるとともに、そのソリューションとしてSmartHRがしっかりハマっていると思います。

バックオフィス業務効率化は「働き方改革」の大前提

日比谷さん

なるほど。それでは働き方改革の大前提として、様々なバックオフィス業務の効率化を検討する流れの中でSmartHRの導入が決まっていくことが多いようなイメージでしょうか。

宮田

そうですね。人事労務を担当されている方は、繁忙期だと残業が多かったり、休日出勤があったりと、かなり負担が大きいのですが、導入企業のご担当者から「SmartHRを導入後、業務がとても楽になった」というお声をいただくことが多いです。

また、SmartHR導入後、バックオフィス業務が効率化された結果、労務にかける時間が3分の1になり、新たに時間が生まれたことで、これまで着手したくてもできていなかった「働き方改革」を推し進めることができるようになった。あるクライアントさんでは、副業解禁や、リモートワーク解禁の制度企画を人事労務担当者さんが推進されて、結果、従業員6割の生産性が向上した。そんな嬉しいデータも出てきています。

それも踏まえると、SmartHRによって業務効率化し、その次のステップとして人事部主導で働き方改革に取り組んでいく。つまり、働き方改革の第一歩として、このSmartHRをご活用いただければと考えています。

(「“バックオフィスの仕事が無くなる”の本意」に続く)

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