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受け身にならず、能動的に、求めよう。well-workingを深めるためのヒント

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SmartHRの長期プロジェクト「働くの実験室(仮)」がお届けするポッドキャスト番組『WEDNESDAY HOLIDAY(ウェンズデイ・ホリデイ)』の連動企画として、メインパーソナリティを務めるフリーアナウンサーの堀井美香さんと、SmartHRのCEO芹澤雅人さんが対談。well-workingを深めるためのヒントを探りました。

  • 堀井美香(ほりい・みか)

    フリーアナウンサー。1995年にTBS入社、2022年4月よりフリーアナウンサーに。『メタウォーターpresents水音スケッチ』、ポッドキャスト『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』などに出演中。自身の朗読会はチケットが即完するほどの人気。著書に『一旦、退社。50歳からの独立日記』(大和書房)など

  • 芹澤雅人(せりざわ・まさと)

    SmartHR代表取締役CEO。2016年SmartHR入社。2017年VPoE就任。開発業務のほか、エンジニアチームのビルディングとマネジメントを担当する。その後、CTOを経て、2020年11月に取締役就任。2021年9月以降はD&I推進管掌役員も兼任し、ポリシーの制定や委員会の組成などに尽力する。2022年1月より現職

穏やかにはじまった堀井さんと芹澤さんの会話 

北欧諸国では、水曜日の夜を「Little Saturday(小さな土曜日)」と呼び、リラックスして過ごす習慣があるそうです。この習慣にインスパイアを受け、『WEDNESDAY HOLIDAY』では「心地よさってなんだろう?」を問いのテーマに、個人の働き方、組織やチームの在り方、仕事を通じた社会との関わり方などについて多彩なゲストを交えて探っています。今回は特別版として、SmartHR社内で公開収録イベントが開催されました。

40名ほどの社員を前にはじまったトークは、堀井さんが訪れるたびに“こだわりを感じる”というSmartHRのオフィスへの眼差しが話題に。

堀井

今、19時から収録をスタートしているんですが、なかにはお酒を片手にリラックスしている方もいらっしゃいますね。オフィスには仕切りがなく、オープンな雰囲気で、会議室もガラス張り。その感じがSmartHRという会社のイメージとすごくマッチしているように感じました。

集まった社員の前で話す堀井さん

芹澤

SmartHRでは、カルチャーとして“オープンであること”を重視していて。ビルのワンフロアを使ったオープンなスペースは、壁を一切なくすことで見通しを良くしています。オフィスを単なる働く場所としてだけでなく、従業員や関わる人同士が親睦を深めるスペースとして使えるように設計しているんです。

オフィス内の冷蔵庫にはお酒も用意され、終業後に誰かが飲みはじめると、それがコミュニケーションのはじまりの合図に。芹澤さんは「それを目にする瞬間がとても嬉しい」と言います。社内の懇親会だけでなく、会食帰りの二次会をオフィスで過ごす人もいるのだとか。

「well-working」をなぜ新たなミッションに?

お互いに会話のエンジンが温まってきたところで、今回のテーマである「well-workingを考える」に話題が移りました。SmartHRは2022年8月から新たなコーポレートミッションのキャッチフレーズとして「well-working」という造語を掲げています。これはミッションである「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる」ことの趣旨をひと言で表したもの。2022年1月から現職を務める芹澤さんは、このコーポレートミッション刷新の発起人でもあります。

取っ掛かりとして、堀井さんから「CEOとして1年が経った感想」を聞かれると、芹澤さんは「怒涛の1年間だった」と答えます。

芹澤

小学生のときに、校長先生って何をしているんだろう、と不思議ではありませんでしたか(笑)。まさにそんな感じで社長というものがわからなくて、まずは自分がやるべきことを見つけようと。最初は観察からはじめて、インプットもたくさんしました。そうして導き出した僕のもっとも重要な役割は、組織と事業を中長期的にきちんと成長させていくこと。そして、理想と現実のギャップを把握して埋めることです。そのためにできることは何でもやる。怒涛の1年間でしたが、人生でいちばん充実していたようにも感じます。振り返ってみると、いろんな人と会ってお話しさせていただきました。関わる人も一気に増えましたね。

芹澤さんが話す様子

そのうえで、堀井さんから「CEOとしてあらためて大切にしていることは何か」を問われると、芹澤さんは「とにかくワクワクするストーリーがあるかどうか」だと強調します。

芹澤

掲げたものが達成できるかどうかわからないし、本当にそれでいいのかどうか誰にもわからない。でも、ワクワクを自分自身も感じられるように、そして会社で働いている人にも感じてもらえるように、ストーリーを考えることがCEOの仕事だと考えています。

堀井

今日は観客にも社員の方々がたくさんいらっしゃっています。ここにいるみなさんに向けて、芹澤さんはワクワクするストーリーをどんどん共有されているのですね。

「well-working」を掲げる以前のSmartHRのコーポレートミッションは、「社会の非合理をハックする」でした。テクノロジーで人事・労務の業務効率化を目的としていたからです。しかし、事業の領域が拡大し、タレントマネジメントや従業員のポテンシャルを開放するための組織づくりをサポートするサービスの提供をスタートしたことから、「かつてのミッションだけではカバーしきれない範囲が出てきた」と芹澤さんは考え、ミッションを更新することにしたのです。

芹澤さんは「一人ひとりがその人らしく働ける社会をつくりたい」という考えに至りました。人的資本といった言葉がトレンドになっているように、今後の人口減少期を考慮しても、個々人が生産性を高め、伸び伸びと働いて能力を発揮することが求められるようになる。そういった背景から「well-being(より良く生きる)」をもじって「well-working」という言葉が生まれたのです。

well-workingの向上には、ふたつのアプローチがある

堀井さん自身も「well-working」について考えるタイミングがあった、と振り返ります。

堀井

務めていたTBSを退社し、フリーアナウンサーに転身したのは50歳のときのことです。前職では人事部の方からもアドバイスやご指摘をいただいて、きちんとお休みを取るようにしていたんです。でもフリーランスになってみると、ひとりでは際限なく働けてしまうため、今では『本気で休むこと』の難しさを感じています。

芹澤

休むこと、大事ですよね。自分としては好きなことをやっているのでwell-workingなんですけれど、最近は年齢も重ねてきて、どうしても疲れを覚えることもあって。体力的な問題よりも精神的な部分で疲れが出ます。大人がしっかり本気で休むって、やっぱりすごく大事です。

続けて堀井さんは、「自分にとって良い働き方とは何か?」という問いを芹澤さんに投げかけます。

芹澤

僕は人生観として、仕事とプライベートの境目が割と少なく、地続きなタイプ。どちらも楽しいと思えることを続けて、良い感じに生きていけたらいいなと。仮に苦しい局面が訪れたとしても、それすら“今しか経験できない感覚”だと思えるので、まったく苦ではないでしょうね。

さらに、芹澤さんはさまざまな働く人と出会うなかで、「well-workingだと感じられる人は、自分の好きなことを手掛けたり、自分の内なるパッションからの延長線上に仕事があったりする」と考えたそう。

堀井さん

では、好きな仕事に就ける人ばかりではないなかで、みんなの「well-working」を向上させることはできないのでしょうか? その問いに対して、芹澤さんはふたつのアプローチがあると回答します。

芹澤

まずは外的要因。転職する、フリーランスになるといったように、自分から働く環境を能動的に変えていくことです。もうひとつは内的要因。働く環境だけでなく、自分自身のマインドを柔軟に変えていくことが大切でしょう。

芹澤さん自身も経営者として、自分のやりたいことと周りから求められていることの食い違いはよくあると言います。その際に求められていることに着手したほうが良い場合は、興味を持って臨めるように自分自身の気持ちを切り替えていくとか。この観点に近しい話として、芹澤さんは「禅の思想の体験」を挙げます。たとえば、蕎麦をすする音。日本人にはおいしそうに聞こえる一方、外国人には不快に感じられることがあります。同じものを聞いても、受け取り方が分かれるということは、“すする音”自体に善し悪しがあるのではなく、「どう解釈するか」こそが大切なのです。

芹澤

嫌だ、と捉えたことも冷静に客観視して、別の捉え方もあるかもしれない、と思うことが大事だと考えています。自分を変えるアプローチはwell-workingにつながる観点です。

堀井

誰かから求められた仕事は、内容に関わらず、自分から楽しさを見つけていったり、幸せな考えを持ったりするようにして、向かっていこう! ということですね。

well-workingな組織はカルチャー浸透率が高い 

そこから話題は、「組織単位のwell-working」に及びました。芹澤さんは経営者の観点からも「すべての人が自分らしく働ける環境をつくっていくこと」の重要性を挙げます。まだまだ道半ばのようですが、組織が急拡大し、さまざまなバックグラウンドやステータスの人が集うようになったことで、環境を整える難易度が上がっていることを実感する機会も多くなったとか。

芹澤

そもそも人はそれぞれ異なっているので、多様性が増していくなかで最大公約数を取ることの難しさを感じるようになりました。これに対して、ひとつの道筋として機能すると感じたのが“カルチャーの浸透”でした。

さまざまなビジネスパーソンと話すなかで芹澤さんが感銘を受けたのは、リクルートやサイバーエージェントといった濃いカルチャーを持ち、なおかつ浸透率が高い会社だったとか。SmartHRも自社カルチャーの浸透について取り上げられることはありながら、前述のような企業とは社員数が桁違いです。「いかに仕組みとしてカルチャーを浸透させられるのか、これらの会社から学べることがたくさんある」と力説。そして、カルチャーが浸透している会社ほど社員のパッションも揃いやすく、結果として「well-working」に近づくのではないかと仮説を立てます。

芹澤

SmartHRは今後、世の中のwell-workingを先導できる立場になりたいですし、影響力を強めていきたいと考えています。僕らが展開しているのは人事労務分野のサービスだからこそ、医者の不養生のようになってはいけない。事業面でも組織面でも、自分たちが模範となれるような組織をつくり、広めていきたいです。

堀井

人事や労務のフォローをSmartHRのサービスが担ってくださるわけですけれども、それによって生まれる余白の時間で、人事や労務の方たちが新たなwell-workingを見つけていく。そんな広まり方も期待できますね。

左側に芹澤さん、右側に堀井さんが座り、向かい合って会話する様子

充実の内容となった今回のトークイベント。ふたりの会話から見えてきたwell-workingを深めるためのヒントは、何よりも“受け身にならず、能動的に変えていくこと”にあるようです。

芹澤

繰り返しになりますが、well-workingな組織を目指すためには、カルチャーを浸透させる仕組みをつくること。また個人のwell-workingを向上させるためには、一人ひとりが意識的に働く環境や自分自身のマインドを変えていくことが大切です。今ある環境がすべてだとは考えず、常に変化を求めることで、新しい視点が見えたり、昨日まで嫌だった仕事が楽しめたりするのではないでしょうか。

トークイベントの最後、堀井さんは「“働き方に正解はない”という思いを深めた」と話したうえで、「さまざまな働き方を楽しんでいる方や、well-workingの実践者たちを、これからも『WEDNESDAY HOLIDAY』で紹介していきたいです」と声を弾ませました。

左側に芹澤さん、右側に堀井さんが立ち、こちらをむいています。

文:長谷川賢人
撮影:下屋敷和文

※この記事は、本特集の冊子版であるJIKKEN MAG「well-workingの第一歩」内の企画を掲載したものです。冊子のPDFデータはこちら(JIKKEN MAG 特集 well-workingの第一歩)からダウンロードいただけます。ぜひ他の企画も読んでみてくださいね。

Podcast「WEDNESDAY HOLIDAY」#特別編の視聴はこちらから

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