“その人らしく働ける”をめざすSmartHRの障害者雇用。成長企業だからこそ取り組む意義
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この記事でわかること
- SmartHRは障害者雇用を推進するダイバースOpsユニットを新設し、精神障害者の雇用に注力。インクルーシブな働き方の実現を目指している
- 業務の切り出しがスムーズで、成長企業ならではの積極的に挑戦する社風が功を奏している。採用関連業務など、判断基準が明確な仕事を中心に、多くの部署から業務が集まっている
- 若い世代を中心に、自身の障害をオープンにして働く社員が多く、Slackでの即時的なフィードバックがやりがいにつながっている
目次
「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」を掲げるSmartHRでは、障害者雇用に注力してきました。
2023年には全社の障害者雇用を推進する部署「ダイバースOpsユニット」を新設。主に精神障害をもつ方が働きやすい職場環境づくりを進めています。
本記事ではダイバースOpsユニットの新名さんに、SmartHRの障害者雇用の取り組みについて伺いました。実際に依頼している業務内容や働かれている方の様子なども紹介していますので、障害者雇用に取り組む方のご参考になれば幸いです。
株式会社SmartHR ダイバースOpsユニット
特例子会社、就労移行支援事業所、障害者雇用のコンサル会社などを経て、SmartHR初の障害者雇用担当として2023年10月に入社。
数値達成だけではなく雇用の“質の向上”も重要
はじめに「障害者雇用」について教えてください。企業には何が義務づけられているのでしょう?
新名さん
現在の法律では常用雇用者数40名以上の企業に障害者雇用の義務があります。具体的には、常用雇用者数に対して2.5%は障害をもつ方を雇用しなければいけません。この2.5%を法定雇用率といいます。法定雇用率は2026年7月には2.7%に引き上げられる予定です。
また、2022年12月に可決成立した「障害者雇用促進法などの一部改正を含む改正法」では、雇用の質の向上についても明文化されました。単に雇用率を達成するだけではなく、障害のある方のキャリアアップや働きやすい職場づくりなども企業の重要な取り組みに位置付けられているんです。
障害者雇用に取り組む、SmartHRのダイバースOpsユニットの役割を教えてください。
新名さん
ダイバースOpsユニットは、さまざまな部署から業務を請け負い、SmartHR全社の障害者雇用を推進する部署です。大きく以下3つのユニットで業務を進めています。
- コーディネーターユニット:採用活動や業務設計、制度企画・運用などを担当
- インハウスユニット:個人情報を扱う業務、出社の必要な業務を担当
- 沖縄サテライトユニット:個人情報を扱わない業務、出社の必要がない業務を担当
インクルーシブな働き方のためにユニットを新設
これまでSmartHRではどのように障害者雇用に取り組んできたのですか?
新名さん
以前は、主にサテライトオフィスと、アプリのテスト業務などで障害者雇用を実施していました。
ですが、テスト業務で採用できる人数には限りがあります。また、物理的に離れたサテライトオフィスだけではなく、共にほかの社員と働く環境を用意したいとも考えていました。
そこでより多くの人を雇用し、インクルーシブな働き方を実現するために、ダイバースOpsユニットを新設。幅広く社内業務を担うBPOチーム(現インハウスユニット)を立ち上げました。
立ち上げはどのように進めたのでしょうか?
新名さん
まず採用計画を見直し、どのくらいのペースで採用していく必要があるかを明確化しました。
SmartHRは毎月多くの方が入社されますから、法定雇用率を達成するには、多くの雇用数が求められます。一方で先ほど申し上げたとおり数値の達成が目的化するのは避けたかったんです。会社の現状や数値的な理想のバランスをみながら、採用ペースを見極めていきました。
採用人数を決めた後はどういう形で働いていただくかを考えます。当初は各現場への配属も検討しましたが、社内の理解が不足しているなか現場配属することで起こり得る混乱を考慮し、まずは障害者雇用の専門部署を設置することにしました。
そこから、実際にお手伝いできそうな部門と相談しながら、お願いできる業務の切り出しや整理を実施。今回は精神障害をもつ方を多く雇用する計画を立てていたため、その前提でお任せできる業務を選定していきました。
業務の切り出しがスムーズ?成長企業だからこその気づき
業務の切り出しはどのような手順で実施しましたか?
新名さん
該当部門に「こういう業務ないですか?」と相談し、挙げられた候補から業務を選定。業務の進め方を私が担当者に伺った後、メンバーにレクチャーするといった流れで進めました。
選定においては「判断」が比較的少ないものや判断基準が明確なものを中心に選んでいます。「Aの時はこうすればいい」「Bの時はこうすればいい」といった形で、フローが明確な業務やマニュアルに落とし込みやすい業務が中心です。
一般的に障害者雇用において「業務の切り出しが1番大変」といわれます。ですが、SmartHRの場合は驚くほどスムーズでした。社内の全社定例などでダイバースOpsユニットやBPOチームについて周知したところ「こんな仕事もある」「あれもやってほしい」といった声が多く集まったんです。
なぜスムーズに進んだと思いますか?
新名さん
まず会社の成長が速く、常に人手不足や業務改善の必要性があるからだと思っています。
また、新しいことや変化を積極的に受け入れる社風もありますね。わからないけれどやってみようと行動する人が多いからこそ、業務がたくさん集まってきたのではないでしょうか。
障害者雇用というと安定した大企業が取り組むイメージがありましたが、成長企業だからこその進めやすさもあるのですね。
新名さん
私も「障害者雇用=大企業がやるもの」といったイメージがあったので、SmartHRの企業規模で障害者雇用の専任担当を設けるのは珍しいと感じていました。ですが「こんなにたくさん仕事があるから当然、専任の担当が必要だったんだな」と入社してから腑に落ちましたね。
Slackでの素早い「ありがとう」がやりがいに
実際にSmartHRではどういった障害をもつ方が、どのような業務を担当していますか?
新名さん
会社全体では精神障害のある方が最も多いです。精神障害にはうつ病や双極性障害といった精神疾患と、ADHDやASDといった発達障害が含まれます。
担当業務としてはバックオフィス系、なかでも採用関連の業務が多いです。SmartHRは入社者が多く、採用関連の作業が多数あるためです。
たとえば面接日程の確認など採用担当者のサポートや採用管理システムのメンテナンス、採用候補者アンケートのチェックなどがあります。
障害の特性以外に、SmartHRで働いている障害者の方の特徴はありますか?
新名さん
年齢層は比較的若めで20代が中心。ゲームやインターネットカルチャーが好きな方が多いですね。SmartHRとの親和性が高い方々だと感じています。
あとは自分の障害をオープンにして働くことに前向きな方が多いです。「障害があると知ってもらった方が安心」「就職できていない方々の希望になりたい」といった声をよく聞きます。これまで私の出会った障害者の方は、障害を隠して働きたい方が多い印象でしたから。私にとっても驚きでした。
業務以外に、発信へのモチベーションももっているのですね。日々働くなかで、どういったやりがいを感じているのでしょうか?
新名さん
よく聞くのは、Slackでのコミュニケーションにおける即時的なフィードバックですね。「ありがとう」や「頼りにしてます」といった反応が、大きなやりがいにつながっているようです。
たとえばサテライトオフィスのような物理的に離れたオフィスで仕事をしていると、直接依頼者から、即座に感謝の言葉をもらえないこともあります。ですがSlackなどオフラインの場で直接やりとりをしていると、すぐに反応が返ってきます。それがモチベーションになっているようです。
大企業だけでなく成長企業でも、障害者雇用は進められる
障害者雇用の今後の展望を教えてください
新名さん
まず、業務範囲や難易度を上げていきたいと考えています。最近は評価制度も整えてミッションや目標設定を進めているところです。
また、より多くの部門で障害のある方が活躍できるよう、社内の理解促進にも力を入れていきたいですね。
将来的には「障害者雇用といえばSmartHR」といわれるような会社になれたらいいなと思っています。SmartHRのような規模の会社でも、専任の担当者を置いて積極的に取り組めることを、社会に発信していきたいと思います。