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「人事労務電子化」の潮流が、社労士としての付加価値を提供するチャンスをもたらす

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こんにちは。特定社会保険労務士の山本純次です。

つい先日、2020年を目処に年末調整がネットで完結できるようになるというニュースが話題になりました。これに代表されるように、昨今クラウドサービスの普及と共に、公的手続きの電子化が一気に進んでいます。

その中で、社会保険労務士の業務のメインは社会保険労務士法第2条1項1号に記載のある、労働保険・社会保険に関する事務手続き代行業務(いわゆる1号業務)であり、その業務が侵食されるのではないか、という懸念が業界内でも広がっています。

そこで今回は、「社労士の仕事と電子化の潮流は両立するのか?」という点について考察したいと思います。

社労士にとってのクラウドサービスの利点

私が代表を務める事務所(社会保険労務士 表参道HRオフィス)では、事務所設立時からクラウドサービスなどの提供をメインに業務を受注していますが、上記のような懸念を感じることなく、ありがたいことに業務の依頼も日に日に増えております。

クラウドサービスの利点は、情報の連絡や共有がWeb上で完結し、しかも紛失や漏洩のリスクが低く、送付や手続きにかかる物的・時間的コストが削減できることです。

社会保険労務士としては、この利点を生かしながら、効率化できるところを効率化し、逆に工数のかかる特殊な手続きや個別の事情に応じた相談業務に、時間を充てることができます。

こうすることで、手続き等に今までかかっていた時間と労力を削減することにより、より幅広く多くのお客様の業務を受注できる体制が整備できると思っていますし、クライアント先では解決できない個別の事案にお力添えすることで、顧客満足度にもつながっていると感じています。

「社労士」に求められるイレギュラー解決力

人事労務の世界は「人」に係わることを扱いますので、想定外のことも起きますし、いつも型通りに対応できることばかりではありません。

例えば扶養手続きにおいては、家庭内の収入状況、親世帯の同居状況、お子様の就業形態によって対応すべきことが違ってきます。

昨今では外国籍の方の申請なども増え、複雑化しているものもあります。労務リスクは日に日に高まっており、就業規則の再整備だけでなく、社内での契約書や誓約書などの整備なども必要になってきています。

そういった意味で、社会保険労務士は型通りの業務ができるのは大前提であり、クライアントが困るような手続き対応などをどこまでサポートできるか、要はどこまでイレギュラーな事例に対して解決できるチカラがあるかが重要になってきています。

更に、事務業務に係わる時間を削減していく中で、労務リスクに関する対応やトラブル回避に向けた施策の提案、助成金や付随する官公庁の手続きの提供などができるスキルが求められてきています。

社労士業務はなくならない、むしろ高い付加価値を提供するチャンス

時代の流れは、クラウド化・電子化であり、単純な代行業務は社労士業務に関わらず、世の中のあらゆる仕事で消えていくと考えられます。10〜20年後には、日本の労働人口の49%がAIやロボットに代替されるという試算結果もあります(*1)。

労務に関する相談業務も、定型的なものはAIが自動的に答えるという時代が間近に迫っています。

ただし「人」に関する事案は、いつも型通りとはいきません。確かにシステムは便利ですが、それだけが人事労務の全てではなく、だからこそ社会保険労務士に求められることが大いにあります。

そう考えると、システムで効率化させつつ、その上で型通りに対応できない業務をどこまで埋められるかが、今後の社会保険労務士に求められるスキルになってくるのではないかと感じます。

特に、数字ではない個性や変化のある「人」を仕事として扱う社会保険労務士は、どこまで「人」に関する知識や経験を身に付け、サービスとして提供できるかが今まで以上に重要になってくるはずです。

新しい時代に取り残されることなく、進化するシステムとの共存を図り、クライアントが望むサービスを提供し続けることができれば、今まで以上に高品質で顧客満足度の高いサービスを提供できるでしょう。

また、そういったスキルや意識を持つ社会保険労務士が、求められる時代になっていくことは間違いないと感じています。

つまり、電子化の潮流によって、社労士として高い付加価値を提供するチャンスが生まれると言えるのではないでしょうか。

【参照】
*1:日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に – 株式会社野村総合研究所

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