「退職したらナゼか給与の返金を求められた・・・!」その理由とトラブル防止策を解説します。

2018.02.13 ライター: 副島 智子

こんにちは! SmartHRの副島(そえじま)です。先月、Twitterで話題になった投稿がありました。

カンタンに整理すると、このような内容です。

  • 退職後に1月の給与明細が送られてきたが、その明細の金額はマイナスで「返金(振込)をしてください」という内容。
  • 支給項目には欠勤控除としての金額だけがマイナスの数字で記載。
  • 控除項目は雇用保険料のみがマイナス数字で記載
  • 勤怠項目には有給残日数あり
  • お知らせ欄には「当月払いのため」「12月●日以降の精算」の記載あり

給与明細を受け取ったご本人や投稿を見た方が「給与の返金が必要なんておかしい!」と憤慨されていらっしゃいましたが、上記の情報だけを読み取っても推測できることがあります。

そこで今回は、なぜこうなってしまったのか、このようなことが起きないためには何が必要なのかをお伝えしたいと思います。

退職後に返金(振込)が生じるケースとは?

給与計算のスケジュールや退職の申し出の連絡フローなど、いくつかの条件が重なったことで「マイナス給与」となることは一般的にもあり、返金(振込)が必要となる状況があります。

この方が受け取った給与明細内容から想像できる状況のポイントを整理してみましょう。

(1)給与当月払いは「前払い」

給与の支払は会社によって違います。「当月払い」「翌月払い」と、会社の規程で会社が決定しています。この「当月払い」「翌月払い」には大きな違いがあります。それは、「当月払い」は前払いであるということ。

例えば、月末締め・当月25日払いの会社の12月給与は、“12月31日”締めで“12月25日”に支給します。「締め」とは勤怠の締め日です。

つまり12月1日〜12月31日までの勤務に対する給与を12月25日に支払うということになります。これが「前払い」です。12月26日〜12月31日はまだ働いていないのに、先に12月25日に給与の支給を受けているという状態です。

もっと詳しくいうと、給与計算は時間を要する業務なので、計算は支給日の数日前からスタートします。12月15日頃から給与計算をスタートさせている場合、16日以降の勤務状況はまだわからないのに25日に支払う給与を計算しているんです。

(2)退職日が勤怠締め日以外である

月末締め・当月25日払いの「当月払い」の会社であっても、勤怠の締め日である月末付の退職であれば、給与がマイナス(控除)されるということはありません。

一方で、例えば退職日が12月15日であった場合、12月分の給与は「12月1日〜12月15日まで」の分しかもらえません。

しかし、12月25日支給の給与は1ヶ月分が振り込まれているため、16日〜31日までの分を返金する必要があります。

この方のマイナス給与明細を見ると、「健康保険料・厚生年金保険料」の請求がないため、末日付退職ではないことも読みとれます。(この話はまた別途解説したいと思っています)

では、当月払いの会社で締め日以外で退職すると、必ず全員がマイナスになるのかといったらそんなことはありません。今回マイナスとなってしまった一番の原因は次の3点目だと想像します。

(3)退職することが給与計算担当者に伝わっていなかった(間に合わなかった)

従業員の退職は、一緒に仕事をしている同僚、上司だけでなく、給与計算を管轄している人事労務担当者にも大きな影響があります。

退職連絡が12月25日支給の給与計算までに伝わっている場合、伝わっていない場合(または急な退職となってしまった場合)では次のようになってしまいます。

返金をしてもらうということは従業員本人はもちろん、会社側も入金チェックなど管理が大変なので、退職がわかっている場合は、固定給の部分はあらかじめ退職日までの日数で日割り計算をする会社が多いはずです。

しかし、連絡がなかったり、急な退職となってしまい給与計算が間に合わないと「通常通り1ヶ月分を支給してしまう」ので、このようなマイナスとなってしまうのです。

残っている有給休暇はどうなる?

この方のマイナスの給与明細には有給残日数が記載されていました。「それが使われていないのはおかしい!」という議論もTwitterではあったようなのですが、会社が退職日以降の日付に勝手に有給を充てることはできません。

「12月16日〜31日までの営業日を有給で埋めてマイナスをなくしてあげましょう。」なんていうことは勝手にはできないんです。

退職日が変わってしまい、退職届を会社が書き換えることになってしまいますが、そういったことはできません(12月16日から他社に転職していたら、従業員側も困ることになってしまいますよね)。

認識違いを生まぬために必要なこと

予期しない返金請求を受けるのはとてもツライです。そして会社側も管理が大変です。

このようなことにならないためにも、退職をする時は次のポイントに注意しましょう。

(1)退職をする人の注意事項

  • 自分の給与が「当月払い」なのか「翌月払い」なのかを確認しましょう
  • 締め日以外の日付が退職日で、退職月の給与が満額(1ヶ月分)支給されている場合は返金が必要となる可能性があることを認識しておきましょう(翌月に残業手当の支給がある場合は相殺されることもあります)。
  • 残っている有給の利用について、上長や会社と退職日を決める前に相談をしましょう。退職日後に利用することはできません。

(2)上長や人事担当者の注意事項

  • 自社の給与スケジュールを把握し、関係部署への退職連絡が滞らないようにしましょう。
  • 事情により返金が必要となってしまう場合は本人に事前に説明を。いきなりマイナス給与明細(返金請求書)だけを送られてきたら、誰でもビックリしてしまいます。
  • 退職後にトラブルが起きないよう、伝えるべきことは伝え、コミュニケーションを怠らないこと。

まとめ

今回のケースは、Twitter上の情報のみでの想像となりますため、上記の状況とは異なり本当に返金が不要な場合もあるかもしれません。

個人的には、『通勤手当の記載がないので、マイナスは欠勤控除分に含まれてるのかな? 所得税は返してあげないの? 年末調整やってるから確定したものを変更しないという意志なのかな?』(12月退職のようです)など、思う部分はありましたが……、とにかく、コミュニケーションミスや誤解等により、このようなトラブルになるのはツライです。

双方、納得感をもって退職手続きを進めましょう。

 

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副島 智子

20人未満のIT系ベンチャーや数千人規模の製薬会社、外食企業など、さまざまな規模・業種の会社で人事労務の経験を持つ。前職のEC系スタートアップでは経営管理の役員を歴任し、2016年にSmartHRにジョインしプロダクトマネージャーに就任。従業員、労務担当者、経営者の3つの視点を持ち、年末調整機能の企画、電子証明書取得方法の解説など、メンドウで難しいものをわかりやすくカンタンにしてユーザーに届けることを得意とし、2017年カスタマー・エクスペリエンスチームを発足。
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