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「身元保証書」を提出しない内定者を入社拒否できるか?

2017.06.22 ライター: 飯嶋 邦彦

昨今、転職市場が賑わいを見せています。読者の皆様の中にも入社を控え、今まさに書類作成に手をつけているという方もいらっしゃるかもしれません。

ところで書類といえば、入社予定者が会社から提出を求められる書類のひとつに「身元保証書」があります。その内容を見ると「損害賠償」「連帯責任」などのワードが並び、ゾッとした覚えのある方もいらっしゃることでしょう。

「身元保証人」として依頼された側からすると、上記のようなワードに気が引けてしまうのは仕方ありません。ともすると、身元保証を断られるようなこともあり得るでしょう。

そのようなケースにおいて、入社予定者が身元保証書を提出しなかった場合、会社はこの人の入社を拒否できるのでしょうか?

「身元保証書」とは?

そもそも「身元保証」とはなんでしょうか? 通常、下記の用途で用いられます。

(1)身元保証人による内定者の身元の確認
(2)当該内定者が入社後、会社に対し何らかの損害を与えた場合に、その損害賠償の連帯責任を身元保証人に負わせる

殆どの会社の場合(2)に重きが置かれることでしょう。

身元保証書を提出しない内定者の入社を拒否することはできるのか?

実務上でも、入社前の保証人について各労働相談所等へ相談が寄せられているようですが、

・身元保証書の提出は法律などで提出を義務付けられているものではない
・反対に、会社側が保証書の提出を求めることを禁止する法律もない

この2点を鑑みると、会社側としては身元保証書の提出を強制することはできません。しかし、身元保証書の提出がされないことを理由に採用を取りやめることもできそうです。いったいどのように判断されるのでしょうか。

入社予定者(採用内定者)や従業員の置かれている立場やタイミングなどで、話は少しややこしくなります。

過去の判例を参考にしてみましょう。

入社予定者が身元保証書を提出しない場合

まず、入社予定者(採用内定者)の場合は、「大日本印刷事件(最二小判昭54.7.20)」などを参考にしますと、求職者の申込みと会社の承諾(内定通知)により労働契約が成立ものと考えられます。

その結果、採用の取りやめは、解雇と同様の考え方になり労契法16条の「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして、無効とする」条項に照らし合わせ、検討することが求められそうです。

従業員が身元保証書を提出していなかった場合

次に、従業員については、「入社後に身元保証書の不提出を理由とした解雇」を有効と判断した、「シティズ事件(東京地裁平11.12.16)」があります。

この判決では、 身元保証書を提出しなかったことが、「従業員の適格性に重大な疑惑を抱かせる重大な服務規律違反である」と判断し、解雇を有効としました。

「身元保証書」にまつわるトラブル対策4つのポイント

上記の判例をもとに、従業員の適格性を検討し、合理的な理由をもって採用の取りやめの判断をする必要があるでしょう。

そこで、身元保証書の提出に関しては下記の4点を考慮し、トラブルを招かぬよう対策を講じてください。

(1)採用面接の際「身元保証書の提出が採用の条件である」と説明すること
(2)就業規則に「身元保証書を速やかに提出しなければならない」と記載があること
(3)採用内定時に交付する各種書類の中で「身元保証書は速やかに提出する書類である」と明記すること
(4)身元保証書の提出が遅延した場合「提出するまで複数回身元保証書の提出を求める」こと

損害賠償沙汰を招かぬ組織体制や業務フローへの改善を

トラブルは、起きてからアレコレと対処するより、未然に防ぐ対策や仕組みづくりが重要です。

上記のような対策はもちろん、大前提として、従業員のオペレーション次第で損害賠償沙汰に繋がりかねないような状況であるとしたら、直ちに組織体制や業務フローを改善する必要もあるでしょう。

会社も従業員も安心して働ける、安心して入社できるような環境づくりに努めたいものですね。


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飯嶋 邦彦

フジヤ商事法務FP事務所代表。損害保険会社の自動車事故サービスセンターで示談交渉・保険金支払業務に従事する。 退職後、主に交通事故など災害・交渉事に強い行政書士・社労士・保険事務所としてワンストップサービスでお困りのお客様をサポート。人事労務面に関しては、大企業勤務の利点を生かし、組織力強化や従業員教育等中小零細企業をバックアップ。
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