大混乱を招いた「はれのひ騒動」、もし社長が逃げたときの従業員の適切な対応とは?

2018.01.16 ライター: 弁護士 浅野 英之

こんにちは、弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士の浅野英之です。

2018年1月、成人式の当日に経営者が音信不通となり、多くの新成人が振袖が着れなくなってしまったというニュースが話題になりました。

話題の中心となったのは「はれのひ株式会社」という会社で、着物のレンタルや販売を行う会社であり、成人式を控えて多くの依頼を受けていたところ、当日になって突然社長の行方がわからなくなったとのことです。

突然経営を放置して逃げてしまう社長の行為は不適切であるといわざるをえないですが、万が一の事態にそなえて、従業員としてはどのように対応したらよいかを知っておきましょう。

Q1「労働者が、会社の責任を追及されたらどうしたらよいでしょうか?」

会社の経営者が逃げてしまったというケースでは、会社の経営状況も非常に悪化していることが容易に予想できますから、会社には多くの借金が残されているかもしれません。

また、会社の経営を放置して逃げてしまうような無責任な社長の場合には、顧客や取引先からのクレームも集中するかもしれません。

労働者が、会社の責任を追及されたとしても、労働者個人と会社とは、法的に別の人格とされていますから、労働者個人が会社の責任を負わなければならないわけではありません。

ただし、会社において重要なポストについていて、会社の借金の連帯保証人となっている場合には、会社の債務を返済しなければなりません。

また、会社の社長が逃げてしまったとしても、会社の労働者でいる限りは、顧客からのクレームには誠実に対応する必要があります。

Q2「給与が未払いの場合にはどうしたらよいでしょうか?」

会社の経営者が逃げてしまったというケースでは、会社の経営状況は非常に悪く、労働者に対する給与すら未払のまま放置されているケースもあり得ます。

社長が逃げてしまったとしても、働いた分の給料を会社に対して請求することは労働者の権利として認められていますから、会社に対して訴訟を行い、勝訴すれば会社の財産を差し押さえることもできます。

ただ、社長が逃げてしまうような会社では、経営状況の悪化により、もはや差し押さえる財産もないかもしれません。

会社が破産をしてしまい、給与が支払われないまま解雇されてしまうようなケースでは、未払賃金立替払制度を利用することも検討しましょう。

この制度は、使用者である法人が倒産してしまった場合の労働者の保護のために、「賃金の支払の確保等に関する法律」という法律に基づいて,独立行政法人労働者健康安全機構に、未払い賃金の一部を立替払いしてもらえるという制度です。

Q3「マスコミの取材を受けたらどう対応したらよいでしょうか?」

今回の「はれのひ」騒動のように、会社の破産による社会的影響が大きい場合には、ニュースに報道されたり、マスコミからの取材を受けたりする場合もあります。

しかし、まだ退職しておらず会社の労働者である場合には、労働者は会社に不利益となるような行為をしてはならないこととされています。

入社時に「秘密保持契約書」、「誓約書」といった書面によって、守秘義務についての合意をしている場合には、特に注意が必要です。

Q4「退職したい場合には、どのように進めたらよいでしょうか?」

社長が会社を放置して逃げ出してしまうような場合には、社員としても、もはやこれ以上この会社で働き続けたくないと考えるかもしれません。

社長がいなくなってしまったからといって、労働者が退職できなくなるわけではないことは、労働者に「退職の自由」が保障されていることから明らかです。

ただし、社長がいない状態のまま退職をするときには、退職届を内容証明郵便で提出するなど、退職の意思表示をした証拠が残るような注意が必要です。

また、退職時に通常であればもらえるはずの離職票について、使用者である会社が手続きをしない場合には、ハローワークに対して確認の請求を行い、被保険者であったことを確認してもらい、離職票の交付を受ける必要があります。

まとめ

今回は、2018年の成人の日に、ニュースで話題となった「はれのひ」騒動にちなんで、社長が労働者を置いて逃げてしまったときに、どのような対応をするのが適切かを、弁護士が解説しました。

万が一、このようなトラブルに巻き込まれた際は、今回紹介したポイントを参考にしてみてください。

弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。企業側労働問題を得意とする石嵜・山中総合法律事務所にて、労働問題に関する数多くの相談対応、顧問先企業の労務管理を行ってきた経験を活かし、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。以降、「労働問題に強い弁護士」として、企業側はもちろん、労働者側の相談にも対応し、労働問題のスペシャリスト弁護士として活動中。特に成長中のベンチャー企業、中小企業の人事労務のコンサルティングに定評がある。 【企業向けメディア】ビズベン!
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