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「ホワイトカラーエグゼンプション」のメリット・デメリットとは?

2016.11.04 ライター: 弁護士 星野 宏明

近年、よく耳にするホワイトカラーエグゼンプションですが、導入の法改正に向けて議論が進んだかと思えば、結局、反対論が根強く導入に至らなかったり、賛否両論ある制度です。

最近は、電通での新入社員の過労死の事件もあり注目が集まっている制度でしょう。今回はなんとなく名前は知っているけど詳しくはわからない「ホワイトカラーエグゼンプション」のメリットとデメリットについて解説します。

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そもそもホワイトカラーエグゼンプションとは何なのか?

「ホワイトカラーエグゼンプション」とは、現場作業員などのブルーカラーに対し、デスクワークなどの事務系仕事を中心とするホワイトカラー労働者に対する制度で、アメリカやドイツなど、一部海外で実施されている制度です。エグゼンプションは、免除の意味です。

本来、一般にホワイトカラーエグゼンプションと呼ばれる制度は、それ自体、特に職種を限定するものではありません。

しかし、同制度の趣旨は、事務系の職種の動労者にあっては、労働時間の長短では提供された労働の価値を判断できないという点にあり、一般にはホワイトカラー労働者全体ではなく、ある程度の知識作業に従事する労働者に限られて運用されています。

日本での議論でも、一定の高収入の知識作業労働者に限定して導入することが議論されてきました。

ホワイトカラーエグゼンプションのメリット

ホワイトカラーの労働者に対し、労働時間をベースに単純に給与を決定すると、意図するかどうかに関わらず、どうしても、同じ作業と成果を長時間かかって完成させた労働者の方が残業代を多く支給され、効率よく業務を完了させ定時に帰った労働者の方が残業代が少なくなります。

これでは、効率を改善するモチベーションにかけ、労働生産性がいつまでも上がらず、短時間でいい成果を出した労働者も報われない、という発想から、出てきたのがホワイトカラーエグゼンプションであり、労働時間に対応した残業代ではなく、成果に見合った給与にしようということです。

ホワイトカラーエグゼンプションのデメリット

一方で、労働時間を重視しないということは、結果としてどんなに効率よく仕事をしても残業してしまった場合でも、いくら長時間を要しても、長時間に見合った残業代は払われないということになります。

ここから、特に労働組合側は、残業代ゼロ法案などと批判されています。

ホワイトカラーエグゼンプションは、メリット・デメリット両面ある制度であり、議論を尽くすしかありませんが、経営者側は、残業代を削減できる反面、そもそも定時に終わらないような業務量を命令された場合には、効率性をいくら追及したところで、残業代なしのサービス残業を強いられるデメリットしかないという点は強く懸念されるところです。

導入するには他にも様々な問題がある

仮に、導入するとしても、例えば、ホワイトカラーエグゼンプション導入前の残業代支給があった時期と比べて賃金水準の総額を維持しつつ、賃金総額は変更せずに、労働者への配分の段階で、残業時間ではなく、成果を基準として、人件費の配分(個々の労働者の給与)を決定するといったことが求められると思います。

また、従業員全員が定時で終わらないような業務量を課された場合は、人件費総額を維持しつつ成果に応じて労働者間の配分をしたとしても、全員の労働時間が増えれば、結局得するのは人件費総額を抑えつつ労働作業量を増やせた経営者側だけということになりかねません。

成果に応じて効率よく仕事をこなせば、短時間でもよい報酬を得られるという本来のホワイトカラーエグゼンプション制度のメリットがそもそも実現できないような労働環境を防ぐ手立ても必要となるでしょう。

心身の健康を守るために、退社から出社まで一定の時間を設けることを義務付ける案もあります。

類似の制度が導入されている諸外国でも改正の動きや賛否両論あり、我が国においてもまだまだ利害調整や弊害防止の方策が十分確保できておらず、利害対立も鮮明のため、早期の導入は難しいかもしれません。

弁護士 星野 宏明

大手法律事務所勤務を経て、東京都港区で星野・長塚・木川法律事務所開業(共同パートナー)。企業顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中国法務、外国関連企業、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件、国際案件等が専門。中国語による業務可能。
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