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社会保険に入りたがらない社員に、事業主はどう対処するべき?


時々、事業主の方から「手取りが減るのが嫌なので、私は社会保険(健康保険+厚生年金)に加入したくありませんと言っている新入社員がいるのですが、本人が加入を希望していないなら加入させなくても問題ないですか?」というご質問を頂くことがあります。

このような社員がいた場合に、加入しないという選択しはあるのでしょうか? この点、結論からいうと、加入要件を満たしていれば、加入する必要があります。詳しく見ていきましょう。

社会保険

社会保険は強制加入の制度

社会保険は、国が法律で強制加入を義務付けていますので、社員が拒否をしても、その社員の所定労働時間数などが社会保険の加入要件を満たしているならば、事業主は社会保険の加入手続を取らなければなりません。

ここで社会保険の加入基準となる所定労働時間数を確認しておきましょう。

従業員数500名以下の企業の場合は、「正社員、契約社員などフルタイムで働く社員」および「1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上のパート社員」が強制加入の対象となります。

また、もう1つの要件として、「2か月以上の雇用契約期間が見込まれること」という要件もありますが、たとえ2か月よりも短い雇用契約期間であったとしても、更新の可能性がある場合は、社会保険の加入上は「2か月以上の雇用契約期間がある」と判断されますので、ご注意ください。

また、「試用期間は社会保険に入れなくても良いですか?」というご質問をたまに受けることもありますが、試用期間も原則通り社会保険に加入させなければなりませんので、この点も勘違いをしないようご注意ください。

社会保険に加入しない場合の刑事罰

社会保険に社員を正しく加入させなかった場合、健康保険法や厚生年金保険法で、事業主には罰則が定められています。6か月以下の懲役または50万円以下の罰金です。

実務上、少なくとも私の知る限りでは、本当に罰則が適用されて刑務所行になった事業主を見たことはありませんが、社員を社会保険に正しく加入させないと、場合によっては懲役刑もあり得るのだということを覚えておいてください。もちろん「社員が入りたくないから入れなかったんだ」という言い訳も通用しません。

刑事罰よりも怖い、さかのぼり加入

実務上、刑事罰よりも怖いのは、社会保険のさかのぼり加入です。年金事務所の調査などで、社会保険に入るべき社員で未加入の人がいた場合、最大で2年間さかのぼって社会保険に加入させられるリスクがあります。社会保険料は2年間の消滅時効だからです。2年分の社会保険料をまとめて納付することになった場合、会社のキャッシュフローにとって大きなダメージであることは想像に難くないでしょう。

年金事務所は、源泉所得税の納付記録と賃金台帳を突き合せたり、法人マイナンバーを介して税務署と情報共有をしたりもしていますので、嘘をついても発覚すると考えたほうが良いです。虚偽の出勤簿や賃金台帳を作って調査の目を誤魔化した場合にも刑事罰が適用されますので、そのようなことは絶対にしないで下さい。

社員を説得しましょう

社会保険料は労使で折半して負担するものですので、2年間のさかのぼり加入となった場合は、社員本人も同様に大きな金銭的ダメージを受けます。

また、そのようなネガティブな話だけでなく、社会保険に加入すれば、国民年金だけの場合よりも手厚い厚生年金による給付が受けられます。

若い人の中には「年金なんて当てにならない」という人もいるかもしれませんが、年金は老後の生活補償だけでなく、障がい者になってしまった場合の障害年金や、家族を残して亡くなった場合の遺族年金もあります。さらには、私生活で病気や怪我により働けなくなってしまった場合も、健康保険から「傷病手当金」という給付が受けられ、最大で1年半、元の給与の約3分の2が受給できます。

そして、これまでは社員本人が手取りの中から国民年金や国保料を自分で払っていたはずですが、これが社会保険加入後は無くなるわけですから、社会保険に加入したとしても、可処分所得は実は思っているほどは減らないものです。また、国保は専業主婦や子供も含め1人1人が加入する形ですが、社会保険は「扶養」という概念があり、扶養に入っていればコスト0で家族の保険証が発行されますので、家族トータルで見ると保険料が安くなるケースも考えられます。

まとめ

対象となる全ての社員を社会保険に正しく加入することで、経営上のリスクを取り除きましょう。また、社員には、社会保険に加入するメリットを説明して理解してもらい、気持ちよく社会保険に加入して頂きたいですね。


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特定社会保険労務士 榊 裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
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