日本マイクロソフトの「リターンシッププログラム」は“再就職の壁”打破への光明となるか?


みなさんは、女性の育児休業取得率をご存知でしょうか?

平成28年度で81.8%となっています(*1)。8割以上の女性が育休を取得できていることになります。

ところがこの数字、実はちょっとしたカラクリがあります。

第1子の妊娠・出産を機に仕事を辞めてしまう女性が2012~14年で44.8%もいるのです(*2)。つまり上記の8割という数字は、仕事を辞めなかった6割弱の女性のうちの約8割ということになります。

女性全体でみたら、4割を超える程度で育休取得率はかなり低くなってしまいます。

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なぜ「再就職の壁」が立ちはだかるのか?

では、この第1子妊娠・出産を機に離職した女性は、その後どうなるのでしょう?

多くの女性が、子供に手が掛からなくなったら、再び働き始めます。

しかし、多くの場合、正社員としての再就職が難しくなってしまい、パートなどの非正規社員として働くことになります。

この要因としては、女性の復職支援サービスなどを展開する株式会社Waris代表・田中美和氏のコメントを参考にすると、以下の2点が考えられます。

  • 企業側の要因:求職者が元々持っている経験やスキルの如何に関わらず、「離職期間の長さ」を理由に正社員の採用対象から外してしまう傾向がある
  • 女性側の要因:主な再就職先である「パートタイムの仕事」では、やはりキャリアアップが困難であり、離職期間中にかつて持っていた経験やスキルに自信がもてなくなってしまうことが考えられる

実にもったいない話です。これらの女性の中には、当然、活躍しうるスキルをもった優秀な人材も多く含まれています。

育児を通して、物事を効率よく進めるスキルが上がるという話も耳にします。

それなのに、能力に関係なく、小さい子供がいることやブランクがあったというだけで、パート従業員として働いているのです。今までは、企業も彼女たちに目を向けませんでした。

優秀な人材が埋もれたままになっていたのです。

「再就職の壁」を打ち壊す取り組みの潮流

しかし、人手不足が深刻化し、「一億総活躍社会」の実現に向け、政府も様々な取り組みを展開しています。

また、先に挙げた株式会社Warisはじめ、再就職の壁にぶつかる女性たちの支援や採用に積極的な企業も現れてきました。

例えば、育児等で一旦離職した女性社員が、いつでも復職できる制度を設ける企業があります。配偶者の転勤等で引っ越さざるを得ず退職した社員に対して、転居先近くの営業所(支店)への再就職をすすめる企業もあります。

これらの企業の動きは、今まで自社の中で身につけた能力やノウハウを埋もれさせたくない、新人を採用するよりも育成コストが低く抑えられるといった、企業側のメリットも多くあります。

日本マイクロソフト「リターンシッププログラム」とは?

 

そんな中、日本マイクロソフト株式会社が「リターンシッププログラム」という新たな取り組みを始めました(*3)。

この制度は、出産・育児・介護・配偶者の転勤等で現在正社員として就業していない女性を対象に、3~6ヶ月の有給インターンシップを実施するというもの。

対象者は、日本マイクロソフトの元社員に限定されません。このプログラムの終了後は、日本マイクロソフトでの正社員化を検討するそうです。

それだけでなく、社会貢献の一環として、日本マイクロソフト以外での就業についても想定しているようです。

ブランクのある女性にとって、それが長ければ長いほど、正社員としての再就職に不安を抱くものです。

この「リターンシッププログラム」制度は、その不安を軽減することで、ブランクのある女性に、正社員としての再就職を促す効果があります。

他の働き方改革施策との組み合わせもポイント

昨今は、「テレワーク」や「サテライトオフィス」も推進されはじめ、人々の働き方は徐々に柔軟性を高めつつあります。まさに同社でも「テレワーク勤務制度」が導入されています。

これらの施策と「リターンシッププログラム」を組み合わせることで、一度離職しブランクのある優秀な女性を、同社で採用、活躍してもらう余地はより大きくなるでしょう。

会社としても、インターンシップ中に、その人の能力や適性を見極めることができるので、採用のミスマッチを防ぐことができます。

「優秀な人材の確保」は次代の必須課題であることの認識を

固定観念を捨て多様性と向き合うことで、優秀な人材を確保し生かしていくことは、「人材力」が企業競争力の源泉となるこれからの時代において、企業が生き残っていくための必須課題といえます。

先進的な企業では、このような人材確保に知恵を絞って戦略・戦術を練り、既に実行に移しています。

この日本マイクロソフトの「リターンシッププログラム」のように、旧来の労働環境ではキャリアを断念せざるを得なかった優秀な人材を掘り起こす戦略は、より重要性を増すはずです。

皆さまの会社でもこれを機に、このような人材発掘と向き合ってみてはいかがでしょうか。

【参照】
*1:男性の育休取得率3.16% 16年度、過去最高 – 日本経済新聞
*2:第1子出産離職率6割に変化の兆し 萩原牧子(2016) – リクルートワークス研究所
*3:一度キャリアを中断・離職した女性のキャリア再開・職場復帰をサポートする「リターンシップ プログラム」を展開 – 日本マイクロソフト株式会社


【編集部より】人事部に今後求められる姿とは?

人事部の現状と今後の姿
人事部の現状と今後の姿 smarthr

多くの人事担当者が「今後求められる姿」を認識しながら、現状にギャップを感じていると答えています。「人事担当者が今後求められる姿は何か?」「なぜ理想の姿と乖離があるのか?」「何が課題となっているのか?」について調査し、解決策を提示します。

社会保険労務士事務所いいだ  飯田 弘和

社会保険労務士事務所いいだ 飯田弘和   中小企業のための就業規則の作成や労務管理、従業員向けの各種セミナーを行っている社労士事務所です。 ハラスメント防止策や女性の活躍推進、仕事と介護の両立支援等についても、ご相談ください。 詳しくは、webから。
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