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固定残業代制(みなし残業代制)とは?その手続き・運用における注意点

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こんにちは。社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタントの篠原宏治です。

平成29年12月、トヨタ自動車が、一部の社員を対象に実際の残業時間にかかわらず「毎月17万円の残業手当」を支給するという、残業時間が短いほどメリットが大きい固定残業代制(みなし残業代制)を導入し、大きな話題となりました。

固定残業代制を導入している会社は少なくありません。これから賃金制度を改定して、固定残業代制の導入を検討している会社も多いことでしょう。

今回は、固定残業代制の手続きにおいて注意すべきポイントを解説します。

固定残業代制(みなし残業代制)の求人で明示すべき「基本給」「固定残業代」

職業安定法と指針の改正により、平成30年1月から、固定残業代制による求人を行う際の募集要項には、

  1. 固定残業代の時間数及び金額
  2. 固定残業代を除外した基本給の額
  3. みなし残業時間を超えた残業に対して残業代を追加で支払うこと

などを明示することが義務付けられました。

ハローワーク等に求人申込みをする場合だけでなく、自社のHPで労働者を募集する場合なども明示が求められます。


「労働条件通知書」は固定残業代(みなし残業代)に当たる部分を明確にする

労働者を雇い入れる際に交付する労働条件通知書は、「通常の労働時間の賃金」と「残業代」の明確な区分が必要です。

つまり基本給に固定残業代が含まれる場合、固定残業代に相当する時間数又は金額を明示します。

残業代(時間外手当)だけでなく休日手当や深夜手当なども固定で支払っている場合は、それぞれの賃金ごとに時間数又は金額が明確になっていることが求められます。

一方、単独の手当として固定残業代を支払っている場合は、「(固定)残業代」等の名目で支払っているのであれば特段の問題は生じませんが、「営業手当」等の一見固定残業代とはわからない名目で支払っている場合は、名目を変更するか、残業代に当たることを明記しておきましょう。

固定残業代(みなし残業代)を超える場合は「追加の残業代」を支払う

固定残業代に相当する残業時間を超えて行われた残業に対しては、追加で残業代の支払いを行う必要があります。

固定残業代制では、会社に残業代をきちんと支払う意思があっても、固定残業時間が社員の心理的な上限となってしまい、評価が下がることなどをおそれて適正な残業申請が行われず、残業代未払いが生じてしまうことが少なくありません。

国も、固定残業代制が、適正な残業申請を阻害しうる制度であることを前提とした指導を行っていて、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン 」(平成29年1月20日策定)では、固定残業代制などの措置が社員による労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認し、改善措置を講ずることを使用者の責務として課しています。

残業代未払いの原因が、社員が適正に残業申請をしなかったからだと主張しても法違反の指摘は免れません。

そのため、タイムカードやパソコンの使用履歴など、客観的記録による残業時間の適正な管理の整備が重要です。

さらに強化される固定残業代制(みなし残業代制)に対する指導

平成29年7月31日、厚生労働省労働基準局監督課長は、全国の労働局に対して、固定残業代に関する指導の徹底を指示する通達(平成29年7月31日基監発0731第1号)を発出しました。

働き方改革関連法の成立によって労働時間の把握・管理が法律上義務化されることなどとも相まって、固定残業代に対する今後指導強化されると考えられます。

適宜該当をインプットし、確実な運用を心掛けましょう。

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