店長が最低限知っておくべき「労務管理」の基礎知識5ポイント


社会保険労務士表参道HRオフィスの山本純次です。

階層化された中堅〜大企業や、広域にわたって展開するチェーン展開企業では、マネージャーや店長に労務管理の知識が求められるかと思います。

ここ最近、ブラックバイトなどの言葉が世間に広がり、人手不足も伴い、企業の労務管理の重要性が高まっています。ただ、店舗などの現場では、なかなか労務管理の知識を持ってしっかりと対応できているところは少なく、本部での指導も末端まで行き届かないケースが多く見受けられます。

広域にわたって展開するチェーン展開企業での店舗管理を任された方向けに、最低限抑えておきたい労務管理のルールを5ポイント解説していきます。

【注意点その1】入社・雇用契約

チェーン店ではアルバイトの雇用を各店舗に任せられているところも多いと思います。ただ、人を雇ったことのない方は注意が必要です。

労働基準法では、雇用時に一定の事項を(勤務時間、雇用期間、給与の支払い、休暇、退職の事項など)定めた書面を交付する義務があります(労働条件通知書)。また、労働時間や給与、休暇の関係で揉めた際に根拠になる契約書が無いとトラブルになる可能性が高まります。

働かせるということは契約で成り立つものです。その意識をしっかり持って、口約束だけで勤務させるということは絶対になくす必要があります。

(【関連記事】「雇用契約書」と「労働条件通知書」の違いってナニ!?

【注意点その2】時間管理

最も頭を悩ませるのが時間管理です。

労働基準法では1日8時間、週40時間の勤務が原則で、これを超える勤務があった場合、法定の割増をつけた残業代の支給が必要になります。時給制の方であっても法定の時間を超えた場合、割増(25%)が必要ですし、深夜勤務(夜10時から朝5時まで)の場合はさらに25%の割増をつける必要があります。

また、残業を管理するルールも必要です。タイムカードでもシステム管理でも良いですが、きちんと入退社を管理し、サービス残業を発生させない管理が必要です。時間外勤務が労使協定(いわゆる36協定)締結の時間を超えた場合、違法になることと、過重労働で病気になった場合、会社の管理責任を問われるかたちになります。

逆に、遅刻や早退など勤務が思わしくない人への注意だけでなく、不就労分の給与減などの対策も必要になってきます。

誰がどれだけ勤務しているかをしっかりと把握することは労務管理の基本です。当然手間もかかりますが、曖昧にせずしっかりと把握できる仕組みを構築する必要があります。

(【関連記事】漏れなく確実に「勤怠管理」するための方法

【注意点その3】懲戒・指導・退職

上司になると、勤務が怠慢な社員に「辞めろ」と言ってしまうケースがあるかもしれません。少し気に入らないスタッフに「明日から来なくていいよ」と言ってしまい、次の日に強制的に辞めさせられたと労働基準監督署に相談があった旨連絡が来て大慌てということもあります。

まず、日本の法律では原則即時解雇というものは認められていません。

企業が労働者を退職させる場合、30日前までの予告か30日分の給与を払うことが最低限必要で、また退職させるに相応の理由が必要です。雇用を継続させるにあたってどうしても問題があったり、何度も注意しても改善しない場合などです。そのため勤務態度が少し悪いからといって、「明日から来なくていいよ」ということはできません。

しっかりと普段の働き方を確認し、問題がある部分はしっかりと指導することで改善を促し、それができない場合に、減給や出勤停止などの懲戒を行ったうえ、最終手段が解雇というかたちになります。

店長だからといって、雇用を強制的に終了させることは、労働契約法による解雇権濫用法理の原則に伴い違法とされるケースがあります。

【注意点その4】ハラスメント

店舗では本部の目が行き届かないところで、パワーハラスメント、セクシャルハラスメントが発生する可能性があります。

店長がその対象になるケースもありますが、昨今のニュースをにぎわせている通り、ハラスメントに関しては非常に厳しい目で見られることになります。また、管理している部下がアルバイトへのハラスメント行為を行っていることが判明した場合、ハラスメントは受けた側の受け取り方で判断されるケースもありますので、しっかりと事実を把握し、双方の意見を聞いたうえで解決の方法を探る必要があります。

【注意点その5】外国人の管理

最近、飲食店店舗では外国人アルバイトが増えていると思います。雇用する際にはまず外国人登録書の確認を必ずする必要があります。また、日本で勤務をする権利があるかも確認する必要があります。

この就労許可が無い方を働かせた場合、不法就労にあてはまることとなり、不法就労者を雇用している事業者は、不法労働助長罪という罪に問われます。不法労働助長罪は3年以下の懲役若しく300万円以下の罰金に、又はこれを併科される事もあります。

また、よくある例として、留学中の学生をアルバイトとして雇用するケースがあります。この場合、原則として学校のある期間は週28時間まで、夏休みなどは1日8時間までの制限内での勤務となります。この時間を超えると違法になりますので注意が必要です。

(【関連記事】人気ラーメン店が書類送検。外国人アルバイト雇用における3つの注意点とは?

まとめ

以上、店長をはじめとした店舗管理を任される立場の方は、労務管理という面で非常に多くの問題を抱えることがあります。

最低限上記の知識を身に付けていただき、現場での問題が大きくならないよう注意が必要です。そのうえで、問題が大きくなる前に本部などに相談して、未然にトラブルを防いでいくことが重要です。


【編集部より】飲食業におけるSmartHR導入事例

飲食業でSmartHR導入後に起きた変化とは?
飲食業におけるSmartHR導入事例

アルバイト人材をはじめ、多くの入退社手続きが発生する飲食業界は、その管理も煩雑。特に多くの業態や店舗を持ちチェーン展開する会社では、管理が分散してしまうなど、より大きな課題を抱えます。この飲食業を営む企業において、SmartHRを導入した結果、どのような変化が訪れたのかに迫ります。

【こんなことがわかります】

    ・月間40時間の労務工数削減に成功したワケ
    ・なぜ約2,000名の労務管理をたった数名でできるようになったのか?
    ・労務兼任スタッフが店舗勤務に注力できるようになった話
特定社会保険労務士 山本 純次

渋谷・表参道に事務所を構える人事労務の専門家、株式会社表参道HRオフィス。代表取締役CEO。社労士として社会保険・労働保険の手続き代行から就業規則の策定、労務相談までなんでも対応いたします。事務手続き代行、給与計算、就業規則作成まで幅広い人事労務業務を対応いたします。また、ベンチャーとシステムに強い社労士としてIPO支援に関する業務まで対応しております。社会保険労務士 表参道HRオフィス
他の執筆記事はこちら

人事労務の関連記事

人事労務の新着記事

飲食・小売業の人事労務特集

人事労務用語を詳しく調べる

人事の最先端イベント開催!