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IPOを目指すベンチャーが直面する「人事労務の懸念点」5つのポイント

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社会保険労務士表参道HRオフィス山本です。

ベンチャー企業の大きな目標のひとつに、IPO(株式公開)があります。

IPOにおいては、当然ながらビジネスにおける適切な売上と利益の確保、継続性・発展性がまず求められます。また社内管理体制の整備、内部統制の整備が優先となってきます。

その中で人事労務面の問題は、他に膨大に対応しなければならない事項の中で置き去りになるケースが多いように思います。

そこで、IPO準備に入られる企業において、人事労務面において最低限確認いただきたい懸念事項を5つにまとめました。

(1)就業規則・労使協定等の規則類の確認

まずはなんといっても就業規則等が適切に整備されているかです。開業当時に作成されたものがそのままになっている場合ですと、法改正が反映されていなかったり、法定レベルに達していない条文が存在する可能性があります。

労働基準法に則った規則となっているか、また、会社での運用に沿ったものになっているかを一通り見直す必要があります。

加えて、附則規程の給与規程や育児介護休業規程などもきちんと整備されているか確認が必要です。

また、忘れがちなものとして必要な労使協定が整備されているかです。36協定はもちろん、給与から立替経費分を控除している場合、賃金控除に関する協定などの整備も必要です。

労働基準法等の諸法規に沿った規定関係の整備が、まずは第一の準備となります

(2)未払い残業の有無の確認

最も頭を悩ませるのがこの問題です。

残業代は未払いがあった場合、最大2年間まで支払う必要がありますので、これを放置していると上場審査段階で、巨額の費用を計上しないとならなくなり、利益を圧迫し上場が延期になるというケースもあります。

まずは日々の勤怠管理がしっかりできているか確認が必要です。そもそも勤怠管理をしていないというケースや、勤怠を登録していても毎日8時間の勤務時間をつけているだけという場合、正しい勤務時間を把握できる手法の導入が必要です。

そのうえで、正しく残業代が計算されているか、「みなし残業」や「裁量労働」を適用している場合に、運用が正しくできているかを確認していく必要があります。

みなし残業を設定されている場合、そのみなし残業手当の時間数の設定は問題ないか、また実際の勤務時間がみなし分を超過した場合残業代を支給しているかを確認することがポイントです。

裁量労働の場合も、深夜勤務や法定休日勤務があった場合、割増手当を支払う必要がありますが、それができているか確認してください。

加えて、管理監督者として残業代を一切支給していない人がいないか、管理監督者であっても深夜勤務があった場合残業代を支給しないとならないので、確認をしていただく必要があります。

管理監督者として社内上の権限を持っているかも確認事項の一つです。

(3)労働保険・社会保険加入者の確認

雇用保険の原則的な加入基準は週20時間以上勤務の場合です。

アルバイトの方などで、実際は週20時間以上の勤務をしているにもかかわらず、雇用保険に加入していない方はいないか確認してください

社会保険の加入基準は週30時間以上の勤務の場合、従業員501名以上の企業であれば、平成28年10月より週20時間以上の勤務で加入しないとならなくなっています。このあたりの基準を踏まえ、しっかりと勤務時間の把握するとともに、加入漏れがないよう進めていただく必要があります。

また、加入手続き漏れや、退職しているのに喪失届を出していないというケースが判明する場合もあるので、確認が必要です。

(4)人事労務トラブルの有無の確認

上場前に人事労務上のトラブルで訴訟等に進んでしまうと、上場審査に大きな影響が出る可能性があります。

直近の退職者や休職者などでトラブルになりかねない状況がないか、個々に確認いただく必要があります。上場に向けて会社が一丸となって進む中で、そこについていけない従業員も出てくる可能性があります。

そういった社内の状況にも細かく気を配っていくことが大切です。

(5)人事政策の確認

採用人数と退職率の確認、出向やグループ会社との二重就業の解消など、社員の方の人事ステータスを整備しておく必要があります。

どの人員が御社の人件費として計上されるべき対象なのかという判断は複数の会社を持たれている場合、曖昧になっているケースもあります。

また、あまりにも人の出入りが多い場合、企業の継続性といった点で疑問を持たれる可能性がありますので、定着率の底上げなど施策が必要になってきます。

以上のように、ざっと挙げただけでも様々な項目があります。

人事労務の問題は規程や社内ルールを整備するだけで解決できる問題ばかりではないので、上場を意識されている会社は普段から上記項目の問題が無いかを確認しておいていただくと良いと思います。

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