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「努力義務規定」とは?意味や罰則有無、義務規定との違いを弁護士が解説

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こんにちは、弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士の浅野英之です。

2019年4月1日に施行開始された「働き方改革関連法」に基づいて、「勤務間インターバル制度」の導入が努力義務とされました。

勤務間インターバルとは、労働者の休養時間を確保すべく、前日の終業時刻から翌日の始業時刻までの時間を一定程度あけるようにする、という労働者への配慮のための制度です。これ以外にも、労働に関する法律には「努力義務」といわれる規定が多くあります。

今回は、「努力義務」の意味、「義務」との違いや対応方法について、人事労務に詳しい弁護士が解説します。

法律における「努力義務」とは?

努力義務とは、法律の条文で「~するよう努めなければならない」「~努めるものとする」と規定された義務のことです。

つまり、「努力をすること」が義務付けられています

努力義務規定に違反したとしても、刑事罰はもちろんのこと、行政罰(過料など)の制裁もありません。努力義務は、当事者の自発的な行為をうながす効果があるに過ぎません

「努力義務規定」と「義務規定」の違いは?

努力することを求める努力義務規定とは異なり、必ず行わなければならないと定める規定を「義務規定」といいます。

「義務規定」は「~しなければならない」、「~してはならない」などと定められています。

そして、義務違反の場合の罰則があわせて規定されることもありますが、義務違反の責任は努力義務規定よりも重いものです。

「努力義務規定」への対応

努力義務にいう「努力」の評価は、人それぞれです。つまり、自分では「努力」だと考えていても、他の人にとっては「努力」と思えないということもあります。

そして、「努力義務」には法的拘束力がないため、「絶対にこのような行為を行わなければ、『努力している』とは評価されない」というルールもありません。

明確な基準がないだけに、まずは法律の条文をよく読み、その趣旨を理解し、行うべき対応を検討してください。

努力義務規定を守るためにどのような対応が必要かは、過去の裁判例などから判断する必要がある場合もありますので、判断の難しいときは、弁護士にご相談ください。

「努力義務違反」に対する制裁は?

さきほど解説しましたとおり、努力義務違反に対する罰則は法律上明文化されていません。しかし、罰則が設けられていないことは決して、「努力義務規定違反にリスクが全くない」ということではありません。

むしろ、対応を怠っていたり、努力義務とは正反対の行為を行っていたりする場合には、義務違反によって被害を受けた第三者から損害賠償請求を受けたり、監督官庁から行政指導を受けたりする可能性があります。

おわりに

今回は、法律の条文でよく使われる「~するよう努めなければならない」という努力義務規定について、詳しく解説しました。

努力義務規定の多くは、「義務規定とするには厳しすぎるが、法律の趣旨からすればぜひ守ってもらいたい」という内容が定められています。時間の経過やルールの浸透などにいって、義務規定に改正されることも少なくありませんので、アンテナを張っておく必要があるでしょう。

努力義務規定を軽く見ることのないよう、法律の趣旨にしたがってきちんとした対応が求められます。

お役立ち資料

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