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シックス・アパートが始めた挑戦的な制度「SAWS」。その内容と目指すものとは[前編]

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シックス・アパート株式会社(以下、シックス・アパート)は、社員にとって最適な働き方を追求するために、一風変わった制度を実行してきた会社です。

例えば東日本大震災をきっかけに、節電と新しい働き方の実験を目的として全社員が夏期の水曜日にリモートワークを推奨するという制度もその一つです。

さらに昨年の8月に開始した「SAWS」と呼ばれる、これまでの制度を進化させた新しい取り組みはネット上で大きな話題となりました。

コンパクトなオフィスに移転し、削減できたコストを社員のリモートワーク環境に投資する「SAWS手当」を開始し、オフィスでも自宅でも毎日自由な場所で働くことができるなど、挑戦的な取り組みとなっています。

しかし「SAWS」は、非常に合理的な考えの元に実施されていることが今回のインタビューでわかりました。今回は「SAWS」の内容や導入した狙いについて、シックス・アパート株式会社シニアコンサルタントの作村さんにお話を伺いました。

社員が株主となる「EBO」を実施

まずこの制度についてお聞きする前に、シックス・アパートさんの沿革が大切になってくると思います。なかなか紆余曲折な歴史がありますね。

作村さん

はい。元々はアメリカで創業したシックス・アパートの子会社として2003年にシックス・アパートの日本法人が設立されました。そして、2011年に親会社(当時)となる日本の上場企業の傘下に入りました。

その後、2016年7月に「EBO(エンプロイバイアウト)」という形で独立しました。経営陣が自社の株式を買い取る「MBO(マネジメントバイアウト)」はよく聞くかと思いますが、EBOは社員有志が会社の株式を取得して企業や事業部門を買収する取引です。ですので、現在は独立した企業として運営しています。

MBOではなくEBOを行った狙いを教えてください。

作村さん

EBOというのは社員自体が株主になることです。ですので、自らの考えや行動がそのまま会社の価値に直結するという状況になります。個人レベルでのスピードアップが会社のスピードアップに直結するというこのやり方が、自分たちの目指す方法ではないかと考えた結果でした。

ちょっと大げさな言い方をすると、自分の給与を増やすのは自らの働き方次第。良くも悪くも自分の仕事が株主の自分に直結します。

シックス・アパート株式会社シニアコンサルタントの作村さんとシックス・アパートのキャラクターのトフ

とんがりの正体はシックス・アパートのキャラクターのトフ

業務・コミュニケーション・セキュリティの3つが成立すればリモートワークでも会社は回る

EBOに加え、毎日好きな場所で働くことが出来る「SAWS」という制度を開始しました。この制度の目指すものは何なのでしょうか。

作村さん

「SAWS」は、EBOをきっかけに2016年8月から開始した制度で、名称の由来は「Six Apart らしい、Working Style を実践する」の頭文字をとりました。

弊社の代表は「働き方の改革は経営戦略」だと考えています。EBOをきっかけに、社員それぞれにとって理想的な働き方を考えた結果、SAWSにたどり着きました。

通勤時間を削減し、会議を減らし、集中できる環境で働くことでワークライフバランスの整った働き方に繋がっています。

しかし自分たちにとって理想的な働き方を行ったことで事業が順調に回るとは限りません。そこで、そもそも事業を安定して継続していくことに大切な事は何かを考えました。

元々週1回のリモートワーク推奨制度で、オフィス外からも支障なく業務を進めることができる仕組みを整えていました。その結果「業務、コミュニケーション、セキュリティ」この3つがポイントということが分かりました。

多くの会社において、これらを一番楽に実現出来る方法は、社員を一箇所に集めることです。ただ、その働き方は、働く人にとって多くの面で疲弊が出ているのではないかと感じていました。

疲弊と言うとどのようなことでしょうか?

作村さん

わかりやすい例だと通勤です。満員電車に揺られるだけの無駄な時間が毎日数時間も発生しています。他にも自分の自由な時間や家族との時間、健康管理に充てる時間がない毎日を過ごしているなど、一箇所に集まる働き方をすることで発生している疲弊は多々あると思います。

ですので、もし一箇所に集まるという方法以外に事業を継続することができるなら、それに越したことがないな、と。そして今なら業務とコミュニケーションとセキュリティの3つが成立するのでは?と考えました。その答えの一つがクラウド化だったんですね。

小会議用の小部屋

小会議用の小部屋にもあちこちにトフが

「オフィスでしか出来ないこと」をひとつひとつ潰していった

部分的なリモートワーク自体は珍しくなくなりつつありますが、全面的に導入となるとまだ様々な課題がありそうですが……。

作村さん

特にオフィス内での業務が多い総務チームのリモート化は課題でした。

「SAWS」の開始に合わせて弊社サービスの「SmartHR」を導入していただきましたが、課題の解決策の一つだったと聞いています。

作村さん

はい。課題の一つに「社員全員への給与明細の手渡し」があり、これを解決するのがSmartHRの給与明細機能でした。

これまでのやり方だと、給与明細の紙を受けとるためだけに全社員がオフィスに行く必要がありました。しかしそれだけのための出社はあまりにも無駄すぎますよね。

なのでSmartHRを導入し、紙の給与明細を廃止してメール配布にすることにしました。これだけではなく、他にも小さな「オフィスでしか出来ないこと」をひとつひとつ潰していきました。

最も「オフィスでしか出来ないこと」になりそうな「会議」はどのようにして解決したのでしょうか?

作村さん

もともと弊社は人数も40人程度で、フラットな組織と言うこともあり、会議が多くはありませんでした。

その上でさらに、SAWSをきっかけに、いくつかの会議をなくしたり、オンライン会議に切り替えることで会議にかける時間を少なくするなどのチューニングは行いました。

少ない会議を効率的に行うためにしていることや、使用しているツールはありますか?

作村さん

ツールは基本的にSlack(ビジネス向けコミュニケーションサービス)の音声通話機能を使用しています。Slackは全社員が常に開いているツールなのでスムーズに会議に移行できます。

しかし「会議は直接行ったほうが効率的」という考えも多そうですが、どうでしょうか。

作村さん

基本的にはすべての情報がオンラインに集約されています。なので会議前に知っておくべき情報もすべて共有されている状態となり、「それ聞いていないんだけど」などのありがちなコミュニケーションエラーが発生せずに非常にスムーズに行えています。

もちろん、新製品の立ち上げ時期や、チームの方針によって、普通にオフィスに集まって行う会議もあります。

確かにコミュニケーションの方法が限られているのは便利ですよね。KUFUもすべての情報がSlackに流れるようになっているので一箇所に情報が集約されてかなり効率的に業務が進んでいます。

オフィスのテーブルの上にもリモート対応の機器が置いてある

もちろんオフィスにもリモート対応の機器が設置

「オフィスにいる人」や「オフィス周辺の天気」・・・リモートワークならではの情報を発信

リモートするにあたって導入したツールなどはありますか?

作村さん

これまでも週一回のリモートワークがあったので、「SAWS」の開始に合わせて導入したツールは特にないのですが、使われ方は変わりましたね。例えば、Slackでのチャンネルが増え、発言がより活発になりました。

Slack活用の一例としては、オフィス内の気温や、神保町エリアの雨予報を教えてくれるBOTを運用しています。「雨が降りそう」という情報がSlackに流れるので、自宅にいる人がオフィスに向かうときなどに役立ちます。

他にも、オフィスの照度を計測して「オフィスが暗くなったよ」、「オフィスが明るくなったよ」という情報を流しています。これはオフィスに置いてある照度計とSlackを連動することで、オフィスに最初に出社したタイミングと最終退社のタイミングが分かるようになっています。

また、トフBOTに話しかけると電車遅延情報や出社している人の名前リストを出してくれます。

オフィスに届いた個人宛の郵便物はどう対応していますか?

作村さん

チーム毎の郵便物箱に入れておき、必要に応じて本人にお知らせして取りに来てもらう、という運用をしています。マーケターなど郵便をよく受け取る社員は、週1回程度は出社しているので今のところは問題ありません。

今後は、郵便物箱の中身を定期的にチェックしてSlackを使って自動でお知らせするなどもっとスマートな運用ができるといいなと思っています。

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