会社に経歴詐称がバレたら「懲戒処分」や「懲戒解雇」の対象になる?
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少し前にテレビやラジオ等で有名な男性コメンテーターの経歴詐称疑惑が大きな話題となりました。
アメリカの有名大学院卒業と言いながら実際には一般人にも公開されているセミナーを聴講しただけであったり、ヨーロッパの大学に留学経験ありと言いながら実際にはオープンキャンパスに行っただけであったりと、学歴を大きく詐称していた事実が発覚し、これによってテレビやラジオへの出演をすべて取りやめたという騒動がありました。
ここまでひどくないにせよ、入社の際に経歴詐称をしてしまうと懲戒処分の対象となるのでしょうか。
経歴詐称は懲戒処分の対象になる
仮に成績や勤務態度に問題がなかったとしても懲戒事由です。
一般的には懲戒解雇という処分が多いでしょう。しかしながら、経歴詐称をすればすべて懲戒解雇となるかというとそうではありません。
懲戒解雇というのは会社員にとって死刑宣告と同様の最終的、究極的な処分です。ですので、実際の裁判では経歴詐称があれば一律に懲戒解雇が有効ということではなく、詐称の程度、詐称した経歴と職種の関連性の強弱等を勘案して懲戒解雇の有効性を判断しているようです。
実際に懲戒解雇になったケースもある
具体例を見てみましょう。懲戒解雇が有効と判断された例として、システム開発の会社に入社する際、日本語レベルとパソコンのスキルを詐称して懲戒解雇となった事例(東京地裁平成27年6月2日判決)、証券会社に入社する際、前職を経済アナリストと偽って入社し、それが発覚して懲戒解雇となった事例(東京地裁平成25年1月31日判決)などがあります。これらは、詐称の程度が大きく、かつ詐称した経歴と会社の職種に関連性が高いものと思われます。
懲戒処分が無効になったケースも
一方、美術工芸品を扱う財団法人に入社する際、最終学歴の卒業年度を、実際には昭和54年3月であるのに昭和52年3月と偽って入社した事案については、懲戒処分を無効とする判決を下しています(東京地裁平成15年5月30日)。これは誤りが僅少であり、かつ美術工芸品を扱うという職種と経歴詐称の関連性が極めて薄いからでしょう。
もっとも、仮に重大な経歴詐称があったとしても、その会社で長期間勤務し、その後詐称が発覚したような場合は、仮に経歴詐称の程度が大きく、職種との関連性が大きかったとしても、懲戒解雇は無効となる可能性が高くなります。すでに入社に長期間勤務している以上、業務の適性があると言えるからです。
なお、経歴詐称には、大卒なのに高卒と偽ったり、ある資格を持ちながら持っていないと偽ったりするような、経歴を低く詐称することも含まれますのでご注意ください。