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「夏休みを廃止して有給休暇にできるのか?」働き方改革法への対応と注意点

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目次

こんにちは、弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士の浅野英之です。

2018年6月29日、国会において働き方改革関連法案が可決・成立しました。それに伴い、企業間においても、有給休暇5日取得の義務化に適切に対応することが求められています。

そこで、今回は、有給休暇などの法定休暇の基本的な内容と、「有給休暇5日取得の義務化」に伴う企業における取組みのポイントを紹介します。

「法定休暇」と「法定外休暇」の違い

休暇に関しては、法律上定められた「法定休暇」と、法律上の定めはないものの企業や事業所ごとに任意に決定している「法定外休暇」があります(「任意休暇」や「特別休暇」という呼び方をする場合もあります)。

「法定休暇」とは?

「法定休暇」とは、労働基準法などの法律により企業に取得を義務付けている休暇のこと言います。

具体的には、年次有給休暇(労働基準法第39条)、産前産後休暇(同法65条)、育児休業(育児休業等に関する法律第6条)などがあります。

企業がこれらの法律に反した場合には、労働基準監督署から是正勧告されたり、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」等に処せられたりする可能性があります。

「法定外休暇」とは?

「法定外休暇」とは、労働基準法などの法律によって企業に義務付けられている休暇ではなく、企業が任意に設けている休暇のことを言います。

具体的には、

  • 夏休み
  • お盆休み
  • 慶弔休暇

など様々なものがあります。

企業としては、これらの休暇を定めるか否かは自由ですが、就業規則等で定めている場合には、それを変更する際には不利益変更にあたる可能性があるので注意が必要です。

「有給休暇5日取得の義務化」に伴う企業の対応について

働き方改革関連法の施行に伴い、大企業・中小企業問わず、2019年4月1日から有給休暇の一部を取得させることが義務となります。

義務に違反する場合には、罰則等の適用もあるので適切に対応することが求められます。

「有給休暇5日取得の義務化」とは?

2019年4月1日から、企業は、有給休暇が10日以上付与される従業員に対して、付与された日から1年以内の期間に最低5日間の有給休暇の取得をさせなければなりません。

「有給休暇5日取得の義務化」への対応方法

企業における具体的な対応については、以下のフローをご参考ください。

(1)有給休暇取得状況の把握

従業員の有給休暇取得状況を正確に把握することが必要です。把握する体制が整っている確認をしましょう。

(2)日程や取得時期などの規定化

業務に支障が出ないように、日程や取得時期などを就業規則等で決めましょう。

すでに就業規則等で決まっている場合には、その規定で対応できるのかを確認しましょう。

(3)計画的付与制度の検討

「計画的付与制度」によって取得させることができるか検討しましょう(就業規則の改定、労使協定の締結が必要)。

なお、計画的に付与する場合には、個人的使用のための年休を5日間は確保しておく必要があります。

「夏休み」を廃止し「有給休暇」に変えることは許されるか?

有給休暇取得の義務化に伴い、企業においては「夏休み」を廃止し、有給休暇に変えようとする動きがみられます。

しかし、そのような変更は強制的に労働者の有休に関する時季指定権を奪うことにもなり得るため、「不利益変更」との関係で慎重に進めなければなりません。

労働条件の変更に関する法律の規定

企業など使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合には、その変更が「合理的」なものでなければなりません。

その合理性は、変更によって労働者が受ける不利益の程度、労働条件変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性等によって判断されます(労働契約法第10条)。

対応策

従来の「夏休み」日数と同じであれば労働者に与える不利益は小さいと言えますし、有給休暇とみなす日数を減らすことで労働者に与える不利益を抑えることも可能であると思います。

また、企業側にとっても、有休取得の義務化に伴い労働条件を変更する必要性もありますし、業務の支障を考慮して、特定の期間にまとめて有給休暇の時季を変更することが認められていることからしても、合理性が認められる可能性が高いと思います。

もっとも、合理性の判断はケースバイケースですので、専門家の意見等を聞きながら就業規則を変更することをお勧めいたします。
(了)

【編集部より】働き方改革関連法 必見コラム特集

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