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【労働災害時の初期段階】賠償請求や休業補償の手続きとは?

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こんにちは アクシス社会保険労務士事務所の大山敏和です。

あってはならない労働災害(労災)ではありますが、業務中または通勤途上で災害に巻き込まれた際に、当事者側・会社側ともに慌てず適切な対応ができるでしょうか。

災害で傷害を負った場合、選定する病院や、賠償請求の用意、休業の申請など、やるべきことは多岐に渡ります。

今回は、労災発生時の初期段階に焦点を当て、その際の対応について整理しておきたいと思います。

病院を選定する際の注意事項

労災で治療を受ける病院は、労災病院または、労災指定医療機関(以下:労災指定病院)であることが望ましいです。事業場内での業務災害発生時に備えて、労災を担当する窓口は、最寄りの労災指定病院を日頃からリストアップしておきましょう。

また、通勤途上での交通事故などの場合、必ずしも最寄りの労災指定病院というわけにはなりません。労災指定病院以外に担ぎ込まれたときの事後処理も心得ておきましょう。

病院ごとに異なる「療養給付」

業務災害の場合は療養補償給付と言い、通勤災害の場合は療養給付と言います。

また、治療を受ける医療機関によって、治療費の取り扱い方、届け出書類がそれぞれ変わります。

①労災指定病院の場合

労災であることを申し出れば、治療費を患者が支払う必要はありません。届け出書類は、「療養(補償)給付たる療養の給付請求書」となります。

②労災指定病院でない場合

この場合、治療費は一旦患者が支払わなければなりません。その治療費を取り戻すためには、本人または、会社の労災窓口が療養の費用を請求する手続きをする必要があり。この際には「療養(補償)給付たる療養の費用請求書」を届け出ることが求められます。

そのため、以後通院することになるのであれば、都度の窓口負担がないように労災指定病院への転院手続きをしたほうが良いでしょう。この際には、「療養(補償)給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届」を提出することになります。

第三者行為災害による賠償請求について

通勤途上の交通事故などで、その事故に加害者がいる場合を考えましょう。

交通事故での人身傷害という側面からすれば、この事案は、加害者の自賠責保(+任意保険)による損害賠償の対象になります

また、通勤途上という側面からすれば、労災保険での給付対象です。しかし、どちらからも補償されるわけではないので、どちらからの補償を先にするかを選択することになります。

どちらが先ということは一概には言えませんが、自賠責保険には補償額の上限が存在します。

・傷害:120万円まで
・後遺障害:4,000万円まで
・死亡:3,000万円まで

また、必ずしも加害者が任意保険に加入している保証はないことを考える必要があるでしょう。

休業(補償)給付

労災によって勤務ができなくなった場合、有給休暇を使うのは合理的とは言えません。有給休暇を使わないとすると、その間、基本的には給与が出なくなります。

しかし、労災保険では休業4日目から、休業(補償)給付を請求することができます。(※通勤災害でない場合、休業3日目までは、労働基準法によって会社が平均給与の60%を休業補償として支給しなければなりません)。

休業4日目からの労災保険による休業(補償)給付は、「休業(補償)給付支給請求書」を提出することで、平均賃金の80%が支給されます。

労災に関する初期段階の対応(手続き)だけでもこのように多岐にわたります。労災担当窓口は、災害発生という状況に置いても冷静さを欠くことのない適切な判断や指示が要求されます。日頃からの準備やシミュレーションを怠らないようにしましょう。

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