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働き方改革法「有給休暇5日取得義務対応」で注意すべき「不利益変更」の盲点

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こんにちは。社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタントの篠原宏治です。

4月1日に施行された改正労働基準法により、事業規模を問わず全ての会社が、10日以上の年次有給休暇が付与された社員に対して付与日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させることが義務付けられました。

この改正をうけ、休日や特別休暇を減らすことで対応する会社も見受けられますが、このような方法は問題ないのでしょうか?

今回は、年次有給休暇5日取得義務への対応と就業規則の不利益変更の注意点について解説します。

法違反を回避するために「休日を勤務日に変更すること」は問題ないのか?

年次有給休暇の取得率向上が期待される一方、実働時間の減少を避けるため、

  1. 「完全週休2日制(土日休み)」を廃止して、一部の土曜日を勤務日とする
  2. 「従来休日としていた祝日」を勤務日に変更する
  3. 夏季休暇や年末年始休暇などの「特別休暇」を廃止する

等により、従来就業規則で休日としていた日を勤務日に変更し、その日に年次有給休暇を取得させることで法違反を回避しようとする会社も見受けられます。

このような、法違反を回避するために休日を勤務日に変更することは問題ないのでしょうか?

「不利益変更」を理由に罰則に問われることはない

労働基準法第89条、第90条は、就業規則を変更する際は変更後の就業規則を労働者代表の意見書とともに所轄労働基準監督署長に届け出ることを義務付けています。

ただ、本条は就業規則を変更する際の手続きを定めたものであり、就業規則の不利益変更を禁止したり正当な変更理由を必要としたりするものではありません

また、労働者代表の意見書はあくまで「意見」であり、変更内容への合意や同意である必要はありません。「不利益変更のため同意できない」という意見書であっても労働基準法上の問題はありません。

そのため、会社が労働者の同意を得ることなく就業規則を一方的に不利益に変更したとしても、それを理由に労働基準法違反として罰則に処せられることはありません

「労働者の合意」または「合理的な理由」がない不利益変更は無効

一方、労働契約法は、就業規則を不利益変更する際の要件として、労働者の合意があること(第9条)または変更することに合理的な理由があること(第10条)が必要と定めています。

本条の規定により、労働者の合意または合理的な理由がない就業規則の変更は無効なものとして取り扱われます

「労働者の合意」は、労働者代表の合意ではなく、労働者ごとに個別の合意を得ることが必要です。労働者代表は就業規則の変更に関して労働者全体の総意として意見を述べるために選出されたにすぎず、個々の労働者の労働条件を変更、決定する権限までは有していません。

また、単に異議を述べなかっただけでは同意があったとは認定できないと解されています。

「法改正を契機に休日を勤務日に変更すること」は合理的な理由と認められない

以上より、就業規則を不利益変更したとしても、それを理由に罰則に問われることはありませんが、労働者の合意または合理的な理由がない場合は変更自体が無効となります。つまり、刑事上の責任を問われることはありませんが、民事上有効な変更と認められません。

「合理的な理由」は事案ごとに個別判断となりますが、「『年次有給休暇の取得義務化』によって実労働時間が減少することを回避するために休日を勤務日に変更すること」が合理的な理由とは言い難く、その他特段の理由がない限りは無効な変更と判断される可能性は極めて高いと言えるでしょう

なお、労働基準監督署は、就業規則の変更にお墨付きを与えているわけではありません。届出が受理されたとしても「労働基準監督署に変更が認められた」わけではなく、会社が変更後の就業規則の有効性や正当性を主張する根拠とはなりません

また、就業規則の変更が無効になると、変更当時に遡って変更自体なかったものとして取り扱われます。休日を勤務日に変更して年次有給休暇を取得させていた場合、就業規則の変更が無効になると、休日に年次有給休暇を取得させたことになるため有効な年次有給休暇の取得と認められなくなります

就業規則の不利益変更そのものは罰則に問われることはありませんが、無効とされた結果、年次有給休暇の取得義務違反として罰則に処せられる可能性があることに留意してください。

【編集部より】働き方改革関連法 必見コラム特集

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