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労働者が「タイムカードの改ざん」に泣き寝入りしないために知るべきこと

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働き方改革が叫ばれる昨今、確実な勤怠管理の重要性も問われています。

勤務実態の把握なしには、各企業に適した改善施策がどのようなものであるかは判断できません。また、労働者の勤怠管理方法も、タイムカードやICカード、パソコンの勤怠入力ソフトなど、各社によって様々です。

そんな中、残業代をめぐって、上司がまだ仕事中(残業中)であるのにタイムカードの打刻を強制したり、使用者が「裏タイムカード」を作成して出勤日を休み扱いにしていたりしていたというニュースも明らかになっています(*1)。

今回は、このように、労働時間中にタイムカードの打刻を強制されたり、タイムカードが改ざんされたりしたとき(以下、「タイムカードの改ざん」といいます。)に、労働者の側から実際の労働時間を証明することはできるのかについて解説したいと思います。

労働者側から使用者に対し「実労働時間の証拠資料」の開示請求

未払賃金等の請求において、実労働時間を立証しなければならないのは、労働者側です。

しかし、各種裁判例では、タイムカードなどの使用者が作成保存している実労働時間についての証拠資料について、訴訟開始の前後を通じ、開示を拒絶する合理的な根拠はなく、労働者からの開示請求に対して使用者は適正迅速に開示されなければならないとされています。

そのため、タイムカードの改ざんが疑われる場合には、まず「タイムカードの開示」を求めることから始まります。

「客観資料」との矛盾があれば実労働時間の主張が認められる可能性

「開示されたタイムカード」と、労働者側が所持しているシフト表や業務メールなどの「客観資料」との間に矛盾があれば、実労働時間の主張が認められることになるでしょう。

ただし、退職後に業務用PC内のメールを印刷することができなくなっているなど、退職時に実労働時間に関する資料をすべて会社に置いてきてしまっていることもあります。

いざというときに証拠が手元にあるよう、タイムカードの改ざんが疑われるときは、

(1)実際の退勤時のタイムレコーダーの時刻の写真

(2)社内PC(業務用端末)から送受信したメール履歴

(3)社内PCの起動時間の履歴

(4)上司からの残業命令、残業に関する指示内容

など、残業時間に関するものはすべて残しておくようにしましょう。

請求の際は「労働審判の申立て」または「訴訟提起」で早期解決を

では、タイムカードの改ざんの立証ができそうなとき、どのように未払残業代等を請求すればよいでしょうか。

選択肢としては任意の支払を求める訴訟外請求や労基署への申告のほか、民事調停や支払督促などもあるのですが、結局会社が任意の支払いを行わないときは労働審判訴訟(支払督促のときは督促異議が出された場合通常訴訟に移行します)になります。

ですので、最初から労働審判の申立てまたは訴訟提起を行ったほうが結果として早期解決が図れることになります。

それでは労働審判と訴訟とではどちらがよいのでしょうか?

これには、未払賃金以外の請求内容や各請求の証拠収集の程度・立証の可否、本人出頭の有無、手続終了までに要する期間、付加金及び遅延損害金請求の可否などの要素によって総合的に判断する必要がありますので、一度弁護士に相談することをお勧めします。

いつ請求のため行動するかという点については、ご存じの方も多いかもしれませんが未払いの残業代は2年で消滅時効にかかりますので、転職や再就職活動が一段落し次第、すぐに請求することを考えたほうがよいでしょう。

【参照】
*1:ヤマト運輸支店が「裏タイムカード」勝手に作成 賃金未払いも 西宮労基署が是正勧告 – 産経WEST

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