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人事・労務担当が知っておきたいHRニュース|2024年5月の振り返りと6月のポイント

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目次

こんにちは!元SmartHR社員で開業社会保険労務士の岸本です。6月は、労働保険の年度更新や算定基礎届、住民税や賞与支給などの対応もあり、人事労務業務における繁忙月ですね。

また、今年はさらに定額減税(月次減税事務)の対応も重なっていますので、人事・労務担当者にとっては例年以上に忙しくなると思います。

そうした繁忙期を少しでもスムーズに乗り切れるよう、今回もより実務目線で皆さまのお役に立てる情報をお届けしたいと思いますので、ぜひご覧ください!

5月の3トピックをポイントと振り返る

5月は、いよいよ6月から始まる月次減税事務の対応が迫っていることもあり、定額減税に関する報道も多く見られました。

一方で、育児・介護休業法や雇用保険法の改正が成立するなど、注目すべきニュースもありましたので、これらについても取り上げていきます。

ポイントを絞って、誰でも分かりやすく理解いただけるようにまとめましたので、お時間のあるときに気軽に目を通してみてください。

トピック1:育児・介護休業法の改正について(5月24日)

5月24日、改正育児・介護休業法が成立しました。近年、子育ておよび介護と仕事との両立支援がますます注目されています。今回の改正は来年の令和7年4月1日施行の内容をはじめ、実務的な影響も多いので、まずは全体像の把握から取り掛かりましょう。

改正の概要(一部抜粋)

  1. 子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充

    1. 3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関して、事業主が職場のニーズを把握したうえで、柔軟な働き方を実現するための措置(テレワークや短時間勤務等)を講じ、労働者が選択して利用できるようにすることを義務付ける。また、個別の周知や意向確認を義務付ける
    2. 所定外労働の制限の対象となる労働者の範囲を、小学校就学前の子を養育する労働者に拡大
    3. 子の看護休暇を子の行事参加の場合も取得可能とし、対象となる子の範囲を小学校3年生まで拡大(勤続6月未満の労働者を労使協定にもとづき除外する仕組みも廃止)
    4. 妊娠・出産の申し出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取・配慮を事業主に義務付ける
  2. 育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化

    1. 育児休業の取得状況の公表義務の対象を、常時雇用する労働者数が300人超の事業主に拡大
    2. 次世代育成支援対策推進法にもとづく行動計画策定時に、育児休業の取得状況等に係る状況把握・数値目標の設定を事業主に義務付ける
  3. 介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等

    1. 労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た時に、両立支援制度等の個別周知・意向確認を事業主に義務付ける
    2. 労働者等への両立支援制度等に関する早期の情報提供や、雇用環境の整備(労働者への研修等)を事業主に義務付ける
    3. 介護休暇について、勤続6月未満の労働者を労使協定にもとづき除外する仕組みを廃止

参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律案の概要 - 厚生労働省

詳細については、厚生労働省 東京労働局のホームページに特設ページも公開されていますので、ぜひご覧ください。

今回の法改正による企業に必要な対応は、ざっと以下のようなものが考えられます。そのうえで、あらかじめ各社で必要となる対応の内容や時期を確認しておくと安心です!

  1. 育児・介護に関する社内制度の整備
  2. 就業規則(育児・介護休業規程等)の改定
  3. 労使協定の内容確認と必要に沿った再締結
  4. 対象者への周知や意向の聴取・確認フローの構築
  5. 育児休業の取得状況の公表
    1. ※常時雇用する労働者数が300人超の事業主(現在は1000人超が対象)

なお、あらためて行政側からも実務ベースでの詳しい資料が公開されるはずですので、具体的な対応はその後に着手する形でよいでしょう。ただし、将来的な人事・労務担当者のリソース不足の発生を防ぐためにも、事前に効率的な仕組みを整えるなどの準備を進めておくと安心です。

たとえば、4.、5.の対応を進めるうえでのポイントのひとつとして、会社と従業員との間で必要な人事関連情報を、それぞれが負担なく収集できるフローの整備が挙げられます。

つまり、収集した情報を一元化して正確かつ安全に保管・管理し、それらをもとに集計して必要な情報を必要な形でタイムリーにアウトプットできる体制の構築が大切です。

また、これからますます人的資本情報の開示に関する動きも進んでいくと思われます。この機会にSmartHRなどの便利なクラウドサービスを利用して、社内の基幹システムの構築と人事情報の一元化を進めていくことは、企業にとっても重要なテーマともいえるでしょう。

人事データベースとは?意外と知らない人事情報の整備からはじめるDX推進

トピック2:雇用保険法の改正について(5月10日)

そして、5月10日には改正雇用保険法も成立しています。こちらは、雇用保険の適用拡大が注目ポイントでもありますが、施行時期は少し先の令和10年10月1日となっています。そのため、こちらもまずは全体像の把握が大事かと考えます。

改正の概要(一部抜粋)

  1. 雇用保険の適用拡大(令和10年10月1日施行)
    1. 雇用保険の被保険者の要件のうち、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に変更し、適用対象を拡大する
  2. 教育訓練やリスキリング支援の充実
    1. 自己都合で退職した者が、雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には、給付制限をせず、雇用保険の基本手当を受給できるようにする(自己都合で退職した者については、給付制限期間を原則2か月としているが、1か月に短縮)
    2. 教育訓練給付金について、雇用保険から支給される給付率を受講費用の最大70%から80%に引き上げる
    3. 自発的な能力開発のため、被保険者が在職中に教育訓練のための休暇を取得した場合に、その期間中の生活を支えるため、基本手当に相当する新たな給付金を創設する
  3. 育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保
  4. その他雇用保険制度の見直し

参考:雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要 - 厚生労働省

詳細については、以下をご参照ください。

こちらの改正内容からは、国が本気で学び直しや教育訓練を促進していく姿勢を感じます。

ちなみに余談にはなりますが、個人的に思い出したエピソードとして、15年以上前に私自身が社会保険労務士の受験勉強のために通った予備校の費用に対して、教育訓練給付の受給により補填できたことを今でもありがたく思っています。

また、当時と比べても教育訓練給付の金額が年々増加していることは、とてもよいことだと思います。もし要件に該当する場合には、積極的にご利用を検討されてはいかがでしょうか。

トピック3:いよいよ定額減税の対応がスタート

この記事が公開されている頃には、月次減税事務の対応もすでに進んでいることと思います。最近テレビなどでも定額減税についてのニュースを頻繁に見かけるようになりました。

従業員からの「結局のところ、定額減税によって自分はいつの給与で、いくら減税されるの?」といったお問い合わせもこれから増えると思われます。国税庁のホームページには、給与所得者向けの分かりやすいリーフレットも公開されていますので、活用できるとよさそうです。

人事・労務担当者にとっては、これから年末調整まで定額減税の対応も続くと思いますが、最後まで不備なく対応できるよう、定期的にやるべきことを確認しながら進めていけるとよいですね。定額減税に関する情報は以下をご覧ください。

6月は年次業務が盛りだくさん

トピック1:「労働保険年度更新」のワンポイントアドバイス

令和6年度の労働保険年度更新の申告・納付は「6月3日(月)~ 7月10日(水)」です。ぜひお早めに関係資料をご確認のうえ無理のないスケジュールで対応を進めていきましょう。

出典:労働保険年度更新に係るお知らせ - 厚生労働省

ワンポイントアドバイス

岸本

労働保険の年度更新における「年度」は「4月1日~翌年3月31日」となりますので、集計作業を進める前に念のためご確認いただくとよいでしょう。実務上でたまに見られるのは、前年度までの年度更新では誤って、「支給日ベース」で年度の集計・申告がされているケースです。

▼例)給与支払いが【月末締め・翌月20日払い】の場合

・誤:「4月20日支給~翌年3月20日支給(対象 3/1~翌年2/28)」の給与で集計

​・正:「5月20日支給~翌年4月20日支給(対象 4/1~翌年3/31)」の給与で集計

このようなケースでは、今年から正しい期間で集計してそのまま申告してしまうと、過去の1か月分の保険料がズレてしまうなど経理面での支障も想定されますので、あらかじめ労働局への対処方法の相談や、社内での確認・調整などをされるとよろしいかと思います。

トピック2:「算定基礎届(定時決定)」のワンポイントアドバイス

令和6年度の社会保険・算定基礎届の提出期間は「7月1日(月)~ 7月10日(水)」となりますので、こちらについても6月の最終給与が確定した後、速やかに対応ができるように準備しておきましょう。

ワンポイントアドバイス

岸本

以下のような内容は、つい忙殺されてしまうので、あらためて確認しておくとよいでしょう。

・70歳以上は被用者算定基礎届と被用者月額変更届の提出を忘れずに

・2以上事業所勤務の算定基礎届は選択事業所を管轄する事務センターへ提出

・社会保険適用促進手当が誤って報酬にカウントされていないかの確認

・現物給与の有無の確認

・8月以降の注意点

    ・8月と9月の月額変更(随時改定)予定者の届出漏れがないか確認

月額変更予定で算定基礎届の届出を省略したものの、結果として月額変更とならなかった場合には、算定基礎届の提出が別途必要となるのでご注意ください。

月額変更届については、以下の記事で詳細を解説しているので、あわせてご確認ください。

トピック3:納期の特例は納付期限をお忘れなく

源泉所得税について納期の特例を受けている企業は、今年1~6月分の納付期限が「7月10日」となっていますので、こちらもお忘れのないようにご対応ください。

なお、住民税の納期の特例については、直近で6月10日が納付期限となっています。

体調管理に注意して繁忙月を乗り切りましょう!

今月のトピックも盛りだくさんでしたが、私自身も含め、ぜひ人事・労務業務に携わる方々が、この繁忙期を無事に乗り切れるよう、体調にはくれぐれも気をつけながら過ごしていけるとよいですね。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。それでは、次回もぜひご覧ください!

お役立ち資料

社労士解説つき 2024年版人事・労務向け法改正&実務対応カレンダー

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