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社労士が解説!今月のHRニュース2021年1月編(障害者雇用率引き上げ、定期昇給、新入社員受け入れなど)

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目次

あけましておめでとうございます。特定社会保険労務士の榊です。本年もどうぞ宜しくお願い致します。

コロナ禍の中、2021年がスタートしましたが、東京都での感染者が多い日で1日当たり2,000人を超えるなど、状況は厳しさを増しています。

このような厳しい時代ではありますが、労使が力を合わせて乗り越えていきたいものです。

※本稿に書かれている情報は2021年1月25日時点でのものです。最新情報については厚生労働省のWebサイトなどを参考にしてください。

2020年12月のトピックの振り返り

(1)雇用調整助成金の再延長等

雇用調整助成金の緊急対応期間は、2021年2月末まで延長され、その後は段階的に縮小されていく予定でしたが、11の都道府県に緊急事態宣言が出されるなど、足元の状況を鑑み、2021年3月まで再延長されることとなりました。

また、新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金は、先月の記事で2021年2月末まで延長されたと説明してましたが、こちらも最終的には、2021年3月末までの延長が確定しました。

社会保険料のコロナ特例の随時改定については、先月の記事の時点では延長に関する情報が出ておりませんでしたが、2021年3月末までの延長が確定しました。

新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、出向により労働者の雇用を維持する場合に、出向元と出向先の双方の事業主に対して助成する産業雇用安定助成金は、申請書類などはまだ発表されていません。一方で助成内容は固まり、詳しいリーフレットがアップされています。

厚生労働省「産業雇用安定助成金(仮称)のご案内」

(2)年末調整の後処理

年末調整の完了後には、税務署への法定調書合計表・源泉徴収票の提出、および、市区町村への給与支払報告書の提出のタスクが控えています。

これらの提出期限は1月31日までとなっています。既に対応はお済みでしょうか? 万が一遅れたとしても、実務上は、直ちに何らかの罰則や行政指導を受けるリスクまではありませんのでご安心ください。

とはいえ、可能な限り早急にご対応ください。給与支払報告書を提出しないと、特別徴収の税額の決定通知書が送られて来ず、住民税の納付や給与計算の実務が滞ってしまうからです。

また、給与支払報告書の提出が大幅に遅れた場合も、住民税の決定通知書の送付が5月に間に合わなくなる恐れがあります。そうなると、給与からの新年度分の住民税の控除開始が遅れ、初回は2ヶ月分をまとめて控除せざるを得なくなるなど、従業員にも迷惑をかけてしまいかねません。ですから、円滑な労務管理の実施や労使の信頼関係の観点からも、給与支払報告書の提出は、確実に対応するようにしてください。

2021年1月のトピック

(1)社会保険料の納付猶予特例の終了

コロナ禍の影響により売上が20%以上減少した事業主が利用できる、社会保険料の「新型コロナウイルス感染症の影響による納付猶予の特例制度」が2021年2月1月までに納期が到来する保険料分までで終了となります。延長の発表はありませんので、それ以降に納期限が到来する社会保険料からは通常納付の対象となります。

しかし、目下はコロナ禍が継続しており、再度の緊急事態宣言が発出されるなど、事業環境は改善しておらず、納付できない企業が続出する可能性が懸念されます。

引き続き社会保険料の納付が難しい場合は、管轄の年金事務所に相談してください。コロナの特例は終了しますが、平時においても一時的に経営が厳しくなった企業に対する社会保険料の延納制度は存在しますので、こちらを利用して、社会保険料の納付を先延ばししていくことになります。

ただし、気を付けなければならないのは、コロナ特例による延納では延滞金は発生しませんでしたが、通常の延納制度を利用する場合は延滞金が発生してしまう点です。

また、社会保険料の納付を先送りすればするほど、未払いの社会保険料は積み上がっていきますので、経営が苦しい中でも、安易に延納しすぎないようご留意ください。

(2)障害者雇用率の引上げ

2021年3月より、障害者雇用率が2.2%から2.3%に引き上げられます

0.1%の違いですが、状況によっては、雇用すべき障害者の人数が増加する可能性もありますので、引き上げ後の雇用率で要件を満たすか確認をしてください

雇用率に達しない場合は、追加での採用が必要となりますが、法改正が行われる3月から動き出すのでは遅くなります。そのため、今のうちから障害者雇用人数の再確認と、追加採用が必要な場合は採用活動への着手など、必要なアクションを起こすようにしてください。

なお、障害者の法定雇用率を達成しなかったとしても、刑事罰はありませんが、不足する人数分に対し障害者雇用納付金という金銭負担が生じます。また、社会的責任や企業イメージの観点からも、法定雇用率の達成を実現したいものです。

(3)新入社員受け入れの準備開始

新卒採用をしている会社では、新卒者の受け入れに向けての準備が本格化してくるタイミングでしょう。

昨年はコロナ禍の影響で入社式の中止や、新入社員研修の中止・縮小をした企業も少なくなかったのではないでしょうか。昨年に関しては、コロナ禍が始まったばかりで、各企業も手探りの状態でしたので、やむを得なかったのではないかと思います。

しかし、コロナ禍が長期化し、我々はその中で新しい働き方を実現していかなければなりません。2021年度に関しては、オンラインでの入社式の実施や、Web会議システムを用いた新入社員研修のカリキュラムの構築など、新入社員の受け入れのあり方を、本格的に検討していく必要があります

コロナ禍だからといって単純に入社式や新入社員研修を中止するのではなく、新入社員のモチベーションやスキル開発の観点からも、工夫していくべきでしょう。

(4)定期昇給

4月を定期昇給の時期に設定している企業は多いのではないかと思います。実務上は、1月ないし2月頃から昇給額の検討を始め、3月中に従業員に給与辞令などで通知するのが一般的ですが、今年は、コロナ禍の影響を受けた企業にとっては、定期昇給をどうするかは悩みどころになりそうです。

通常、給与規程等で「必ず」昇給があることまでは確約していないと思いますので、昇給をしないことについて、法的な意味で問題になることは無いでしょう。

しかし、実務上の観点としては、従業員は定期昇給があることに期待していますので、昇給が無いことはモチベーションの低下などにつながる恐れがあります

今回に関してはコロナ禍である点を従業員も承知をしているので、最終的には理解を得ることはできると考えますが、定期昇給するかどうかは早めに決定し、しない場合や、例年よりも昇給幅を小さくするような場合は、早め、かつ丁寧に従業員に説明しましょう。

人事労務ホットな小話

2021年もコロナ禍の中で始まり、人事労務担当者は、引き続き「新しい働き方」の確立や、補助金・助成金の情報収集や申請など、慌ただしい状況が続きそうです。

また、コロナ対応の長期化に伴い、下記のような実務的な労務問題への対応も増えてきているようです。

  • テレワークを基本としているが、出社の必要な業務が発生した場合、応じてくれる人と応じてくれない人をどのように処遇すれば良いか(待遇差を設けることは可能か)?
  • テレワーク制度の恒久化に伴い、通勤手当を廃止したいのだが不利益変更になるのか?
  • 副業をしている従業員が、感染リスクのある副業をしていた場合、副業禁止にすることは可能か?

単純にYes/Noで割り切れる話ではないので、対応は容易ではありませんが、労使双方が納得し、円滑に業務が回るルールに着地できるかどうかは、まさに人事労務部門の腕の見せどころです。

新しい時代の新しい働き方を踏まえ、ぜひ、自社を働きやすい職場環境に導いてください!

まとめ

2月は人事労務分野に関する法改正などは特段ありませんが、新年度に向けての準備が本格化する月です。コロナ禍ではありますが、良い新年度を迎えられますように。

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