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「派遣労働者の同一労働・同一賃金」について、社労士がQ&A形式で解説!

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こんにちは。特定社会保険労務士の小高 東です。

2020年4月1日にいよいよ施行される「派遣労働者の同一労働・同一賃金」

しかしながら、内容が複雑で難しいこともあって、未だに手つかずの中小企業も多いようです。今回は、実務を進めていく上でよく労務の方に受ける質問をもとに、迷いやすい基本事項をQ&A形式で解説していきます。

Q1.「派遣労働者の同一労働・同一賃金」とは?

Q1.「派遣労働者の同一労働・同一賃金」とはどういうことですか?

A1.派遣労働者と正社員の間の不合理な待遇差を解消するため、「派遣先均等・均衡方式」、「労使協定方式」のいずれかの方式により、派遣労働者の待遇を確保することが義務化されました。

Q2.「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の違いがわかりません。

Q2.「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の違いが今ひとつわかりません。

A2.「派遣先均等・均衡方式」とは、派遣社員の待遇を派遣先の通常の労働者と同程度の待遇にする方式のこと。

一方で、「労使協定方式」は派遣元で締結する労使協定に基づいて派遣労働者の待遇を決定することです。

両方式の異なる点を表にすると以下のようになります。

「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の違い

Q3.どちらの方式を選択する会社が多いのですか?

Q3.どちらの方式を選択する会社が多いのですか?

A3.どちらのほうが多いという調査結果などは発表されていないようなので、私の主観で述べると、現状ほとんどの会社が「労使協定方式」で進めていると思います。

 派遣先が情報提供等を嫌がることが多いため、結果として、労使協定方式を選択するケースが多くなっているのだと考えられます。

Q4.派遣元として「労使協定方式」を選ぶメリットはありますか?

Q4.派遣元として労使協定方式を選ぶメリットはありますか?

A4.賃金水準が安定するというメリットがあります。労使協定方式は、比較対象が派遣先均等・均衡方式のように「派遣先の労働者」ではなく、「一般労働者」となっています。そのため、派遣先が変わるごとに賃金水準が変わり、派遣労働者の所得が不安定になるということがありません。

これによって、派遣労働者の段階的・体系的なキャリアアップ支援と不整合な事態を招くことなく、長期的なキャリア形成に配慮した雇用管理が可能となります。

Q5.労使協定の従業員代表は、派遣労働者とする必要がありますか?

Q5.労使協定の従業員代表は、派遣労働者とする必要がありますか?

A5.派遣労働者以外でも大丈夫です。

Q6.正社員を派遣する場合、正社員は労使協定の対象外ですか?

Q6.正社員を派遣する場合、正社員は労使協定の対象外ですか?

A6.派遣労働者は、正社員、契約社員等問わず全て対象となります。

Q7.労使協定は、事業所単位で締結するのですか?

Q7.労使協定は、事業所単位で締結するのですか?

A7.事業所単位、ブロック単位、会社単位等のいずれでもかまいません。

Q8.労使協定は、36協定のように労働局に届け出るのですか?

Q8.労使協定は、36協定のように労働局に届け出るのですか?

A8.労使協定の届け出義務はありません。ただし、毎年6月30日が提出期限である「労働者派遣事業報告書」には添付する必要があります。

Q9.労使協定は、派遣先に提出する必要がありますか?

Q9.労使協定は、派遣先に提出する必要がありますか?

A9.労使協定自体を派遣先に提出する義務はありません。ただし、料金交渉が必要なケース等では労使協定はその根拠となりえます。

Q10.「派遣労働者の同一労働・同一賃金」の施行日は?

Q10.「派遣労働者の同一労働・同一賃金」の、中小企業への施行日は、「パート、有期雇用者の同一労働同一賃金」と同じく、1年後の2021年4月1日と考えていいのでしょうか?

A10.いいえ。派遣労働者については、パート、有期雇用者のように中小企業に1年間の猶予措置はありません。大企業、中小企業ともに2020年4月1日が施行日となります。

おわりに

今回の記事では例えば、労使協定の賃金テーブル等詳細については触れておりませんことをご了承ください。労使協定方式を選択するのであれば、2020年3月31日までに締結する必要があります。

今からでも間に合うことを祈念するとともに、このQ&Aが少しでも参考となれば幸いです。

以下の記事では「同一労働・同一賃金」の基礎情報についてまとめていますので、従業員の方にもシェアして、会社全体で制度への理解向上を進めてみてはいかがでしょうか。

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