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法的に注意すべき副業・兼業のポイント。 36協定違反の可能性も

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「副業解禁」が話題になる昨今。これまで、会社員が副業を行うことはネガティブな捉え方をされてきました。

しかし、昨今はロート製薬やヤフーといった大手企業が副業を解禁したり、厚生労働省がモデル就業規則から副業禁止規程を削除する方針を決めたりと、世の中は副業を容認する流れに動いています。

しかしながら、我が国の企業がこれまで副業を禁止してきたのには、それなりの理由があったからです。ですから、副業が解禁されたからといって、完全自由に副業を行って良いわけではありません。副業を行うにあたっては、気をつけなければならない、いくつかの注意点があります。そこで本稿では、副業を行なう上での法的な注意点について説明をしていきたいと思います。

また、後半では、いわゆる「本業」を持たず、複数の会社の仕事や自営業を掛け持ちする「兼業」についても触れ、副業との異同を踏まえながら注意点を説明していきたいと思います。

このような副業は行ってはいけない

まずは、「このような副業は行ってはならない」という注意点です。副業で行うビジネスは基本的には自分が好きな事業内容を選べばよいのですが、次の3つのような場合は、本業の会社から中止を命じられたり、場合によっては損害賠償請求や懲戒処分を受けたりする可能性があります。

(1)会社の信用を失墜させる副業

第1は、本業の会社の信用を失墜させるような副業です。

たとえば、マルチ商法のような法律に違反する副業のほか、アダルトサイトの運営やキャバクラ勤務をはじめとした水商売・風俗産業など「違法ではないが取引先や同僚が知ったら一般的に好ましくないと考える副業」は行なうべきではありません。

このような内容の副業は、副業が届出制や許可制の会社の場合は当然却下されるでしょうし、仮に無許可で行って、それが発覚した場合には懲戒解雇等の処分を受けても文句は言えません。

(2)競合他社での副業

第2は、本業の会社と競合する副業です。

たとえば、IT系の会社に勤務する人が、勤務先と競合する同業他社で副業を行ったり、自分で本業の会社と競合するようなビジネスを立ち上げたりすることは、本業の会社の利益を侵害するものとして許される副業ではありません。通常は就業規則で競合するような副業を行うことは禁止されているはずですし、会社に隠れて行っていたことが発覚した場合は、やはり懲戒解雇に相当する事態となります。

仮に、本業の会社のノウハウや顧客名簿などを流用して副業を行った場合は、懲戒解雇はもちろんのこと、本業の会社から損害賠償を受け、また、不正競争防止法違反で刑事罰を受ける可能性もありますので、絶対にそのようなことは行わないようにして下さい。

(3)本業の正常な勤務に影響を与える副業

第3は、本業の正常な勤務に影響を与える副業です。

本業の会社に対しては、1日8時間なら8時間、体調万全な状態で労務を提供する必要があります。連日深夜まで副業を行って、本業の労働時間中に居眠りをすることは論外としても、副業の疲労で本業のパフォーマンスが落ちることが問題となります。

このような場合、本業の会社は副業を中止させることができ、それに従わない場合は懲戒処分を受ける可能性があります。

また、副業による疲労でパフォーマンスが下がった場合は、本業の会社の人事考課に影響を与えることになるでしょう。

メンバーが副業をおこなっている場合、管理職の方は、会社の人事考課制度と照らし合わせた的確な評価が求められます。このタイミングで、管理職の方が知っておくべき人事考課制度のポイントを押さえておきましょう。

人事評価、間違っていませんか?人事担当や管理職が押さえておきたい評価制度3つのポイント

本業の会社の就業規則はどうなっているか?

副業を行いたいと考えたとき、必ず確認をして頂きたいのは本業の会社の就業規則です。

就業規則において副業が届出制や許可制になっている場合は、必ず就業規則に定められた手順に沿って届出をしたり許可を得たりするようにしましょう。確かに、法的に争った場合は、必ずしも許可を得なくても副業が有効だと判断される場合もありますが、本業の会社との信頼関係を保つためにも、よほど不条理なことが無い限り、本業の会社で定められた就業規則上の手順を踏むべきです。

なお、就業規則で副業が禁止されたままになっている会社の場合は、少し判断が難しいかもしれせん。就業規則で副業を全面禁止することは社員の私生活への過大な干渉ということで、法的にはその定めは無効ということになります。ですから、本業の会社と交渉して副業を認めてもらうというのも一手でしょう。

しかし、本業の会社と揉めることになってしまいそうな場合は、副業に理解のある会社に転職するか、副業が独立をする前の下準備ということであれば、黙って副業を始めてそのまま退職・独立という流れに乗ってしまうという考え方も一理あるかもしれません。

就業規則に関する注意点は下記記事をご参照ください。

副業と36協定や割増賃金の問題

副業をする場合に労働基準法上の観点として知っておきたいのは、本業と副業の労働時間は通算されるということです。

副業を個人事業主や会社役員として行う場合には副業側に労働基準法は適用されないので問題はないのですが、副業の会社に労働者として勤務する場合、この問題に直面します。

副業による36協定違反の恐れ

たとえば、本業の会社で8時間勤務した後、同じ日に副業の会社で3時間勤務する場合、本業の会社で法定労働時間の8時間は使い切ってしまっているので、副業の会社の3時間は、全て残業扱い(割増賃金の対象)となってしまうのです。ですから、36協定を結んでいない会社に副業で勤務している場合、副業の会社は知らず知らずのうちに違法な残業をさせてしまっているということになりかねません。

しかしながら、この話は実務上はグレーゾーンになってしまっているというのが実態です。副業の会社としては、本人が本業の会社でどのような勤務をしているのかは難しいですし、仮に本人が本業のことを黙っていたら、副業の会社は単なる短時間アルバイトの人だと思ってしまうかもしれません。

36協定に関する注意点に関しては下記記事をご参照ください。

副業により生じた割増賃金はどちらが払う?

また、時系列的な問題もあり、たとえば本業の始業時刻前に早朝のコンビニで3時間アルバイトをして、その後本業の会社で8時間働いた場合、割増賃金を払うべきは本業の会社なのか、アルバイト先の副業の会社なのか、法的な結論は明確になっていません。

ですから、労働者という立場で副業を行う場合には、以上のような法的問題があることは知った上で、グレーゾーンもある話ですから、不用意に副業先と揉めるようなことはしないほうが得策かもしれません。

なお、この問題を根本的に解決するためには、立法論としての対応が必要であると私は考えています。

「兼業」の場合の注意点

兼業を行うにあたっても、勤務する会社の信頼を失わせるようなことをしない、競合する複数の会社で働かない、各勤務先では完全な労働を提供する、といった点は、副業の場合と同様です。ですから、「こういう副業を行ってはならない」という注意点は、兼業だからといって新たに追加になることはありません。

労働時間を通算する考え方も、副業の場合と同じです。

しかしながら、兼業的な働き方をする場合には、福利厚生面で気を付けておきたいことがあります。

それは、どこの会社でも社会保険や雇用保険に加入できない可能性があるということです。

社会保険に加入できるのは、一定の例外を除き、その会社で正社員の4分の3以上、1日の勤務時間および1ヶ月の勤務日数があることが必要です。また、雇用保険に加入するためには週20時間以上の勤務が必要です。

ですから、A社で週10時間、B社で週15時間、C社で週12時間というような働き方をする場合は、いずれの会社でも社会保険及び雇用保険に加入できないということになります。

兼業を行う場合には、自分で国民年金や国保をきちんと支払うか、あるいはどこかの会社に重点を置いてその会社で社会保険や雇用保険に加入できるラインで働くようにするか、しっかりと考えておくことが必要です。

社会保険の基礎知識については下記記事をご参照ください。

副業・兼業についてのまとめ

副業や兼業を行うことは、収入の多角化や自己成長の糧になるなど、働く人にとってもメリットが大きいでしょう。

しかしながら、副業・兼業に関する法的な注意点を抑えておかないと、本業の会社とトラブルになったり、自分が損をしてしまうこともあります。

副業・兼業を行う際には、法的ルールや、本業の会社の就業規則に注意を払っていきたいですね。

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