2021年春の主要法改正をまとめてチェック。同一労働・同一賃金、中途採用公表義務化、障害者法定雇用率の引き上げなど
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目次
こんにちは、社会保険労務士の山口です。
春は毎年多くの法改正が施行されますが、ご対応はお済みでしょうか。本稿では、2021年春に施行される主な法改正の概要とポイントを解説します。
※本稿に書かれている情報は2021年3月5日時点でのものです。最新情報については厚生労働省のWebサイトなどを参考にしてください。
【1】障害者法定雇用率の引き上げ(3月1日施行)
概要
民間企業における障害者の法定雇用率が2.2%→2.3%に引き上げ。
ポイント解説
もともと2018年4月の改正で2.3%に引き上げられていましたが、経過措置として2.2%の率が適用されてきました。経過措置の廃止予定は2021年1月でしたが、新型コロナウイルスの影響により2か月遅れの2021年3月から実施となりました。
一時はコロナ禍により、障害者雇用だけでなく全体的に採用活動を停止している企業も多いことから延期説も出ていましたが、テレワークを含め働き方・雇用管理を工夫する余地もあるとして、3月施行に踏み切ったという経緯があります。
【2】中小企業の「同一労働・同一賃金」の義務化(4月1日施行)
概要
中小企業における「同一労働・同一賃金」の適用スタート。
ポイント解説
雇用形態にかかわらずに公正な待遇を確保する「同一労働・同一賃金」の考え方は、大企業において2020年4月から適用済みですが、中小企業も2021年4月から対象となります。
すでに比較表の作成や就業規則の見直しをされている会社も多いと思いますが、まだの場合は早急な対応が必要です。「パートタイム・有期雇用労働法」「労働者派遣法」の規定や具体的な取り扱いを定めた「同一労働・同一賃金ガイドライン」だけでなく、2020年10月に出された「日本郵便事件」などの最高裁判決も参考になります。
【3】中途採用比率の公表義務化(4月1日施行)
概要
301人以上の会社において中途採用者の比率公表が義務化。
ポイント解説
労働施策総合推進法の改正により、常時雇用労働者数が301人以上の大企業は中途採用者の比率の公表が義務付けられました。
改正省令では「おおむね1年に1回以上、公表した日を明らかにして、直近の3事業年度について、インターネットの利用その他の方法により、求職者等が容易に閲覧できるように」とされています。公表の方法や計算方法については、厚生労働省のホームページで公開されているQ&Aを参考にしましょう。
【4】70歳までの就業機会の確保措置(4月1日施行)
概要
70歳までの就業確保措置が努力義務に。
ポイント解説
高年齢者雇用安定法が8年ぶりに改正され、これまでの65歳までの雇用確保措置(義務)に加え、70歳までの就業確保措置が努力義務として追加されました。
- 70歳までの定年の引き上げ
- 70歳までの継続雇用制度の導入
- 定年の廃止
といった、雇用確保措置に準じた制度に加え、高年齢者の創業や社会貢献活動への参加を促す「創業支援等措置」が創設されたのがポイントです。ただし努力義務ですので、「まずは様子見」という企業がほとんどかもしれません。
【5】脱退一時金の支給上限年数の引き上げ(4月1日施行)
概要
日本を出国した外国人に支給される「脱退一時金」の支給上限年数が5年に。
ポイント解説
年金制度改正法の施行により、脱退一時金の支給額計算に用いる支給上限月数の見直しがおこなわれ、2021年4月より 36 ヶ月(3年)から 60 ヶ月(5年)に引き上げられます。
日本国籍を有しない方が、厚生年金保険(国民年金)の被保険者資格を喪失し、日本を出国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に、これまで払い込んだ厚生年金保険料(国民年金保険料)の一部を「脱退一時金」として請求できる制度です。
在留資格制度の改正で、外国人労働者が日本で働く期間が延びていることが今回の年金改正につながりました。
おわりに
中小企業にとっては【2】の「同一労働・同一賃金」、大企業にとっては【3】の「中途採用比率の公表義務化」への対応が目下の課題と思われます。
春は人事異動や入退社に時間を割かれがちですが、対応漏れのないよう、準備を進めていきましょう。