離職率一桁台の飲食グループ「なすび」が実践する15の人事施策【 #スマレジ会_Meetup Vol.6 】その3

2018.06.28 ライター: 藤田 隼

慢性的な人手不足に悩まされる飲食業界。労働人口が著しく減少していくこれからの時代にあって、人材難対策待ったなしの状況です。

人材難時代においては、採用の強化や1人1人の労働生産性向上などが重要になりますが、今回はこの“飲食業界における採用強化”のヒントを探るべく「人手不足を解消し最適な人材を採用するには?」をテーマに開催された、『#スマレジ会_Meetup Vol.6』の潜入レポートを全4回にわけて発信します。

レポート第3弾の今回は、株式会社なすび 専務取締役 藤田 尚徳さんによる、同社の採用・人材戦略をお届けします。

その2「SNSを活用したソフトクリーム専門店「coisof」の採用成功事例」はこちら

株式会社なすびの一貫した「企業理念」と「行動理念」

藤田さん:皆さんこんばんは。静岡県静岡市から参りました、株式会社なすびの藤田と申します。よろしくお願い致します。

ちょっと簡単にプロフィールを紹介しますね。1975年生まれの41歳でございます。大学卒業後に、サッポロビールに入りまして、東京都内で営業をやり、その後なすびに入社しました。なすびは父が創業した会社で、現在は兄が社長、そして私が専務を務め、2人で継いでいるようなかたちです。

会社概要としては、私が生まれた年と一緒で1975年に創業致しました。今は売上17億円で、経常利益が約1億2,000万円です。自己資本比率としては75.8%。で、店舗数が17店舗で、正社員90名、パート・アルバイトが280名。男女比率としては8:2になっております。

株式会社なすび 専務取締役 藤田 尚徳さん。大学卒業後、サッポロビールに勤務の後、なすびに入社。入社後、日報管理システムを始め社内のIT化、企画、教育に力を注ぐ。地元静岡にこだわり、お茶摘みツアーや、折戸なすの復活。静岡空港開港記念フェア。山葵味噌の開発。静岡地酒の輸出など数多くの企画を打ち出している。

行政施設への出店や既存店のリブランディング

近年の事業展開として、うちのお店は基本的に自社ブランドでずっと立ち上げてきた中で、ここ数年、静岡のエリアが狭くなってきたため、このままやっていくとカニバリを起こしてしまうということで、行政施設、県や市の施設などに出店しております。

行政施設のメリットは、家賃がゼロであること。要するに、最初のテーブルやイスが簡単なものさえ揃えてしまえば、2~3ヶ月後ぐらいに投資回収ができて、すぐに利益が出てくることが行政施設の強みです。

とはいえ、行政施設へ出店するまでには、いろんなパブリシティや地域貢献活動などをやっていかないと、なかなか進出できません。現在は、そのようなことに取り組んできたことで、財務内容が良くなり、ある程度の静岡市の行政施設に充てることができております。

それ以外には、年数が経った既存店をとにかくリブランディングをして、リノベーションを図っています。

確固たる経営理念とフィロソフィ

そんな中、弊社の「ミッション」「ビジョン」「バリュー」はどうだったか。私が入社した当初もそうでしたが、最初は抽象的な「人の魅力」とか「店舗の魅力」みたいな、ほんわかした企業理念でした。

でも社員の皆さんが働くなかで、自分は何のためにやっていて、自分の会社はどこに向かってるんだって、やっぱりここはとても大事なことだなと思いまして。

で、こちらの「ミッション」「ビジョン」「バリュー」ができたのは5年前です。

自分たちの仕事は、「何のために」「誰のために」やっていて、地域の中でどのように強くなっていけるのかを、経営者だけじゃなくて店長、社員のみんなが語れるようになって初めてアルバイトに落ちていきます。小手先だけの人を集めてという状況を何とか脱却したいというところで、「心の教育」から始めているのが現在の採用、社員教育の軸になっております。

その中で「フィロソフィ」をつくりまして、「SAFETY」「HEART」「SHOW」「TIME」というものを掲げています。

いろいろ調べた中でこの4つが一番ベストだなって思ったんですけれども、どこから参考にしたかというと、ディズニーリゾートです(※ 参考:行動規準「The Four Keys~4つの鍵~」)。それを自社に当てはめたときに、一番はじめに安全があって、次に心があって、それから演出と時間。

これを基準に、社員の皆さんの行動を決めていくということを考えてやってます。

離職率一桁台を実現。採用・人材と向き合う15の人事施策

結果、今どうなったかというと、離職率がこの3年で、基本的には一桁台で収まっているのが当社の現状でございます。

これまでの過程でどのようなことを行ってきたのか? 先程紹介した理念に基づいた、具体的な取り組みを紹介します。

(1)ライフスタイルに合わせて選択できる明確な給与体系

まず、1つ目ですが、「給与体系」を明確にしております。給与体系というか、ライフスタイルにあわせた働き方を選んでもらい、明確に勤怠管理しているかたちです。

バッチリ働きたい人向けの「スキルアップ社員」コースや、余裕をもって働きたい人向けの「ゆとりライフバランス社員」コースなど、要するに希望する働く時間や休日日数によって、給料や条件を設けているような仕組みで、社員が、自分のライフスタイルがどれに合っているかで選べるように4つのコースに分けています。

株式会社なすび 採用ページより抜粋

これまでの「外食産業」は、労働時間が長いし、きついし、本当につらい仕事だったなっていうのがあったんですけど、「自分はそこまで給料いらないから120日休みをください」と選ぶことができます。あるいは「自分はガッツリやりたいんだ」という人だったら「じゃあ4週4休制にして、給料もそこそこ増やして、教育も全部やっていくからね」という働き方も選択できます。

その分働き方も多様化するので、こういう時に「スマレジ・タイムカード」のようなツールがあると、勤怠管理や給与計算がとても便利で労務の効率化を図れるため、皆さんオススメです(笑)。

(2)生産性向上と休日出勤手当

それから、「生産性向上」。これも今言ったように「スマレジ」のようなITツールがないと実現できないということで、ITツールを積極的に導入して、生産性を向上させています。

今まではゼロから全部手作りで作っていたものを、既成品を入れたりすることで、社員やお客様に負担が極力がかからないような形で、生産性をとにかくとにかく向上させると。

「休日出勤手当」については、今までの外食産業って、「(休日出勤の手当がわりに)ご飯に連れていってあげればいいだろう」とかってあったと思うんですが、そうじゃなくて、その分を休日出勤手当としてしっかり支払わないといけないと。

それを明確にしていくことが必要だなということで、「スマレジ・タイムカード」を使って、出勤日数などをしっかりと管理して、それに対しての給与、手当を支払っています。

(3)全従業員へのフィロソフィ共有

次に、先ほどご説明をしました「フィロソフィの共有」ですね。もう17店舗ぐらいになってくると、自分たちが店舗に行ってしゃべっても、全従業員で360人もいるととてもしゃべりきれないんで、ミーティングを動画で撮って、社内のSNSにアップしています。

このミーティングの司会はアルバイトがやったりとか、厨房の方がやったりで、例えば「SAFETYについてどう思いますか?」「私はこう思います。明日からこうしていきたいです」という流れで、しっかりと自分たちの口でしゃべって、自分たち自身でそれを落とし込んでいくことで、フィロソフィを共有できています。

(4)社長・専務から給与の手渡し

これは基本的なことなんですけど、創業以来43年給与を手渡ししています。

今はもうさすがに大きくなってきたので(給与自体は)振り込んでいるんですけれども「給料袋」みたいなものを、社長と私が毎月20日に必ず各店舗を回って、それぞれの社員の顔を見て「いつもありがとう」と言ってから渡しております。

(5)かわら版・SNSで情報共有

その中に「今月こんなことがあったよ」という話を手作りの「かわら版」に書いて封入しています。

例えば、その時に頑張ってる人の話をピックアップしたり、社長や私からのメッセージを書いたりなど、そんな内容の「かわら版」を給料袋に入れて、手渡ししてっていうのが当社の取り組みになります。

(6)「なすびアカデミー」の実施

「なすびアカデミー」では、各料理長が先生になって、プログラムを組んで2ヶ月に1回実施していて、若手社員の技術向上を図っています。

生産性向上のメリットもあります。今まではサラダしか盛れなかった社員が魚もさばけるようになって、いつしか煮物もつくれるように。

これまで10年かけて習得していたことを、1年でどこまでできるのかということで、若手社員にどんどん技術を教えるようにしています。

(7)ブランドイメージの醸成

ブランドイメージについては、Webサイトを中心に、FacebookやInstagramなどで、継続的な情報発信しています。私としても、Facebookでたくさんの人と繋がって、日々遊んでいる情報などをたくさん投稿しております。

会社のブランドイメージとして、社長も私もサーフィンやゴルフやりますし、あとは研修旅行で海外行った場合にもそのあたりのことを思いっきり発信する。「今日はハワイでゴルフをやってます」「今日はサーフィンです」といったイメージです。

(遊びも含めて)会社でやっていることをストレートに世に発信することで、「なすびっていい会社なんだな」と感じてもらえるように、うまく発信することがブランディングにつながってくるかなと思います。

(8)パブリシティ広告

パブリシティ広告にも取り組み、タブロイド新聞を発行しています。あと地元の新聞ですね。様々な取り組みについて、新聞にいろいろ情報を上げて、なすびって名前をどんどん出していく。

それを見た学生の親御さんに、「なすびって会社、この間も新聞出てたよ。あそこはいい会社だよ」って伝えてもらうことで、後々、新卒採用にもつながってくると。

(9)各種団体所属と役職

青年会議所や商工会議所など、地域団体にしっかりと出て、地元のネットワークを築くということにも取り組んでいます。

取り組むだけでなく、役職までしっかりやると。理事長や会長などを務めることで、認知やブランディングに繋げています。

(10)地元採用

地元採用として、徹底的に、静岡の人材採用に絞ってやっています。

(11)なすびフォーラム

自分のお店や会社への愛社心のようなものを育む「なすびフォーラム」を実施しています。

やり始めて10年ぐらい経ちますけれども、全社お店を休んで、1年間を振り返る全社大会を開催しています。社員をしっかりと表彰をして、みんなの出番をつくり、懇親会もやっています。店対抗のゲームで盛り上がったりもするんですよね。

(12)GOOD JOBカード

「GOOD JOBカード」については、近しいことを知っている方も世の中には多いと思いますが、知っているかじゃなくてやっているかどうかが大事だと思うんです。知ってるんじゃなくてやるかやらないか、これが大きな違いです。

なすびでは、この「GOOD JOBカード」を毎日、店頭内でバンバン配って、「フィロソフィのこれに合ってるね、いいことをやったね」と褒める。で、褒められたほうじゃなくて、褒めたほうが表彰される。どれだけたくさんの「ありがとう」「すごかったね」が言えたのか、つまりお店の雰囲気をつくっているのか。そこを評価するために「GOOD JOBカード」でお店を盛り上げています。

(13)ビジョンシート

あとは「ビジョンシート」、これもすごい大事です。3ヶ月に1回、社内の社員面談をしております。離職率を下げるには、当然離職していく人を減らしていく必要があります。離職される方の多くは、何らかの異変があって爆発した時に辞めていってしまうので、それが爆発しないよう、定期的に面談をすることでガス抜きをして、不満に感じていることがあればたくさん聞き出して、向き合って対応していく。

例えば、先ほどのように「(スキルアップ社員コースを選んだけど)実は長く働きたくないんだ」という社員の声を聞けたとして、これに対して体系的に落としていけば、未然に防げるはずなんですよね。

なので、この「ビジョンシート」を用いて個人面談で吸い上げた情報を、次の労務戦略や採用戦略に繋げていっています。

(14)「今日のファインプレイ!」

「今日のファインプレイ!」ということで、サービス向上のためにやっていて、これは「Workplace」というFacebookが提供する企業向けSNSを使っています。

全店が今日一番いいサービスっていうのを毎日文章で書いていくんですが、それを見た他の社員が「いや、なかなかそういうことできない」とか「すごいよね」と褒め合うことで、サービス向上へのモチベーションを高めあっています。

(15)全社員との研修旅行

最後に「全社員の研修旅行」。ほぼ毎年、基本的に社員旅行に行っています。で、社員旅行、ものすごいところに行きます。例えばハワイに行った時も、役員クラスや5年から10年勤めているメンバーだとビジネスクラスで連れて行きますし、あとはホテルもこだわってシェラトンとかで宿泊しますし、一流の店に行って、好きなワイン頼んじゃえと思いっきりやります。

旅行中のお小遣いも渡しています。それぐらい豪華に研修旅行を楽しんで、(従業員満足度を高めるだけでなく)その様子をFacebookに上げることでアピールしています。

なすび社は、なぜこのような取り組みができるのか?

何でこのようなことができるかというと、毎日、毎月のFL比率(売上における食材の原価+人件費の割合)をしっかりと管理することで52~53%に抑え、利益率を高めているからです。
(※ 編集部注:FL比率55〜60%程が一般的な水準とされ、55%を下回ると優良店とされています)

あわせて行政施設だと家賃もかかりませんし、利益率を確保しています。

経営者の使命は「社員の幸せ」

経営者としては利益の出る仕組みづくりをして、それを社員に還元し、最終的には社員を幸せにしていきたいと考えています。

そういうことを続けていけば、離職率が下がったり、社員が社員を呼んでくれて、自分の友達を呼んでくれたり。真の経営をしたいということで、採用と人材教育と会社の成長をバランス良く、力強くやっていくのが我々の使命なのかなということで、弊社の取り組みを紹介させていただきました。

ご清聴いただき、ありがとうございました!

(その4「株式会社なすび×株式会社favy「わが社の採用が成功している理由」」に続く)


【編集部より】飲食業におけるSmartHR導入事例

飲食業でSmartHR導入後に起きた変化とは?
飲食業におけるSmartHR導入事例

アルバイト人材をはじめ、多くの入退社手続きが発生する飲食業界は、その管理も煩雑。特に多くの業態や店舗を持ちチェーン展開する会社では、管理が分散してしまうなど、より大きな課題を抱えます。この飲食業を営む企業において、SmartHRを導入した結果、どのような変化が訪れたのかに迫ります。

【こんなことがわかります】

    ・月間40時間の労務工数削減に成功したワケ
    ・なぜ約2,000名の労務管理をたった数名でできるようになったのか?
    ・労務兼任スタッフが店舗勤務に注力できるようになった話
藤田 隼

SmartHR Mag. 2代目編集長。ソーシャル系スタートアップでSNSマーケティングや自社メディア運営に携わり、2015年よりメディアに特化した事業会社で複数サイトのディレクターを経験した後、SmartHRにジョイン。ウェブ解析士。
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