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従業員サーベイを戦略に活かそう!種類、実施のポイントから活用事例も紹介

公開日

この記事でわかること

  • 従業員サーベイの種類
  • 人事戦略への活用方法
  • サーベイをスムーズに進めるコツ
  • サーベイツールの導入事例
目次

従業員サーベイとは

「サーベイ(survey)」とは、「調査」を意味する英単語で、従業員サーベイは、企業が従業員に対して実施する調査全般を指します

人事施策や職場の環境改善のために、サーベイによる従業員や組織のニーズ・状況把握は重要です。適切に進められた従業員サーベイの結果は、人事担当者の立てた仮説検証のデータとしても使用できます。

従業員満足度調査(ES)や社内アンケートとの違い

従業員のニーズ調査として、従業員満足度調査(ES)や社内アンケートを導入している企業もあるでしょう。従業員サーベイと従業員満足度調査などは、まったく別物というわけではありません。

従業員サーベイは従業員を対象とした調査の総称であり、従業員満足度は調査項目の一つです。なお、社内アンケートは多数を対象に同じ質問を投げかけ回答を得る方法です。つまり、サーベイとは調査活動そのものを指し、満足度調査や社内アンケートはそのうちの項目や手法を指します。

従業員サーベイが広がった背景

昨今注目されている従業員サーベイですが、実施される目的は組織が抱える問題の可視化です。

サーベイの回答結果は数値化されるため、その分析から企業の抱える課題や原因が明確になります。かつては調査や結果分析に時間や労力を要しましたが、近年のITの普及によりサーベイ実施の負担は軽減されました。このITの普及が、サーベイが広がった理由の一つです。

また、コロナ禍におけるテレワーク・リモートワークの普及も理由にあげられます。サーベイ実施で定期的に従業員のニーズを把握できるようになり、ある種のコミュニケーションツールとなっています。

「コロナ禍によって「第三者機関」を活用した社内の従業員調査(サーベイ)は重要になったと思いますか」という設問の回答。

(参考:株式会社カルチャリア 「従業員意識調査(サーベイ)活用の実態調査」

株式会社カルチャリアが実施した「コロナ禍によって第三者機関を活用した社内従業員調査は重要になったと思いますか」という調査では、7割以上が「そう思う」と回答しています。

(参考:株式会社カルチャリア 「従業員意識調査(サーベイ)活用の実態調査」

従業員サーベイを実施する目的とメリット

先述したとおり、従業員サーベイの特徴は調査結果の可視化にあります。では、調査結果が可視化されると企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

従業員サーベイを実施する目的とメリットをまとめた図。

人事戦略の検証や従業員のリアルな声や状況が把握できる

人事担当者は、企業成長のために人事戦略を策定しています。とはいえ戦略はあくまでも仮説にもとづくため、戦略の精度を高めるために、仮説の検証をしていく必要があります。

仮説検証のために従業員サーベイを実施すれば、担当者と従業員間で認識の齟齬がないか確認できます。また、人事担当者が気づかなかった従業員のリアルな悩みや、企業の抱える課題が浮き彫りになるケースもあります。

定量的に捉えづらい事項を数値化できる

人間関係やモチベーションといった定量評価しづらい項目を、数値で把握できるのもサーベイのメリットです。

優秀な人材の流出を防ぎ、組織力を維持するためには的確な人事施策が欠かせません。そして、的確な人事施策を打つためには従業員のニーズを正しく捉える必要があります。

つまり、サーベイ実施は従業員のニーズを正しく数値化できるよう進めなければなりません。後述する「効果が出る従業員サーベイの特徴」を参照し、適切に進めましょう。

人事戦略へ活用できる

従業員サーベイは、結果から得られた情報や課題を人事戦略に活かしてようやく効果を発揮します。

サーベイ結果にもとづいた人事施策は従業員の納得感を得やすいです。従業員のニーズを反映し、働きやすい環境づくりができれば、モチベーション向上も期待できます。さらには、離職率の低下や組織全体の生産性向上にもつながるでしょう。

従業員サーベイの4つの種類

従業員サーベイにはいくつか種類があります。ここで、代表的な例を4つ紹介します。

従業員サーベイの4つの種類について説明した図。

(1)組織サーベイ

組織サーベイは、企業の経営目標達成のために各組織のマネジメントが機能しているかを確認する調査です。

職場の雰囲気、コミュニケーションの実態など、組織状況や見えない課題を客観的に判断するために実施されます。調査結果は、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高める組織改善に活用されます。

(2)パルスサーベイ

パルスサーベイは、従業員の満足度や心の健康度をリアルタイムで把握するための意識調査です。

従業員満足度調査と似ていますが、実施スパンが大きく異なります。パルス(Pulse)は「脈拍」を意味し、パルスサーベイはその名のとおり、短いスパンでくり返し実施されるのが特徴です。

簡単な質問を用いた調査を短期間で繰り返すため、従業員や現場環境の変化をリアルタイムで把握できます。課題解決のスピード感を重視する際に有効な方法です。

(3)モラールサーベイ(従業員満足度調査)

従業員の仕事・同僚・待遇といった職場環境に対する意識を把握するための調査です。

「モラール(Morale)」は「士気」を意味し、人事的には組織の活動性、団結精神の強さを表します。なお、モラールが集団的な感情や意識に対して使われる概念であるのに対し、モチベーションは個々人の意識に関する概念を意味します。

モラールサーベイは従業員満足度調査とも呼ばれ、多くの企業で実施されている調査の一つです。サーベイの結果で従業員が何に対して不満をもっているのか把握できるため、職場環境の改善に役立ちます。

(4)エンゲージメントサーベイ

エンゲージメントとは「誓約」や「契約」を意味し、エンゲージメントサーベイは従業員と企業の関係性を把握する調査です。

なお、エンゲージメントには、「ワークエンゲージメント」と「従業員エンゲージメント」の2つの概念があります。一般的に企業と従業員のつながりの強さは「従業員エンゲージメント」で表されるため、エンゲージメントサーベイで測定するのは従業員エンゲージメントです。

ちなみに、企業や業務に対する満足度や貢献の意志が深まった状態を「エンゲージメントが高い」と表現します。エンゲージメントが高ければ高いほど従業員と組織のニーズが合致しており、パフォーマンス向上が期待できます。

効果が出る従業員サーベイの特徴

くり返しではありますが、従業員サーベイの実施目的は、従業員のニーズをふまえた職場環境の改善です。

サーベイの設問がニーズ把握に適していないと、狙った改善効果が得られません。ここでは、効果を高める従業員サーベイの特徴を紹介します。

対象に網羅性がある

サーベイの対象者は、なるべく広い範囲から集めましょうたとえば、正社員のみといった限定的な範囲では、結果に偏りが生じる可能性があります。外国籍従業員など言語理解に不安がある場合は多国語でのサーベイを用意するなどして、できる限り全従業員を対象にするのが望ましいです。

設問に妥当性がある

一般的な設問を並べても実態は掴めないため、妥当性があり、的確な設問を用意するのもポイントです。

サーベイで実状を明らかにするためには、あらかじめ人事側で現状の課題について仮説を立てておくとよいでしょう。立てた仮説を検証するための設問を逆算して用意することで、その後の分析がスムーズに進められます

実施に透明性がある

従業員サーベイは、実施するだけでは意味をなさず、分析結果を環境改善に活かしてようやく効果を発揮します。

サーベイによって得られた結果は人事担当者のみで利用するのではなく、適切なタイミングで全体公開、フィードバックしましょう。「サーベイに協力したのに情報が公開されない」といった不満が従業員に広まってしまうと、以降の回答率低下にもつながるおそれがあります

また、結果公開時に個人が特定できるような方法はトラブルのもとですので、あくまで全体傾向を示すような方法を選択するのが無難です。

課題解決の実現性がある

サーベイは、得られた結果をもとに課題を把握し、解決に向けた施策を立てるために使用されます。

従業員サーベイを実施しても環境や業務内容が改善されなければ、従業員の不信感につながる可能性があります。「サーベイの結果が現場に反映されているな」と従業員が感じられるよう、人事戦略に落とし込みましょう。すぐに解決策を打ち出せない課題でも、検討中という現状を伝えるだけでも、納得感が変わります。

従業員サーベイを進める際の注意点やコツ

従業員サーベイを実施するにあたり、失敗しないための方法や注意点を紹介します。ぜひ、スムーズに進めるための参考にしてみてください。

経営層の合意を得る

サーベイで得られた結果を人事業務に活用するためには、あらかじめ経営層の理解や合意をとっておくとスムーズです。

従業員サーベイは人事戦略を立てるために実施されますが、人事部だけのために実施するものではありません。あくまで企業全体に影響するという認識をもち、全社一体となって取り組みましょう。

目的や従業員の回答が個人に影響しないことを明示する

従業員のリアルな意見を集められなければ、サーベイを実施する意味がありません。

一方で、企業や業務に対して感じている不満や課題を率直に伝えると、「自分の評価が悪くなるのではないか」と心配する従業員もいます。「サーベイの回答結果は評価には影響しない」「匿名性のある調査である」「閲覧者は人事担当者のみ」と事前に説明しておくと、素直な回答が得られやすいでしょう。

サーベイの乱立を防ぐ

サーベイの重要性が注目され、さまざまなサーベイツールが広がっています。その一方で、やみくもにサーベイが乱立する事態に悩まされる会社もあるようです。

ツールの活用で負担が軽減したとはいえ、常に何かのサーベイを実施しているといった状況では回答者の負担が大きくなり、正確な回答は得にくくなります。大規模な組織ほどサーベイ乱立を起こしやすいため、社内で情報共有し、実施時期を分散させるなどの工夫をしておくとよいでしょう。

結果や改善施策を従業員に共有する

サーベイ実施により見つかった課題、改善施策の従業員との共有も大切です。せっかく回答しても、結果が活かされなければ従業員は実施する価値を感じられません。何のためにサーベイを実施し、その結果どのような改善につながるのかが見えてこそ、サーベイの価値は高まります

従業員がサーベイを自分事と認識するためにも、結果やその後の施策について明らかにしておきましょう。

PDCAサイクルを回す

人事業務におけるサーベイは、実施から結果の分析、環境改善のアクションまですべてのプロセスを指します。

サーベイは「組織の健康診断」のような位置づけにあり、実施しただけでは組織状態は改善しません。回答結果のもとづいた改善施策を進め、PDCAサイクルを回すまでが人事部が果たさなければならない任務だという認識をもちましょう。

従業員サーベイの実施手順【全7ステップ】

企業が抱える課題の仮説が立ち、サーベイ実施が必要な場合は、以下の手順で進めましょう。

 従業員サーベイの実施手順、7ステップを説明した図。

(1)調査時期の決定

まずは目的に応じて、サーベイの実施時期を決定します。従業員の負担を軽減するためにも、繁忙期を避けるのが無難です。

なお、先述したパルスサーベイのように短期間で繰り返し実施する調査は、実施回数にも注意しましょう。回数が多すぎると従業員の負担が増すため、適切な頻度を見定める必要があります。

(2)質問項目の決定

実施時期が決定したら質問項目を決定します。当たり障りのない設問を用意しても意味がないため、サーベイを実施する目的や組織の抱える課題解決につながりそうな設問案を作成します。

このとき、回答者が誤読したり、人によって解釈が変わりそうな文言は避けたほうが無難です。意図が明確で、相手に伝わりやすい質問作成を意識しましょう。

(3)従業員に目的を説明する

回答者がサーベイに興味をもち正しく回答してくれるよう、調査の目的を説明します。

「サーベイをスムーズに進めるコツ」でも紹介したとおり、回答方法、結果の活用方法、匿名性などを十分に伝えておけば、従業員のリアルな回答を得やすくなります。また、匿名性に加えて「サーベイの回答結果は評価に影響しない」点についても説明しておくと、従業員が不安を抱かずに回答できるでしょう。

従業員サーベイは「率直」かつ「多数の」回答を収集できるほど、データの信頼性が高まり企業の成長や環境改善に活用できます。目的説明のステップを丁寧に進めておくと、従業員からの正確なデータ回収ができ、サーベイの精度向上につながります。

(4)従業員サーベイを実施する

準備が整ったら、サーベイを実施します。

従業員が余裕をもって回答できるように、余裕のある回答期間などの配慮が必要です。そのほか、実施前に周知やリマインドをするなど、回答漏れが起きないように進めましょう。

サーベイは一度実施して終わりではなく、分析した結果を現場に反映し、その効果を測定する必要があります。回答と分析、どちらの負担も軽くしたいのであれば、従業員サーベイツールも検討してみましょう。

(5)結果を分析する

得られた回答結果から現状や課題を分析します。また、事前に立てた仮説が立証できているかどうかもこの段階で確認します。抱える課題は属性や部署によって異なるため、全体だけでなくさまざまな属性で個別分析も実施しましょう。

なお、パルスサーベイのように定期的に実施しているサーベイの場合は、前回までとの結果と比較し、変化の推移を確認しましょう。

(6)フィードバックを実施する

分析結果は人事部にのみ有益というわけではありません。経営層や従業員への結果共有のため、必ずフィードバックする機会を設けましょう

サーベイ結果の共有により、従業員のエンゲージメントが高まり、改善施策を受け入れてもらいやすくなるはずです。また、結果について部署内で議論すれば、従業員自身が課題解決に向け取り組むような変化も期待できます。

(7)課題解決に向けた施策を検討・実施する

ここからは人事部および経営層の役割です。結果を分析し、課題解決に向けた人事施策を立て、実行します。施策実行後は、狙った効果が得られているか確認のために再度サーベイを実施しましょう。もしも施策の効果が見られないならば、立ち止まって適切な施策を再考する必要があります。

サーベイを実施する際の注意点として「PDCAサイクルを回す」と説明しましたが、課題の把握から解決までのくり返しで従業員のエンゲージメントは高まり、組織は成長するのです。

従業員サーベイ機能を利用したビズメイツ株式会社の事例

実際に従業員サーベイを導入した企業の事例を見ていきましょう。

オンライン英会話の運営事業を展開するビズメイツ株式会社は、SmartHRを使った従業員サーベイを実施しています。実施しているサーベイは新入社員入社サーベイ、退職時アンケート、組織サーベイ(sNPS)、パルスサーベイです。

今後の企業の成長に向けた施策を策定するために、サーベイで得られる客観的な視点からの現状把握が大変役立っているといいます。また、部署などの人事情報をすべて集約できるため、さまざまな角度からの分析がしやすくなったとのコメントも。

SmartHRは独自でサーベイを作成できるほか、あらかじめさまざまなプリセットが用意されているためスムーズに設問設計・配信ができます。

ツールを使って効果的な従業員サーベイを実施しよう

現状の不満・不安の把握は、組織や従業員が抱える課題解決の手がかりとなります。個別面談やアンケートでは得られにくい意見を集める方法として、従業員サーベイがおすすめです。

ただし、集められた回答が少なかったり本心ではなかったりすると意味がありません。従業員が素直に回答できるように、サーベイの目的や匿名性については事前に周知しておきましょう。調査対象や設問に網羅性、妥当性があるサーベイが実施できれば適切にPDCAサイクルを回せるため、組織の活性化につながります。

サーベイの設問は表計算ソフトなどでも作成できますが、回答集計や分析の負担が非常に大きくなるのが懸念点です。サーベイは一度実施して終わりではなく、定期的にくり返し実施し、効果測定する必要があります。人事部の負担を軽減し、効率よく進めるためにも使いやすいツールを導入しましょう。

SmartHRなら人事データを一元管理できる機能もあり、蓄積されたデータとサーベイ回答をかけあわせた分析も可能です。ほかにも、配置シミュレーション機能、人事評価機能などを有し、人事業務全般の負担軽減にも役立ちます。

お役立ち資料

3分でわかる! SmartHRの従業員サーベイ

FAQ

  1. Q1. 従業員サーベイとは何ですか?

    従業員サーベイとは、企業が従業員を対象に実施する調査です。回答結果から従業員や組織のニーズを可視化し、組織の抱える課題解決や環境改善に役立てるために用いられます。

  2. Q2. 従業員サーベイには、どんな種類がありますか?

    従業員サーベイは、組織サーベイ、パルスサーベイ、モラールサーベイ、エンゲージメントサーベイなどがあります。目的に応じて使い分ければ、効率よく調査が進められます。

  3. Q3. 従業員サーベイを進める際の注意点は?

    従業員サーベイの結果を活かすためには、できるだけ多く、率直な回答を集める必要があります。サーベイ実施の透明性や設問の妥当性に留意し、結果を適切にフィードバックしましょう。

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