Q:来月からマネージャーに昇格。まずは何をすればよい?【人材マネジメントQ&A】
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少子高齢化が進む現在では、優秀な人材を採用・確保・育成するために、人材マネジメントの重要性はますます高まっています。この企画では人事担当者が見えにくい「マネジメントの悩み」を人材マネジメントのプロが解説。ビジネスの現場でマネージャーが抱える課題に効果的なヒントをご紹介します。
今回はZホールディングス株式会社 Zアカデミア 学長の伊藤羊一さんに、新任マネージャーが最初にやるべきことについてご回答いただきました。
A:最初にすべきは「チームに求められていることの仮説立案」と「情報収集」
まずすべきことは、「メンバーの話を聴くこと」です。メンバーが何を考えていて、どのような仕事を担当しているのかをヒアリングできれば、仕事のイメージが深まります。具体的には、「今燃えていること」「課題意識を感じていること」「モヤモヤしていることを聞く」ことが大切になります。
注意すべきは、マネージャーがヒアリングに徹してしまうと、受け身になりがちなことです。ヒアリング前にまずは、いろいろな人から聞いた多くの情報から、この「チームは何をすべきなのか」という仮説を立ててみる。特定の情報がなければ、それも自分の頭で考えます。
自分なりに仮説として、「現在の状況や求められていること」「期待される成果やそれを実現するのが難しい理由」の答えは持っておく。そこは、与えられた情報だけでマネージャー自身が考える。その意味では、最初にするべきことは「仮説を立てる」ことかもしれないですね。
「話す」ではなく「聞く」で情報を集める
私もヤフー株式会社への入社前から、組織の課題解決方法の仮説を立てました。その仮説を、まず上司や前任などの身近な人にぶつける。大きく間違っていないと思ったら、じっくり時間を取って、「聞く」というスタンスで、メンバー一人ひとりと話し始めました。
このときのポイントは「話す」ではなく「聞く」ことです。この時点では、自分が話せるほど、情報を蓄積できていないので、じっくり話を聞きました。何人もの話を聞いていると、ぼんやりと見えてくるものがあるので、仮説をチェックしていきました。
話を聞くに当たっては、「今の仕事でどのように考えて業務を進めているのか」を聞くのと同時に、「マネージャー自身に対して期待すること」を聞くとよいでしょう。
「仮説立案〜ヒアリング〜検証」まで1か月で実施
スケジュールとしては、1週間程度で仮説を立案し、その後2週間くらいで、メンバーやチームとの関係者も含めて、とにかくいろいろな人と話をする。そこであらためて、1週間で仮説の検証をする。このスケジュール感で進めれば、1か月程度で方向性が見えて、マネージャーとして主体的にどのようなアクションをしていくかの回答を出せるでしょう。
最も良くないのは、「仮説を立てずに、なんとなく仕事をしてしまうこと」です。なんとなく慣れて、過ごしているうちに1か月はすぐに経ってしまいます。1か月というスピード感で、自分が主体的にチャレンジする。うまくいかずに失敗してもよいので、チャレンジすることが何より大切です。その結果、「このやり方はダメ」や「この方向ではない」といったことが、わかってきます。
今までとは異なる部署でマネージャーになれば、わからないことが多いのは当然です。勝手知ったる部署だったとしても、マネージャーになった瞬間に、別世界のようになることは少なくありません。どう振舞えばいいか、どこに突っ込んでいけばよいのかがわからないのは普通のことです。一刻も早く、自分がリーダーとして主体的に動いて、感触を得ることが大事ですね。
「自らの意思表示」がマネージャーの価値を高める
業務内容そのものや、的確な指示を早く出せるようになるのを目指すのは、次の段階でしょう。まずは、人間関係の構築や、マネージャーとしての仕事をするうえでの「大事なポイントを見つける」「勘どころを理解すること」が大事だと思います。そのためには、なるべく早く「私はこう思う」「私はこれをやりたい」と、自分を主語として話せるようになる必要があります。
いつまで経っても勉強しているのでは、マネージャーとしての価値は高まりません。情報を得るのは、あくまでも主体的に動くためです。
上長が言っていることを部下にパスするだけでは、マネージャーがいる意味はありません。組織のなかでも、「自分はこう思う」と意志表明していくことが大事です。そこにメンバーは信頼感を置くので、少しでも早く信頼関係を構築していく。人間関係をつくる意味でも、意思表明していくとよいでしょう。