「働き続けたい組織に共通する」分析で終わらないエンゲージメント向上の取り組み【SmartHR Agenda#2 レポート】

働き続けたい組織となるために、企業はHRテックをどのように活用しているのか。企業の担当者から直接事例をうかがい、視聴者とともに考えるオンラインイベント「SmartHR Agenda #2 〜HRテック活用事例に学ぶ働き続けたい組織〜」。

事例講演Ⅰでは、People Tree合同会社 Co-Founder&CEOの東野 敦さんを迎え、「働き続けたい組織に共通する分析 エンゲージメント向上の取り組み」をテーマに単独講演を行っていただきました。

【スピーカー】

People Tree合同会社 Co-Founder & CEO 東野 敦氏

関西大学卒業後、富士重工業(現SUBARU)、本田技研工業において、工場・研究所を担当。主に海外進出や現地法人の人事部門の支援を行い、直接担当した国は20か国以上に上る。その後、グローバル人事部門で人事戦略企画を担当し、2010年~2014年までフィリピン地区の人事ダイレクターとして駐在。海外人事部門立ち上げに伴い江崎グリコに転じ、グローバル人事ヘッド・戦略企画マネージャーを兼任。

在職中にPeople Trees合同会社を共同創業し、2020年9月より独立。創業以来、50社以上の人と組織の課題解決に伴走。人事制度設計をはじめ、海外法人の人事面での支援、タレントマネジメントシステムやテクノロジー導入による生産性向上にも強み。

よくあるエンゲージメントサーベイに対する誤解

会社において改革や挑戦を行う場合、社員のエンゲージメント(深いつながりを持った関係性)を高めることが重要です。

エンゲージメントサーベイは、組織が目指す方向性や姿に対しての考えを示すものですが、会社によっては従業員満足度調査や人物評価の一つと捉えるなど、ネガティブなイメージを持っていることがあります。まずはエンゲージメントを、組織の目指すゴールに対する「自発的貢献意欲」と置き換えました。ここから話を始めます。

経営者がエンゲージメントサーベイの結果が低い社員に対して、能力不足を指摘する場面を目にします。サーベイは個人の課題を浮き彫りにするものではなく、「会社経営が健全に行われているか」「方向性に対して社員の意識が統一されているか」などを分析し、課題に対して対策を考えるための手段です。

健康診断に置き換えると、検査数値が思わしくない場合、暴飲暴食が原因だとしたら、「なぜ過剰摂取してしまうのか」「健康な身体に改善するにはどうしたらよいのか」と考えることだといえます。分析だけで終わらずその先を考えることで、初めてエンゲージメントサーベイは効果を発揮するのです。

 

持続的なエンゲージメントに必要な要素ごとに問題がないかを確認する

エンゲージメントが一時的に高くても意味がありません。エンゲージメントを構成する要素ごとに課題がないかを確認し、それに見合った対策を打つことが大切です。

また、企業においてエンゲージメントを構成するのは人間なので、その人の気持ちや企業の方針など、さまざまな要素を考慮する必要があります。

 

組織の目指すゴールとは

企業では「方向性」や「到達目標」という言葉が使われることが多いですが、何がゴールなのか統一した認識が形成されていなければ、そこにたどり着くことはできません。まずはゴールへのプロセスについて説明します。

組織の目指すゴールには3つのチェックポイントがあります。

ハーバードビジネスレビューのエンゲージメント概念図によると、大きなグレーの枠のなかに、理解度・共感度・行動意欲が重なり合っています。これによって初めてエンゲージメントが成立します。

「エンゲージメントサーベイが低いのは社員の問題」と考える傾向があることは先述の通りですが、もしかしたら会社の方針に対する理解度が足りていないことが要因かもしれません。または「理解し、共感もしているが、誰も行動していない」という残念なパターンも考えられます。エンゲージメントが効果的に作用するために、この3つの要素が重なり合うことが前提なのは、ご理解いただけると思います。

 

チェックポイント1:組織の目指すゴールは明確か

では、3つのチェックポイントについて説明します。最初は「組織の目指すゴールは明確か」という点です。

会社経営には、経営理念や企業ビジョン、事業ビジョンなどを社員に示し、目指す方向性を明らかにするのが一般的です。増収なのか、社会貢献なのか、新規事業の成功なのか。目標は違っても「会社が向かう先」がゴールです。どこを目指しているのかを明確にしなければ、社員の足並みを揃えることは難しいでしょう。

 

チェックポイント2:組織に対して帰属意識や誇り、愛着があるか

チェックポイント2は、「組織に対して帰属意識や愛着があるか」です。これはエンゲージメントの一つのポイントになります。会社の方針は理解したものの、心のなかで反対しているようでは元も子もありません。

共感を得るためには、まずは自分の仕事に対して共感してもらうことです。「この仕事は楽しい」と思ってもらうこと、そしてメンバーとの良好な関係を築くことが大切です。そのほか、組織外からの称賛や承認によって帰属意識が強くなったり、仕事に誇りを持てるようになり、会社の方針に対しても共感が生まれる流れが理想的です。

 

チェックポイント3:組織の成功のため、求められる以上のことを進んでやる意欲があるか

チェックポイント3は、経営者にとって耳の痛い話で、人事の方々も日々悩まれていると思います。メディアなどでも「日本人はこうした意欲は非常に低い」といわれています。理解と共感は対策により高まりますが、忠誠心は社員の考え方によるものなので、意識を高めるのは簡単ではありません。

ところで「自分の成長」とはなんでしょうか。例えばキャリアそのものだったり、自分の価値観だったり。「自分が何のために生きているのか」や「どのような人生を送りたいか」などのテーマに行きつくと思います。

「会社のために働くことが自分の成長」という発想を持つのは難しいとしても、「会社で働くことで自分がやりたいことが達成できる」という発想に転換できれば労働意欲が高まりますし、仕事に対しても夢中になれるでしょう。その結果、キャリアや人生も豊かになるのではないでしょうか。

 

チェックポイント4:メンバー全員が組織の目指す方向性を理解し、それが正しいと信じているか

経営戦略すべてがうまくいくわけではないですし、失敗もあると思います。そのようなときには「メンバー全員が目指す方向性を信じる」という気持ちが必要です。

偉大な組織になるためには「この組織なら信じられる」という成功体験を積むことが必要です。そのもととなるのは、リーダーシップ、そしてビジョン戦略です。小さな成功体験でも、それを積みあげることで、信じられる組織に変化していきます。

 

チェックポイント5:高いエンゲージメントを維持できる環境か

優秀で素晴らしいリーダーがいる組織のエンゲージメントは高まる傾向がありますが、そのリーダーがいなくなったとしたら、組織はどうなるのでしょうか。組織運営は全体を見る必要があるので、統率力のあるリーダーの育成だけでは意味を成しません。

高いエンゲージメントを持続可能にする環境の実現には、組織、そして個人の活力の阻害要因を取り除くことが重要です。心理的安全性の保持や達成感の獲得、働きやすい仕組みづくりも重要なポイントです。

 

チェックポイント6:定期的にサーベイを実施しアクションできているか

サーベイを実施するにあたり、これまでお話した内容を一つずつチェックするのは大変な作業です。しかし、サーベイ実施により結果を得て「会社として何をやるべきか」、「何に集中するべきか」など方向性を導き出し、社員一丸となってゴールに向けて動き出すことは労使にとって有益です。

SmartHRからお借りしたスライドを使って、二つの事例をご紹介します。

 

▼エンゲージメントサーベイ活用事例1

1社目は、理解度と共感度の改善を図った例です。課題の判明後、早期に改善のアクションをとっており、スピード感があります。

▼エンゲージメントサーベイ活用事例2

2社目は「マネジメント思考ではない社員を店長に登用した」と聞いていますが、すぐに理解度の改善が図られています。いずれもサーベイの結果を受けて、迅速に対策をとっている点が共通しています。

エンゲージメントは「働き続けたい組織」「魅力ある企業」となるための布石

よく「どのような施策を打ったらいいか」という質問をいただきますが、例えば採用や人員配置、育成制度など、人事の機能ごとに考えてみてはいかがでしょうか。エンゲージメントサーベイを実践しても、業績や社員の成長につながらなければ意味がありません。

エンゲージメントサーベイを嫌がる経営者もいますし、管理職のなかには「自分の部署だけ低い評価が現れては困る」など、実施を拒むケースもあります。それは大きな誤解です。

そのような方には、「エンゲージメントサーベイはみんなで同じ行き先に向かっていくためのものであり、通信簿ではありません」と伝えています。

いろいろお話ししてきましたが、エンゲージメントサーベイ、そしてエンゲージメントを取り入れることで「働き続けたい組織」「魅力ある企業」になれると確信しています。

本日はご清聴ありがとうございました。

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