V字回復請負人、元スターバックスCEO 岩田氏に聞く「経営×人事」哲学


新型コロナウイルス感染症の蔓延により、従来の常識は一変しました。

人々の生活様式はもちろんビジネスにおいても同様。コロナ禍を機に注目を浴びた業界もあれば、今まさに向かい風のなか奮闘する業界もあります。

激動の時代のさなか、企業はどう乗り越えていくべきなのか?

日産自動車、日本コカ・コーラやアトラス、ザ・ボディショップ、スターバックス コーヒー ジャパンなど数々の名だたる企業で、経営者としてV字回復や最高売上を達成させてきた岩田 松雄さんに、「経営×人事」をテーマにインタビューしました。

聞き手は、株式会社SmartHR 執行役員 VPヒューマンリソース 薮田 孝仁が務めます。

ミッションの浸透に欠かせない2つの要素

薮田:本日は、様々な企業で経営に携わってきた岩田さんに「経営×人事」を切り口に色々とお伺いできればと思います。本日はよろしくお願いいたします。

最初の質問です。岩田さんが以前CEOを務めていたスターバックス コーヒー ジャパンさんは人を大切にする会社として知られていますよね。どのような背景があったのでしょうか?

岩田さん:スターバックスには「To inspire and nurture the human spirit – One person, one cup and one neighborhood at a time.」(人々の心を豊かで活力あるものにするために – ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから)というミッションがあります。多くの会社で同じような内容のミッションを持っているかと思いますが、スターバックスはこのミッションを本気で取り組んで、お店のパートナー一人ひとりに浸透しているのが背景だと思います。

前の社長から、私が採用されたのは、「スターバックスのミッションや価値観を共有できる人」だと感じて選んでくれたと言われました。私としても、入社後実際に店舗研修やお店周りしていると本当にスターバックスは素晴らしい会社で、隅々まで価値観の共有ができていると感じました。

皆さんもスターバックスのお店で体感されているかもしれませんが、店舗で働くスタッフもみんな気遣いができるし、先程のミッションの雰囲気そのままだと思います。私も実際に中で働いたときに、外からみている以上に本当にすごい会社だと実感しました。働きやすく働きがいのある、いわゆるワークハッピー企業ですね。

薮田:経営陣はもちろん全国の一人ひとりのスタッフにいたるまで、スターバックスのミッションや“スタバらしさ”が浸透し、共感する方にあふれているんですね。浸透させるにあたって、どのようなポイントがありますか?

岩田さん:講演後などによく「どうしてスターバックスはそんなにミッションが浸透しているんですか?」と聞かれます。

私はスターバックスに限らず、一般的にミッションを浸透させる方法は主に2つあると思います。ひとつは「経営トップのコミットメント」ですね。トップが本気になって取り組み、そして常にメッセージを発信する。例えば稲盛和夫さんのように。

ブラッシュアップという言葉がありますが、これはもともといい玉(宝物)が汚れているのを磨くという意味ですよね。当時業績が悪かったなか、私は「スターバックスのミッションは本当に素晴らしい」と改めてパートナー達に伝えました。ミッションは私が新しく作ったものではなくて、もともとある素晴らしいミッションに着目し、私がその原点に戻ろうという話をしました。またトップである私自身がそれに沿った言動をできるだけ体現するように努力をしました。お店のパートナーの皆さんも更にイキイキ働いてくれるようになったんです。ですから私は元々ある素晴らしいミッションという原点に戻ろうとしただけです。

ミッションを浸透させる2つ目は、これはまさしく人事に関わることですけれども「ミッションや価値観を評価の中に組み込むこと」です。

たとえば居酒屋などでよく同じ会社のビジネスパーソン同士が「◯◯部長が偉くなった」「△△専務が次期社長候補だ」なんて会社の人事の話をしていますよね。つまり、人事というのは従業員への最大のメッセージだと思います。「やっぱりあの人が偉くなるか」という人事をしていたら、みんな安心できますよね。

でも逆に、企業の価値観として和を以て貴しと言っているのに、仲間の足を引っ張って数字を上げるような人。あるいは、お客さま第一だと言っているのにお客さまを騙して数字を上げるような人を昇進させると、それがメッセージになってしまうわけです。

大人になると、人の価値観ってそう簡単には変わらないですよね。なので私は採用の段階がとても大切だと考えています。具体的には、新しく入社した人にミッションや理念教育をすることももちろんとても大切ですが、もともと同じような価値観を持っている人、カルチャーフィットする人を採用するほうが良い。中途採用、特に職位の高い役員レベルの人たちを採用するときにはより吟味すべきだと思います。新卒の場合は、かなりの程度会社の価値観に染められると思います。

薮田:ミッションやバリューの浸透、行動指針や価値観の浸透が経営のすべてに関わると、今のお話を伺っていて感じました。そして評価に組み込むと。

岩田さん:そうですね。一口に目標や評価といっても、定量か定性かで性質が異なります。たとえば定量面は、100万円の売上だったXさんと50万円だったYさん、といったように数値基準をもとに評価しやすいものです。

一方、見落とされがちなのが定性面の評価で、こちらも具体的な基準を設けたほうがいいと思います。たとえば、Yさんが会社のバリューや価値観をしっかり体現している人で、Xさんは体現していないというのは、基準なしには評価しようがありません。

もしこの場合「Xさん、あなたの評価は今回B評価です」と言われたら「どうして私はA評価じゃないんですか?」と当然気になります。そのとき「あのときの発言はお客さまを軽視している言い方でした」とか「部下のスタッフのケアをしてほしいときに放置したよね」など、具体的な基準とそれに沿う行動エピソードがなければ納得感は得られません。

これができないと、定性面の評価において納得感のあるフィードバックができないから、基準に届いていなかったとしても、なんとなく甘めの評価をつけてしまったり、皆一緒の評価になってしまったりする。でもそれって本来の評価を放棄していますよね。

評価において、定量面だけでなく定性面ももっと具体的に見ていくべきだと考えています。

岩田 松雄さん。株式会社リーダーシップコンサルティング 代表 / 元スターバックス コーヒー ジャパン CEO。大阪大学経済学部卒業、日産自動車に入社。外資系コンサル、日本コカ・コーラ役員を経て、社長として3期連続赤字企業ゲーム会社アトラスを再生。ザ・ボディショップの売上げを約2倍に拡大。スターバックスコーヒーでは過去最高売上げを達成。UCLA「100 Inspirational Alumni」に選出。主な著書「ミッション」(アスコム)・「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方(サンマーク)

バリュー評価は「比重」より「一人ひとり見る」ことが大切

薮田:SmartHRも評価に価値観へのマッチを含めていますし、すごく共感します。具体的には、等級に応じて比重は変わりますが、ざっくり半分が成果達成度でもう半分がバリュー(価値観)や基礎スキルの体現度という内訳です。

とはいえ評価にバリューを組み込むのは難しい、あるいは成果との比重が難しいという会社もあると思います。岩田さんがさまざまな会社を見てこられたなかで、そのような企業の人事の方に何かアドバイスはありますか?

岩田さん:たとえば評価点数100点のうちの、定性面に20点を配分するのか、あるいは30点がいいのかということよりは、実績数字だけではなく、会社の方向性や価値観の面もきちんと評価し「一人ひとり見ている」こと、そのメッセージが大切だと考えています。

課長や部長など、従業員を昇進させるときは「A評価が●回ついたら次のポストで」などの基準を設けているケースは多いですよね。そのときに昇進候補者の名前を横並びで見たときに、定量的な成果だけではいけないと思います。たとえば、チームを引っ張るリーダーシップや他部門への協力度合いなど。つまり評価をするときは、成果の数字だけを上げればいいわけではなくて、定性面も一人ひとり見ていく必要があります。

とはいえ「成果をあげ、会社に貢献してくれた」というのは事実だと思います。そんなときに参考になるのが、西郷隆盛さんが残した「功のあった人には禄を与えなさい、徳のある人には地位を与えなさい」という主旨の言葉です。

「功」とは売上や利益のことで「禄」とは給与やボーナスのことです。一方、その人を部長にするとなると、成果とは別に「部長にふさわしい人徳、人間性があるのかが」問われます。職位が上がるほど仕事ができて然るべきで、だからむしろ“徳”の比率が高くなる。それが従業員への最大のメッセージになっていくと思います。

もちろん、数字でわかりやすい職種とそうではない職種の違いもあるため、一概に何が正しいとは言えませんが、「成果には金銭的報酬を、人徳には地位を」といった具合に、切り分けて考えるのが良いでしょう。

不的確な人選を招かぬため「仮免許制」の昇進チャレンジ

薮田:人を抜擢していく、あるいは昇進させていく際のポイントをお話しいただきました。逆に、不適格な人選が起こらぬよう注意すべきポイントはありますか?

岩田さん:まず前提として、不適格な人選が起こらぬよう人事の鉄則は「迷ったら延期する」ことだと考えています。

迷うのは、何か引っかかるものや懸念点があるからですよね。たとえば「この人は成果を生み出せるが、メンバー育成できるかが不透明。パワハラっぽい一面もあるよね」などのように悩むシーンもあるはずです。そんなときは判断を急がず、まずは情報の裏取りをしにいくべきです。

裏取りしたところ​「すごく成果をあげるけれどもマネジメント職として人間面でまだまだ」といったときには、上司は具体的に不足しているスキルやマインドをきちんとフィードバックしてあげるべきです。あとはもしチームプレーに向いていないのであれば、その能力を生かすために部下のいない専門職につければ良い。

逆に「この人は成果も出しているし、特に懸念もなく部下からの評判も良好」なのであれば迷わず昇進させても良いと思います。

薮田:では、結果的に不適格な人を抜擢してしまった際には、どのように対処するのが望ましいのでしょうか?

岩田さん:多くの日本の企業では、一回昇格した人を降格させるのって基本的に難しい。そのなかで自分がとってきた方策としては「仮免許制」です。

これは私の体験ですが、ザ・ボディショップ時代に営業本部長がいない時に、私が社長兼営業本部長として兼務することになりました。とはいえ、その状態を続けるわけにもいかないので「抜擢するとしたらこの人がいいな、でもいきなり本部長が務まるかは未知数だな」と候補にあがった社員に「本部長付」の肩書を与えつつ実際は本部長としての業務をすべて任せる。

半年や1年が経ったときに部下からの評判も聞いて「任せられるな」と判断したら、本部長付をやめて正式に本部長になってもらう仮免許制を取り入れていました。もし「少し難しいな」と思えば外部を含めて他の人材を探して、見つかればご苦労様と言って元の役職に戻す。こうすれば本人も傷つかなくて良いと思います。たとえば似た考え方として、採用では「試用期間」がありますよね。あれを人事の役職制度においても適用したらいいと思うんです。

薮田:社員としても挑戦できる機会が増えますし、双方にとってメリットがありそうですね。

岩田さん:新規事業や新しいチャレンジなどのビジネス戦略は失敗してもそこからまた学べるので、どんどんトライアンドエラーしていいと思います。でも、人事上の失敗は簡単には取り返しがつきません。

部長としては有能だったのに、本部長に昇進させたらうまくいかず、その人に「部長に戻れ」と言うのはある意味辞めてくれというメッセージとして受け取られることも考えられるし、本人としても居づらいですよね。部長としてすごく会社に貢献していたのに、もしそれで辞めてしまったとしたら、会社にとって大きな損失だし、これは経営のミスだと思います。

でも「本部長付」や「本部長補佐」のような、失敗しても元に戻しやすい仮免許制にすることで挑戦しやすくなる。もちろんそこでの結果が良かったら本部長に昇進させれば良いわけです。

個性豊かな尖った人材を「ジョーカー制度」で採用

薮田:採用の話もありましたが、弊社でも採用選考時に「迷ったらNo Go」という言葉のとおり、懸念点があり迷うなら基本的に見送るという共通認識があります。

岩田さんの本の中で、ザ・ボディショップ時代「ジョーカー制度」という採用制度によって個性的な人材を採用する話がありました。この制度は「迷ったらやめる」「迷ったらNo Go」とはまた別のアプローチだなと感じています。

岩田さん:そうですね。社長が面接をするのは基本的に最終面接なんですが、そこに至るまでに、他に何人もの面接官が見ているから、ソツの無い優等生が選ばれがちなんです。それと同時に、尖っていたり個性があったりする人は、なかなかみんなの合意が得られないですよね。個性の強い人は好き嫌いがはっきり分かれます。

いわゆる優等生ばかり採用するのではなく、尖った個性も活かそうと「ジョーカー制度」というアイデアを考えました。各役員がジョーカーカードを持って、他の役員がなんと言おうとどうしても採用したい人がいたときに、そのカードを行使して採用できるような制度です。もちろん、そのカードを使って採用した役員が責任を持ってちゃんと面倒を見るという前提はありますが。

実際のところ私は1人だけ使いました。、その人はストリート系のパワフルな学生で、面接の場でものすごく魅力的な人材だと感じたんです。他の人は「うーん」というリアクションだったので、私がジョーカーを使いました。その社員は入社して早い段階で店長になったし、本社でも活躍してくれました。

薮田:「役員が責任を持って面倒を見る」とのことですが、経営陣にその覚悟があるかということですね。

岩田さん:やはりそこまで覚悟を持ってやらないと、面接のうまい人や優等生ばかりになっちゃうじゃないですか。そういう意味でジョーカー制は効果的だと考えています。

薮田:なるほど。全員一致じゃないと採用できないルールだけでは、岩田さんがおっしゃったような尖った人材を採用しにくいですし、多様性のある職場をつくっていく上で重要なヒントになりそうですね。

薮田 孝仁。株式会社SmartHR 執行役員 / VP of Human Resource(人事責任者)。2006年より株式会社ECナビ(株式会社VOYAGE GROUP)にてWebディレクターとして従事。2008年に株式会社ライブドアに入社し、2011年より人事を担当。2013年LINE株式会社に商号変更を経て、2013年4月より採用、育成、組織活性化を担当する人材支援室の立上げに従事。2018年12月、SmartHRに入社し、2019年1月より現職。採用、人材育成、評価制度、組織改善の分野を担当。

社長目線で見る「人事に求める役割」

薮田:次の質問ですが、「経営×人事」という切り口で人事にどのような役割を求めますか?

岩田さん:まず経営者から見たときに、人事は一番の相談相手なんです。社長の悩みの8割は人の問題、つまり人事なんですよ。もちろん戦略など色々とありますが、一番頭を痛めているのは人事です。

それで「●●本部長の悪い評判を聞いてきたんだけれども、彼をどう思う?」という話もあれば「●●部長は素晴らしいよね。私は次期社長候補の1人に挙げたいんだけど。彼も一度、営業を経験させたらいいんじゃないか」と人事と相談しあっているんですね。

あとはその人との信頼関係にもよりますが、社長も愚痴や弱音も吐きたいときがあるわけです。それを受け止めて「岩田さん、私もよくわかるんで支えていますから」と言ってくれたらとても助かります。おべんちゃらを言う必要はないけれども、社長も一人の人間として孤独感を感じ弱音を吐きたい瞬間もあるんです。

社長の相談相手になるのが、人事トップの仕事だと思います。

薮田:相談相手でもあり、ときには人事から社長に対しても厳しく言うべきこともあるんでしょうね。

岩田さん:そうですね。たとえばマネージャー会議で自分がしゃべった後、席について、仕事のメールが来ていたから携帯を見ていたら、そっと人事役員が来て「岩田さん、いまは携帯を見ないでくださいね。みんな見ていますから」と。やっぱり、みんなしっかり社長を見ているんですよね。本当に急用だったら席を外すべきで、いまここに居るなら会議に集中すべきだと。直接指摘してくれるのはありがたいですよね。

薮田:これまで色々な企業を見てこられて、人事責任者や人事担当者に求められる共通点はありますか?

岩田さん:人事でなく経理もそうですが、給料のことも含め人事情報を持っているので、個人情報の守秘が徹底され、口が堅いのは大前提ですよね。

それから、現場のことをよく把握してもらいたいです。社長からの見え方と、実際現場で起こっていることが違うことがよくあります。社長に対して悪い情報は入って来にくい。だから、現場の皆さんが困っていることや、どんなモチベーションで働いているのかという情報を人事が日頃から拾って人事部長が集約し、その内容を社長にフィードバックしてほしいんです。

例えば朝礼で社長の話した内容が、どのように受け止められているのか。ストレートに受け止めているのか、あるいは意図が間違って伝わっていないか。多くの社長が、もっと生の情報や生の声を聞きたいと考えているのではないでしょうか。

仕組みを理解し、わかりやすく伝え続けることが不可欠

薮田:逆にNGなことはありますか?

岩田さん:人事として「しっかり従業員に説明しない」のはNGだと考えています

一般的に給与体系や人事の仕組みは複雑です。きちんと説明をしていないと、とんでもない誤解が起こります。

これは、すごく成果を出したある契約社員を正社員登用したときのエピソードです。

私はとても期待していた人なので、時々メールのやりとりをする相手だったのですが、ある日「月給が下がっているんですが、私は何か悪いことをしたんですか?」という涙を流しながら書いたであろう内容のメールが来たんです。

何が起きたかというと、契約社員は年俸制で月給は12分割でボーナスがないんですよ。一方、正社員はボーナスが出るため、月給としては16分割なんです。つまり年収としては上がっているものの月単位の額面だけでいったら下がるんですね。

それを人事がちゃんと説明していないから、その人からすれば正社員になったのに給料明細を見たら下がっていて、それはショックだし、怒りますよね。

このように人事の仕組みってややこしいし、社員からしたら一回聞いたぐらいではなかなか理解しづらいものです。私はそのときの人事部長に「何でしっかり説明しないんだ」と叱責しました。その件に限らず、人事の仕組みが変更されたら、新入社員に対する説明も丁寧にするように何度も注意をしました。

まずは責任部署として人事自身が仕組みをしっかり理解すること。それをわかりやすく繰り返し従業員に説明すること。私はこれらを口酸っぱく言いました。

薮田:人事の役割の一つとして、制度や仕組みを作るだけでなく「浸透させること」もすごく大切な役割だと改めて認識しました。

岩田さん:ただ、浸透という意味ではいろんな仕組みを細かくやりすぎると複雑になってきますよね。たとえば5段階でつけていた評価を20段階に分けるとしたときに、15番目と16番目の差があるのかというと、正直細かすぎてわかりづらくなってしまう。人事自身説明がつかなかったり、従業員も理解できず不満につながったりしかねません。

なので、人事の仕組みには多少の余白を持たせて、誰もが理解し実行しやすいよう、“ガチガチにしすぎない意識”も重要だなと思います。

コロナ禍の経営における人事の役割はどう変化する?

薮田:先ほど、現場でどういったことが起こっているかの情報を収集したり、そのサマリーを経営者に伝えたりするなど「人事は経営者の相談役」の一面を持つというお話がありました。一方、コロナ禍においてリモートワークも普及してきた昨今、リアルの場で社員の様子を把握しづらい時代になっています。人事の役割はどのように変化すると思いますか?

岩田さん:これまで以上にコミュニケーションの質も量も問われると考えています。

質の面では、コロナ禍でリモートワークが中心になると、リアルでのコミュニケーションと比較して質を担保する難易度は高くなります。その分、量でカバーしていく必要がでてくる。

たとえばビデオ会議システムや社内チャットツール、ドキュメント共有ツールなど、必要なタイミングで必要なコミュニケーションを補ってくれるツールの活用は効果的でしょう。

得てしてリモートワーク下では孤独を感じやすいものです。そのような状況でも、日頃から上司や人事がまめにコミュニケーションを図ることで「自分のことを気にかけてくれているんだな、決して忘れていないんだな」と安心感を持ってもらうことが大切です。

また、現在リモートワーク中の企業も多いなかで、コロナ禍以降入社した新しいメンバーのなかには、社員と一回会っているか会っていないかというレベルの方も多いと思います。全社とは言わないまでも、万全のコロナ対策をしたうえで、1回でも直接会える機会を作れれば、コミュニケーションの質は変わってくるんじゃないかと考えています。

薮田:1回会うことで、どのような変化がありますか?

岩田さん:やっぱり人柄や空気感が互いに伝わりますよね。「なぜこの人はこんな話をしているのか」という言葉の背景をつかみやすくなります

たとえば「テンションの高い人がなぜかおとなしい、何かあったのかな?」とか「普段ものすごく人あたり柔らかい人が、今日は少しコミュニケーションの仕方が荒い。何か問題を抱えているのかもしれない」など、一人ひとりに起こっている様々な変化を察しやすくなるんです

薮田:弊社では、社員の状況を把握するために毎月従業員サーベイを取っているんです。そのなかに「心と身体の健康は特に問題ない」という設問があり「No」の回答が続いている方に対しては、人事からヒアリングするようにしています。

岩田さんのお話とあわせ、人対人で主観的に様子を把握しつつ、サーベイなどの手段で客観的にも把握することで、より解像度高く従業員を理解することが大切なんだと感じました。

おわりに

薮田:それでは最後に「経営×人事」という観点でメッセージをいただきたいです。

岩田さん:私は「経営=人事」だと考えています。

社内の人材は、何よりも価値観やカルチャーに共鳴できる人を採用していく。逆に、会社のミッションやバリューには合っていないけれども、スキルの高い人も世の中にはたくさんいます。そのような人材は、アウトソースとして活かしていくのが有効な選択肢です。

働き方も価値観も多様化するなかで、自社の経営にあった人事戦略を経営者とよく話し合って模索していってほしいと考えています。

薮田:岩田さん、本日はありがとうございました!

岩田さん:ありがとうございました!

岩田さんには「SmartHR Next 2021」にも登壇いただきました!

SmartHR Mag. は人事労務手続きを自動化するクラウド型ソフトウェア SmartHR からスピンアウトして生まれた、人事労務にフォーカスしたメディアです。人事労務に関わる人はもちろん、経営者や従業員も含む、すべての働く人たちにとって、価値あるメディアを目指します。
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