Q:社員に経営理念を浸透させたい。どうしたらいいでしょうか?【人材マネジメントQ&A】
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少子高齢化が進む現在では、優秀な人材を採用・確保・育成するために、人材マネジメントの重要性はますます高まっています。この企画では人事担当者が見えにくい「マネジメントの悩み」を人材マネジメントのプロが解説。ビジネスの現場でマネージャーが抱える課題に効果的なヒントをご紹介します。
A:浸透するに値する会社の本質を共有していますか
社員一人ひとりに「経営理念」を浸透させ、組織に一体感を持たせると目的に沿って行動ができ、会社や事業を大きく伸ばす原動力となります。「経営理念を根づかせたい」と考える経営者も多いでしょう。
その前に、まずは制定した経営理念が3つの条件を満たしているかをしっかり見てみましょう。経営理念は「会社の本質を表しているか」「他社と差別化できているか」「変わりにくいものであるか」が大事になります。
何を成す会社であるのか「会社の本質」がしっかり明記されていなければ、社員は右往左往してしまうことでしょう。また同業他社と類似するサービスや製品を提供している場合には何が違うのか。内容に「他社との差別化」が求められます。そして、コロコロと内容が変わっていたら、それは浸透するに値する理念とは言い難いものです。「変わりにくいもの」であることも重要です。
長期に渡って引き継がれていく経営理念の策定がポイント
経営理念は会社が長年に渡って引き継がれていくアイデンティティとも言えるでしょう。ですから、新しいサービスを出したことで変えたり、3~5年単位で内容が変わったりするようならば、そもそも理念として浸透させる内容ではありません。
「経営理念の浸透」は社員が一丸となって事を成すため。経営理念が浸透していると、役割外のことを積極的に行います。組織に属していることに誇りを持て、自ら積極的に行動を起こすのです。
社員が関与できる体制の構築と経営者自身の言葉で策定
では、どうすれば、経営理念が浸透しやすくなるのでしょうか。
まずは、社員が自社の決断に何らかの形で関与できる体制にあること。すると、理念が自分事になるために、浸透しやすくなります。次に、経営者自身が自分の言葉で、実現したい会社の在り方を語り、そのために会社はどのようにあるべきかを示すこと。
たとえば、日本を代表する経営者である松下幸之助氏は、経営理念についてさまざまな場面で語っています。現在でもなお、その経営理念は受け継がれていますから、松下幸之助氏の振る舞いは参考になる部分が多いはずです。
他方で、経営理念が浸透することには弱点もあります。経営理念が浸透すれば、組織は一枚岩になりますが、その状態が長く続くと、変革が起こしにくくなります。理念の浸透が常に正しいわけではないことを覚えておくとよいでしょう。