明日からできる実践的な働き方改革。「生産性向上」に繋がる人事施策とは? 【チームスピリット / Log11】
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こんにちは、株式会社オルトプラスのうちだです!
2019年4月に働き方改革関連法が施行され、時間外労働等の制約が明確になされることもふまえ、本格的に「生産性向上」の課題に取り組む企業が増えています。
そんな中、同4月21日(火)「実践的働き方改革の取り組み〜明日からできる生産性の向上施策〜byCBsync」(バックオフィスコミュニティCBsync主催)が開催され、株式会社チームスピリットの小倉 将さんと株式会社Log11の荏原 剛さんが、それぞれの考え方について語りました。
生産性向上に繋げる人事制度設計について、ふたつの視点からご紹介いたします。
【チームスピリット社】生産性の「具体」と「抽象」
株式会社チームスピリット 戦略企画室 リーダー
慶應義塾大学卒業後、新卒で三井不動産株式会社に入社。郊外型商業施設『ららぽーと』や三井アウトレットパークの用地取得業務に従事。2015年アカツキにジョインし、採用チームでの新卒採用や福岡拠点の立ち上げ等を行った後、2018年6月、チームスピリットに入社。現在は人事領域(採用/組織)を中心に組織開発を実施。 最近の趣味は、絵を描くことや山に登ること、映画を見ること。
小倉さん
まず、人のマネジメントの指標や管理の手法は、大きく分けて「パーソナルマネジメント」と「ヒューマンリソースマネジメント」の2つがあります。
チームスピリットでは、ヒューマンリソースマネジメントを大切にしていて「人をもって事をなす」のが私の人事としての仕事だと考えています。
生産性向上の目的と定義を社内で統一させる
そこで、ふたつ問いたい事があります。
みなさんにとっての「生産性向上」とはどんな意味の言葉でしょうか? また、生産性向上とは何を目的に行っている取り組みでしょうか?
そもそも、生産性向上とは「所得を高める」ための取り組みとして始まっています。
今では様々な解釈がありますが、前段として「所得を高める」という考え方が根本にあるんです。
生産性には、「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」があります。
例えば、「物的労働生産性」は、コストをけかけて、どれだけの見返りが返ってくるかというか考え方。
一方の「付加価値労働生産性」は、社会に出した価値の総量をメンバーの従業員数で割った時どのくらいの価値になっているのかという考え方です。
そして生産性を測る「バリュー(価値)」という言葉も、能力と環境の掛け合わせで変化したり、手法と姿勢の掛け合わせだったり、目標を達成するためにどれだけ考えて行動したかだったり様々な解釈があります。
このように、様々な考え方がある中で、皆さんにとっての「生産性」とは何か、「バリュー(価値)」とは何かを、各社で位置づける必要があると感じています。
そんな中、私にとっての「生産性」の位置付けや最終的なゴールとしては、会社のミッションを達成するため。つまり自分たちが世の中に何に対して何に貢献できるかという使命を果たすために必要だと考えています。
制度設計の役割と意味
次に、チームスピリットは生産性向上のために何に取り組んでいるかをお話しします。
私は、人事領域の仕事を4つの象限に分けています。
横軸が具体的な「人財(個人)」と「組織」、縦軸が抽象的な「心理的価値」と具体的な「機能的価値」という分け方です。
抽象的な「心理的価値」を高める取り組みとしては、読書会や、自分の価値を知るためのワークショップ。
組織的な取り組みでいうと、いわゆるエンゲージメントやロイヤリティと言われる部分で、社内での懇親会や、ビジョン・ミッションの見直しなどに取り組んでいます。
そして、具体的な「機能的価値」を高める取り組みの中に、人事制度などの制度設計が含まれます。
実は、チームスピリットは私が入社する前は、最低限の人事制度しかなく、現在もこの方法で制度設計をしている最中なのですが、こちらは私の考える制度の体系図となっております。
「人事制度とは願い。」込めた想いを役割等級の軸に
秦の始皇帝が中華統一を目指す題材の漫画があるのですが、物語の中で後の始皇帝「贏政(えいせい)」が「中華統一のためには法が必要だ」ということに気が付きます。しかし、主人公は法が何かわからないと悩み、法の番人に「法とは何か」と問うシーンがあるんですね。
その時の回答が「法とは願いだ」という言葉なんです。
多くの人が、法を処罰や管理の為と考えていると思います。しかし、「令和」という元号もそうですが、会社の人事制度も「願い」だと思うんです。自分たちがどのような会社になりたいか、どのような存在になりたいかという願いや想いを込めたものが人事制度だと私は考えています。
そこで、チームスピリットでは「個の成長」「グローバル」「アライアンス」を願いの軸に考えて、役割等級を使って個々の役割の明示と、それに紐づく縦の価値貢献要素を置いています。
なぜ、このような役割等級を置いているかというと、メンバーに「成長の道標にして欲しい」とメッセージを込めています。
資料にもあるとおり、自分たちのやりたいことを見つけて自走する力や、チームを巻き込む影響力、個性を伸ばすオリジナリティなと兼ね備え、自分たちのやりたいことを実現してほしいがための等級制度です。
これからの生産性「カタからカタチへ」
今まで、生産性という言葉は比較的オペレーティブな言葉として使われていて、「時間に対する生産量で考える」というのが一般的でした。
もちろんその考えは、連続的な成長をするために必要で、ゴールが明確で物を作れば売れる時代であれば非常に重要だったと思いますし、今の時代も必要とするシーンは数多くあります。
しかし、これからの時代は非連続的な成長をするためのイマジネーションや、創造性を発揮する場の提供こそが、会社の成長やビジョン・ミッションの達成に繋がるのではないでしょうか。
世界を豊かにしたいとか、世の中を豊かにしたいとか、そういった言葉をよく耳にしますが、「すでに結構豊かですよね?」という感触もあり、では何をしたらさらなる価値が生み出せるかを追求される時代だと感じています。
非連続的な成長をするための生産性は「想像×実行」です。
カタ(型)からカタチ(形)へ、いわゆる血の抜けたルーティーンを作っていくのではなく、血を通わせたクリエーションを生み出すことこそが、これからの生産性の形だと思っています。
【LOG11社】労働生産性を科学する
株式会社LOG11 代表取締役コンサルタント
ベンチャーを二社経験。共に1500名規模に拡大、SHIFTは創業メンバーとして参画、マザーズ上場。企業の成長フェーズに起こることは全て経験済み。コンサル、事業、営業、人事を統括。コンサルが天職、今年、労働生産性向上を目的としたLOG11を新たに設立。インクス、SHIFTで実践してきた人材育成ノウハウのブログなどを書いている。
荏原さん
今までのコンサルや会社設立の経験から、全ての業種・職種に「業務フロー」があり、タスクと成果物で構成されていると考えています。
とてもシンプルな事で、タスクをこなすと一定確率で成果が出て、必ずしもそうとはいえませんが「目的に繋がる」ということです。
「人口減少しても非労働者の数は減らない」生産性向上が必要とされる本質
はじめに、今回の働き方改革の前提である日本の課題について触れます。
人口減少する中で労働人口が減っていくというのは、みなさんも認識頂いていると思います。しかし、意外と着目されていないのが、リタイヤする人とこれから働く人の相場が、あと25年間はくらいほとんど変わらないということです。
つまり「なぜ働き方改革で生産性向上を求められているか」というと、工数がどんどん減って行く中で、生産数は一定を維持しないといけないからなんですね。
もちろん、女性の活躍やシルバー層の雇用などで労働人口を増やす動きも重要ですが、人口減少のなか雇用には限りがあるので、生産性を向上しないと生産量が間に合わないという訳です。
制度設計のつまずきは「把握」が足りていないこと
今回の働き方改革で政府が推進していることは様々ありますが、トピックを3つ選ぶと「労働時間」「同一労働・同一賃金」あとは「柔軟な働き方の実現」が挙げられます。
ただ、正直なところ上手くいっている会社をあまり見たことはありません。
なぜなら、政府の推進は「残業時間の縮小」「雇用の多様化」等ゴール設定のみで、具体的に解決する手段は企業ごとで考えましょうというスタンスなんですね。私は、ここが各企業上手く言っていない原因になってしまっているのではないかと思っています。
では、具体的に企業はどこでつまずいているのでしょうか?
それはずばり「把握すること」でつまずいているんです。
私は、コンサル業という仕事柄、マネージャー育成のために、沢山のマネージャーにインタビューをしたり、ディスカッションをしてきました。
そんな中、今回の働き方改革について「残業時間を具体的にどうやって減らすんですか?」と聞くと、そもそも部下が何の業務をどのくらいやっているかを把握していないケースがほとんどだったんです。
同一労働・同一賃金についても同じことが言えて、「何が同一か」と把握ができていない。
在宅ワークに関しても、現状把握をしていないためどうやって管理をしたらいいかわからない。
つまり、現状を把握していないのが一番最初のつまずきであり、課題になっているんです。
組織を変える5つのフレームワーク
しかし、もっと本質的な問題点は把握の先にあります。
把握したあと、どのように改善していくか具体的な道標をひける人が社内にいないんですね。
そこで私から、生産性向上に繋がる5つのフレームワークをご提案をしたいと思います。
ログを取って、時間を図って、記録をして、アドバイスをもらって、結果につなげるという到ってシンプルな行動です。
こちら、アスリートの行動や受験勉強、ダイエットなども全て同じフレームワークで語れて、もっと簡単に表現すると「ログを取って可視化して筋トレする」の繰り返しです。
皆さん、部活動や受験勉強などでご経験があるとおり、子供の頃からやってきたありふれたことではあるのですが、これをビジネスに置き換えるとどうも動きが止まってしまう企業が多く見られます。
生産性向上のボトルネックは「開始の壁」
なぜ動きが止まってしまうか?
結果を出すためには、様々な壁が立ちはだかるからです。
生産性を向上させるためには、開始の壁→決定の壁→継続の壁→活用の壁→評価の壁といった5つの壁があると考えています。このうち「まず計測する」という開始の壁を超えられない企業さんが多く見受けられます。
まず、時間的な比率の高い業務がわかり、その上で生産業務(売上に直結している)非生産業務(売上に直結していない)を見分けます。スポーツやダイエットと同じで、現状を把握し問題点に意識を向けるだけで結果は改善されるんです。
そして、ログを取らないことで一番見落とされてしまっているのが「工数のかけ過ぎ業務」。例えば、10分で終わる仕事を10分で終わらせる人ってあまりいなくて、皆さん無意識的に納期で仕事をしています。
仮に、18時の納期であればそれに間に合うように仕事しますよね? 結果、18時に間に合うように10分以上かけて仕事をすることになってしまうのです。
では、10分以上かけて皆さん何をやっているかというと、無意識的に品質を上げる作業を繰り返します。
品質を上げるのは非常に大切ですが、10分で終わる仕事は、10分で8割から9割の品質が担保されているわけですから、残りの1割を何度も何度も繰り返しあげようとしても、そこまで上げるのは難しい。
こういった無駄な時間を削減するために、空いている工数を明らかにして、別の仕事に充てるのが非常に大事なんです。
誰をターゲットに制度を作るかが大切
ただ、ログを取ることに対しての大きな課題は「監視されている」という意見や見え方です。
そんな中、私が実践をしている制度設計の考え方についてご紹介します。
悪者を探してはいけないのですが、メンバーの構成は2:6:2の法則に基づいていて、生産性が高い人もいれば、そうでなはい人やサボっている人など様々で、その中でも、評価されている人とされていない人に分かれています。
つまり、監視されてまずいのは20%の手を抜いているメンバーなのです。
人事制度で公平性を保つために、誰をターゲットに制度を作るかというのは非常に重要ですよね。
今回の生産性向上というテーマでは、以前は頑張っていた20%の人と本来評価されるべき40%の人にフォーカスすることが、公平的で一番生産性が上がると考えています。つまり、ログを取って工数管理することで、6割の人が今よりも評価される構図になるのです。
このようにして制度を設計すれば、自ずと生産性は上がります。
最後に、本日は沢山のお話しをさせて頂きましたが、各企業に戻って実践してほしいことはただひとつ。
開始の壁を打ち破ってほしいということです。
この壁を恐れずに、把握を始めることで次のステップが見えてくると思います。
(了)