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“下請け法・独占禁止法”遵守のポイント「しわ寄せ防止総合対策」とは?

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こんにちは。社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタントの篠原宏治です。

厚生労働省、中小企業庁、公正取引委員会の3省庁は6月26日、『大企業・親事業者の働き方改革に伴う下請等中小事業者への「しわ寄せ」防止のための総合対策』(しわ寄せ防止総合対策)を策定したことを発表しました。

令和2年4月からの、中小企業への時間外労働の上限規制の適用に向け、緊密な連携を図りながら様々な取り組みを実施していくとしています。

今回は、しわ寄せ防止総合対策の概要と対応の留意点について解説します。

下請等中小事業者への「しわ寄せ」とは?

2019年4月に、時間外労働の罰則付き上限規制や年次有給休暇の年5日取得義務などが盛り込まれた「働き方改革関連法」が順次施行され、多くの企業において業務効率化や残業時間削減の取り組みが進められています。

ただ、大企業をはじめとした親事業者における長時間労働の削減等の取り組みは、下請等中小事業者に対する、適正なコスト負担を伴わない短納期発注や急な仕様変更、人員派遣の要請及び附帯作業の要請などの「しわ寄せ」が生じる場合が少なくありません。

しわ寄せ防止総合対策では、次の5つの項目を「しわ寄せ」に当たる具体例として示しています。

  1. 買いたたき
  2. 減額
  3. 不当な給付内容の変更・やり直し
  4. 受領拒否
  5. 不当な経済上の利益提供要請

出典:厚生労働省・中小企業庁・公正取引委員会「働き方改革に伴う『しわ寄せ』への対策について」より抜粋

「しわ寄せ」は、下請等中小事業者における働き方改革を妨げるだけでなく、国が「一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジ」と位置付ける働き方改革の本質的な実現をも妨げるものであり、防止に向けた対策は非常に重要です。

「しわ寄せ防止総合対策」の概要

「しわ寄せ防止総合対策」では、大企業等の働き方改革による下請等中小事業者への「しわ寄せ」の防止は、親事業者と下請等中小事業者の双方が、生産性を向上・成長と分配の好循環を実現するうえで共通の課題とされています。

その中で、次の4つの取り組みを柱として掲げています。

  1. 関係法令等の周知広報
  2. 労働局・労基署等の窓口等における「しわ寄せ」情報の提供
  3. 労働局・労基署による「しわ寄せ」防止に向けた要請等・通報
  4. 公取委・中企庁による指導及び不当な行為事例の周知・広報

 

この中で注目したいのが、2~4の一連の取り組みです。

2. において、労働局・労基署等の窓口や監督指導で、下請等中小事業者から大企業・親事業者の働き方改革による「しわ寄せ」に関する相談情報が寄せられた場合には、地方経済産業局に相談情報の情報提供を行うこととしています。

また、3. において、労働局・労基署が行う監督指導で労働基準法第24条違反(賃金不払い)や第32条違反(違法な残業)等の労働基準関係法令違反が認められ、その背景に親事業者による下請法等違反行為の存在が疑われる場合には、公正取引委員会や中小企業庁への通報が行われます。

通報を受けた公正取引委員会や中小企業庁は、4. により、下請法等に基づいて当該事案に対して厳正に対応することとしています。

これら一連の取り組みにより、実質的に下請等中小事業者への負担の押し付けや過度な要求が行っている親事業者は、下請等中小事業者が労働基準法に違反した場合に、その責任の一端を追及されることになると言えるでしょう。

しわ寄せ防止総合対策への対応

しわ寄せ防止総合対策では、11月が「しわ寄せ防止キャンペーン月間」と位置づけられました。

厚生労働省が実施する「過重労働解消キャンペーン」や公正取引委員会・中小企業庁が実施する「下請取引適正化推進月間」の各種取組と連携を図りながら、経営トップセミナーの開催など、大企業等の働き方改革に伴う「しわ寄せ」の防止に向けた集中的・効果的な取り組みを実施するとしています。

「しわ寄せ」は、下請け法や独占禁止法で定める禁止行為に該当する行為であり、企業名公表や課徴金の支払いなどの厳しい処分が下される可能性があります。

下請法違反で指導を受けた企業がニュースで大きく取り上げられることも珍しくなく、企業イメージを損なうなどの事業経営への影響のおそれもあります。

今回のしわ寄せ防止総合対策の策定によって、今後、より一層の指導の徹底が図られることが予想されます。

親事業者と下請等中小事業者がともに、どのような行為が「しわ寄せ」に該当するのか、「しわ寄せ」に該当する行為が行われていないかをしっかりと検討し、防止対策を講じていくことが求められます。

お役立ち資料

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