1. 人事・労務
  2. 労務管理

有給休暇5日取得できなかったとき、人事がすべき対応とは?【社労士が解説】

公開日
目次

こんにちは。社会保険労務士の吉田です。

福岡県久留米市の企業が、有給休暇の5日取得義務を果たせていないにもかかわらず、取得できているとした虚偽の内容で有給休暇管理簿を提出し、書類送検となったニュースが話題になっています。

今回は本件に絡めまして、有給休暇5日取得義務のおさらいと、万が一、取得できなかったときに会社はどう対応すべきなのかについて解説します。

そもそも有給休暇5日取得義務とは?

2019年4月1日より施行が開始された「有給休暇5日取得義務」は皆さまもご存じのとおりです。

本法の施行により、従来と比べ有給が取得しやすくなったという従業員の方も多いのではないでしょうか。

おさらいしますと、年休付与日数が10日以上の従業員にたいして、基準日(有給付与日)から1年以内に必ず有給休暇を5日取得させる必要があるという制度で、入社後半年以上経過したフルタイムの社員はもちろんのこと、パートやアルバイトにおいても、以下のどれかに該当する場合には対象となります。

  • 週30時間以上勤務している
  • 週5日以上勤務している
  • 年間217日以上勤務している
  • 入社後3年半以上経過していて週4日(または年間169日〜216日)勤務している
  • 入社後5年半以上経過していて週3日(または年間121日〜168日)勤務している

また、この法改正に伴い、すべての企業で「年次有給休暇管理簿」の作成と3年間の保存が義務付けられました。

「年次有給休暇管理簿」とは、有給休暇の取得状況の把握を目的としたもので、従業員ごとに作成し、以下の3項目を必ず盛り込んでおく必要があります。

  • 基準日(有給付与日)
  • 日数(基準日から1年間に実際に取得した有給日数。1日単位の取得か、半日単位の取得かもわかるように記載する。)
  • 時季(実際に有給を取得した日付)

なお、決まったフォーマットはありませんので、上の3項目さえ盛り込んでおけば、会社で自由に作って問題ありません。

年次有給休暇管理台帳

(出典)有給休暇管理簿 – 厚生労働省

仮に、有給休暇管理簿の作成を怠った場合でも、それ自体に罰則や罰金は原則ありません。しかし、有給休暇を10日以上付与しなければならない従業員に対し、年5日以上有給休暇を取得させなかった場合は、従業員1人あたり30万円以下の罰金を支払わなければなりません。

有給休暇管理簿を確実に作成し、管理するためには、人事・労務領域の業務効率化が欠かせません。以下の資料では、労務システム導入でスムーズに各種システム導入・業務効率化を叶えられる理由をご紹介します。お役立てください。

【給与・勤怠システム検討中の方へ】業務効率化は労務システムから検討すべき2つの理由

虚偽報告は絶対NG! どう対応すべきだったのか?

今回、書類送検となったケースですが、労働基準監督官に対し年間5日間の年次有給休暇を取得できていない労働者が複数人いるにもかかわらず、「全員取得できている」と虚偽の内容を記載した有給休暇管理簿を提出し、記載内容にもとづいて虚偽の陳述をした疑いがあるとのことです。

なお、今回の書類送検の対象となったのは虚偽陳述のみで、有給休暇を取得させていなかったことについては、指導で改善を求めたとのこと。

つまり、虚偽陳述さえしなければ、是正勧告のみで済んだ案件でした。

労働基準監督官の尋問に対して虚偽の陳述をした場合、労働基準法第120条で30万円以下の罰金に処すると定められています。

監督指導の一般的な流れ

(出典)労働基準監督官の仕事 – 厚生労働省

当然のことながら、従業員の有給休暇管理を適切に行い、有給休暇5日取得義務を果たすことが大前提ですが、仮になんらかのミスで5日間の取得義務が果たせていなかったことが判明した場合でも、正直に記載し、是正に努めることが大切です。

労働基準監督署の調査に際し、有給休暇5日取得義務を果たせていなかったからといって、よほど悪質な場合を除き、即罰金刑が課せられるケースは非常に稀です。

まずは是正勧告となり、適切に是正するよう求められます。ただそれでも是正されず、繰り返し違反となった場合は、罰金刑に処せられることになります。

適正な有給休暇管理のための3つのポイント

有給休暇5日取得義務の施行に伴い、有給休暇の管理は複雑になっています。適切に有給休暇管理をするためのポイントについて解説します。

(1)基準日を統一する

労働基準法の原則として、入社日から6ヵ月が経過した日に、10日間の有給休暇が与えられます。この原則に従えば、有給休暇の基準日は、従業員ごとに、その入社日に応じて異なることになり、有給休暇管理が複雑になります。

これを解決するために、全従業員の有給休暇の基準日を統一する方法があります。

具体的には、基準日を毎年1回、4月1日などに統一します。

ただし、基準日を統一するうえで気をつけなければいけない点として、法律で定められているよりも不利な条件になってはいけません。

たとえば、前述したように基準日を4月1日に統一した場合、5月1日入社の社員は、本来であれば入社半年後の11月1日に最初の有給休暇の基準日が発生したはずが、翌年の4月1日まで有給休暇が発生しなくなってしまいます。

これを避けるために、基準日を統一する場合は、入社時に一律10日分の有給休暇を付与するなどの対策が必要となります。

(2)ソフトを導入する

有給休暇管理の専門ソフトなどのシステムを導入するのも1つの方法です。もちろん費用は発生しますが、うっかりミスなどのヒューマンエラーを防ぐことができ、時間短縮にもなりますので検討の余地は十分にあるでしょう。

(3)有給休暇の計画的付与を活用する

有給休暇が取りにくい体質の会社は、有給休暇の計画的付与(年次有給休暇のうち、5日を超える分については、労使協定を結ぶことで、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度のこと)を活用し、会社が定めた日に計画的に有給休暇を取得させるといった取り組みも有効です。

有給休暇5日取得義務の施行前と比べれば、昨今は「有給休暇取得=悪」といった誤った概念はかなり払拭されつつあるように思います。

有給休暇本来の目的は、一定期間勤続した労働者に対して、労働者の「心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために付与される休暇」であり、従業員が有給休暇を取得することは「企業にとってマイナスではなく、むしろプラスである」ということを会社はしっかりと理解し、会社が率先して休暇を取得しやすい仕組みづくりに着手することが重要です。

お役立ち資料

【2023年版】人事・労務向け 法改正&政策&ガイドラインまるごと解説

人気の記事