「36協定届の押印署名廃止」を鵜呑みにするのはキケン! 実態と改正内容を解説

2021.03.09 ライター: 副島 智子

こんにちは、SmartHR 人事労務研究所の副島(そえじま)です。

2021年4月から「36協定届の押印・署名の廃止」となります。このニュースを見て「やったー!!!」と思われた方も多いのではないでしょうか。全国に支店や店舗などがある会社は、各事業所ごとに労働者代表とのやりとりが必要になるため、効率化が進むのではないかと期待されたことでしょう。

しかし、36協定の手続きの実態と今回の改正を照らし合わせると、残念ながら手放しでは喜べない状況があります。実はあまり知られていない、36協定の手続きの「そもそも」のところから解説したいと思います。

協定書と協定届

ややこしいのですが、36協定関連には「36協定書」と「36協定届」の2つの書類があるんです。

協定書は「規定書」、協定届は「その規定書を労働基準監督署に届け出るための書類」、このようにイメージするとよいでしょう。

今回の押印・署名が不要となったのは、協定届(その規定書を労基署に届け出るための書類)です。

協定書(規定書)については労使双方で合意・締結されたことを明らかにするため、労働者代表および使用者の署名または記名押印が必要です。

運用の実態

協定届は「協定書の内容の協定届への記入」が必要です。

すなわち、協定書と協定届はほぼ同じ内容になるため、協定書は協定届に兼ねてもよい(協定書と協定届を1つにしてもいい)とされています。そのため、協定書を作成していない会社がほとんどなんです。

それを表すように、協定届のサンプルデータはネットで検索すればたくさんヒットしますが、協定書はなかなか見つかりません。

押印・署名は不要となったのか?

上記の協定書と協定届の違いと、今回の改正を照らし合わせてみると、次の状態となります。

パターン1(協定書と協定届を別々に作成している)

パターン2(協定書を協定届に兼ねている)

このように、実は36協定関連の手続きから押印・署名はなくなっていないのです。

朗報あり! 物理的な印鑑でなくても大丈夫

36協定は労働時間に関する取り決めの手続きであるため、引き続き労働者代表と事業主の双方が合意しあっていることを明らかにする必要があると、ご理解いただけるでしょう。

これまでは物理的な印鑑による押印が求められていたため、各事業所に36協定届を郵送し、労働者代表が押印したものを返送してもらうという書類のやりとりは大変なものでした。しかし、このたびのe-文書法およびこれにもとづく厚生労働省の通達により、電子契約書ソフトなどで合意を形成することも法的に問題なしとなりました。

このたびの署名・押印の廃止に関するニュースは、結果的に不十分感が否めませんが、双方の合意を示す手段として電子契約書ソフトも加わったことは、私たちの業務効率を大幅にアップしてくれるものになるのではと思います。各事業所への郵送・事業所からの返送という、手間のかかる作業をなくせるのです。

昨今、労働時間の上限規制の改正もあり、これらの対応不備への調査や罰則(送検)のニュースが増えてきているように思います。「労働基準法違反になっていた」なんてことのないように注意しましょう。

おわりに

2019年4月の労働条件通知書の電子化解禁を皮切りに、電子契約ソフトの活用が加速しています。物理的な押印は従業員側にも負担を強いるものとなります。法改正の波に合わせて便利なツールの活用が益々求められていくでしょう。

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20人未満のIT系ベンチャーや数千人規模の製薬会社、外食企業など、さまざまな規模・業種の会社で15年以上の人事労務の経験を持つ。2016年にSmartHRにジョイン。従業員、労務担当者、経営者の3つの視点を持ち、SmartHRのペーパーレス年末調整機能の企画、電子証明書取得方法の解説など、メンドウで難しいものをわかりやすくカンタンにしてユーザーに届けることを得意とする。2019年7月「SmartHR 人事労務 研究所」を設立し所長に就任。同研究所の採用情報はこちら
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