今「タレントマネジメント」が注目される3つの理由


こんにちは、特定社会保険労務士の榊 裕葵です。

最近「タレントマネジメント」という言葉が注目を集め始めています。

しかし「タレントマネジメント」とは具体的にどのような取り組みなのか、よくわからないという方もいらっしゃるかと思います。

そこで本稿では、この「タレントマネジメント」について解説いたします。

「タレントマネジメント」とは?

まずはそもそも論になりますが、皆さんは「タレントマネジメント」という言葉をご存知でしょうか?

「タレント」という言葉の響きから、多くの人が直感的に連想するのは、“芸能人”や“芸能界”のことかもしれません。

確かに我が国では、和製英語で「タレント=芸能人」ですが、元々の英語の意味では、「才能」や「手腕」といった、普遍的なニュアンスで使われています。

ビジネス用語である「タレントマネジメント」は、そのような本来の意味のもと「社員の才能や手腕をなどを、人事情報として管理することで、戦略的な人材配置や人材教育を行うこと」という趣旨で用いられているのです。

「タレントマネジメント」台頭以前の人事情報に対する考え方

旧来、会社における社員の人事情報といえば、「住所・氏名・生年月日・基礎年金番号・家族構成」など、社員を社会保険に加入させたりとか、給与計算を行ったりするために管理するもの、という考え方が一般的でした。

あるいは、労働基準法で定められている法定帳簿のひとつである「労働者名簿」を作成するために必要だから、という法的な理由で人事情報を集めるという側面もあったかもしれません。

また、ステレオタイプ的な表現になってしまいますが、年功序列・終身雇用が当たり前だった時代は、出世や配置転換にしても「昭和○年の入社組」とか「社長派、副社長派」といったような、入社年次や社内派閥などが社員個人の能力よりも重視されていましたし、その頃は日本経済全体に勢いがあったので、必ずしも適材適所に人材を配置しなくても、画一的な労務管理で会社が成長していけるという「余裕」がありました。

「タレントマネジメント」が注目されるようになった背景

ところが、21世紀を迎える前後から、経済のグローバル化が進み、国際競争も激化しました。

そのような中、我が国の企業も競争力を維持するために、年功序列・終身雇用を改め、成果主義的な評価制度や賃金体系をとることが増えたほか、適材適所に人材配置を行って迅速な意思決定やビジネスを遂行することが意識されるようになってきました。

その流れの中で、これまでの画一的な労務管理を改め、社員1人1人の個性やパフォーマンスに注目する必要性も出てきたのです。

このような社会経済環境の変化が、我が国でタレントマネジメントが注目を集め始めるようになったきっかけなのではないかと私は考えています。

加えて、2000年前後というのは、サイバーエージェント、GMO、ライブドアといったIT系のベンチャー企業が急成長していた時代でした。

一般的にITベンチャーでは、実力主義・少数精鋭という社風が見られ、経営者や人事責任者は、誰にどのような仕事をしてもらえば会社として最も成果が出るのかを考えますので、「タレントマネジメント」という言葉自体が意識されていたかは別にしても、必然的にタレントマネジメント的な考え方が必要だったわけです。

今「タレントマネジメント」が注目される理由

そして、2017年現在では、「タレントマネジメント」は経営戦略としても非常に重要な考え方のひとつになっています。

その理由は、3つあります。

(1)優秀な人材の流出を避け、適材適所で成果向上を図る

かつては、働く人も「就職」ではなく「就社」という意識がありましたから、「会社から与えられた仕事は選り好みせず何でもやるべきだ」という認識がありました。それゆえ、会社が配属した先が、本人の希望や適性に合っていなかったとしても、大きな問題になることは滅多にありませんでした。

しかし、現在は転職することが珍しいことではなくなりましたし、優秀な人材ほど主体的に自分のキャリアプランを考えていますから、本人が自分の思い描くキャリアプランにマッチしていないと考えたら、それを実現できる会社に移っていってしまいます。

このようなキャリアプランのミスマッチによる優秀な人材の離脱を避け、適所で最大の成果を発揮してもらうには、「会社が求めること」と「本人の希望・適性」をすり合わせることが必要で、そのためのデータとして、タレントマネジメントは重要です。

(2)多様な価値観を尊重し、チームワーク向上を図る

次に、社員の「価値観の多様化」への対応です。

高度経済成長期やバブル期は、「24時間戦えますか」というCMが流れたくらい、いわゆる「モーレツ社員」が当然とされてきました。

しかし、現在は、ハードワークをしたい人もいれば、プライベートも大切にしワークライフバランスをとりたいと考える人もいます。ひとりひとりの「働く」ということに対する価値観が多様化しています。

そのような中で、「モーレツタイプ」の上司の下に「ワークライフバランス重視」の部下をつけたら、上司は部下を物足りなく思い、部下は上司のことを場合によっては「パワハラ」だと感じたり、職場を「ブラック」だと感じたりすることもあるかもしれません。

タレントマネジメントを行うことによって、上記のような、社内の人間関係におけるミスマッチの組み合わせを避けることができます。もちろん仕事なので、価値観の異なる上司と部下が組まなければならないこともありますが、やはり、タレントマネジメントを行っていれば、上司が意識的に部下の価値観を把握することができますから、一定の範囲で部下の価値観を尊重し、不用意な衝突を避けることもできるでしょう。

更には、能力上適材適所であり、しかもより良いチームワークを発揮できる環境であれば、成果の最大化も期待できます。

そのほか、近年精神疾患で休職や退職に追い込まれる社員が増えていますが、精神疾患の原因として「上司との衝突」が引き金になることは少なくありません。メンタルヘルスの観点からも、タレントマネジメントを行うことは、ある種の防止策として効果的であると言えるのではないでしょうか。

(3)働き方改革を推進し「働きやすく成果の出せる組織」をつくる

働き方改革の一大テーマは、残業時間の削減ですが、そのためには効率的な働き方を行うことが不可欠です。

効率的な働き方の実現には、様々なアプローチがありますが、得手不得手のミスマッチによるロスを無くすためには、適材適所への人材配置はもちろんのこと、社内で適材がいないことが分かれば、社員教育を行ったり、新規採用を行ったりと、次善の策を打ち出さなければなりません。

タレントマネジメントを行うことで、社員の適性や能力の分布が可視化され、「働きやすく成果の出せる組織」をつくるためにどのような計画や施策が必要なのかということを、建設的に検討することが可能になります。

まとめ

「タレントマネジメント」という言葉だけを聞くと難しく感じてしまうこともあるかもしれませんが、近年はタレントマネジメントを低コストで簡単に行うことができるクラウドソフトも登場しています。

また、今すぐタレントマネジメントの専用ツールを導入しないまでも、SmartHRなどのクラウド人事労務サービスでは、人事データベースとしての役割を果たすものもありますので、そのようなサービスをご利用されている方は、必要に応じてカスタマイズし社員の特技や能力などを蓄積していくことでも、タレントマネジメントの第一歩を踏み出せるのではないでしょうか。

特定社会保険労務士 榊 裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
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