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週休3日制度のメリット・デメリットは?導入時の注意点を社労士が解説

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こんにちは。社会保険労務士の山口です。

「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針2022)」が経済財政諮問会議での答申を経て、閣議決定されました。このなかで注目したいのが、「選択的週休3日制度」の活用・導入促進です

製薬大手の塩野義製薬株式会社は、2022年4月から選択的週休3日制度を開始しました。また、株式会社日立製作所やパナソニック ホールディングス株式会社などが、2022年度中に選択的週休3日制度の導入を検討しています。

今回は、注目を集めている「週休3日制度」のメリット・デメリットと、導入時の注意点を解説していきます。

選択的週休3日制度とは?

骨太の方針は内閣が取り組む経済財政施策をまとめたもので、毎年発表されています。「選択的週休3日制度」の活用・導入促進は、骨太の方針2022で注目されている施策の1つとなります。

選択的週休3日制度については、子育て、介護等での活用、地方兼業での活用が考えられることから、好事例の収集・提供等により企業における導入を促進し、普及を図る。また、地域に貢献しながら多様な就労の機会を創る労働者協同組合についてNPO等からの円滑な移行等を図る。

「骨太の方針2022」における人事・労務担当者が注目するべきポイントは、こちらの記事で紹介していますので、合わせてご覧ください。

「骨太の方針2022」で人事・労務の仕事はどう変わる?注目点とい今後の対応【社労士が解説】

一方、労働者はこの制度をどのように捉えているのでしょうか? BIGLOBEが実施した「お金に関する意識調査」で、「週休3日制度を導入する企業のニュースが聞かれるが(企業によって制度は異なる)、労働時間と給与、どちらを優先したいか」を質問したところ、「給与は減るが、月の所定労働時間が減る方を優先したい」(17.7%)、「給与が変わらず、月の所定労働時間も変わらない方を優先したい」(54.2%)、「いずれも優先したくない」(28.1%)という結果に。週休3日制度なら、「給与も労働時間も変わらない」ことを優先したいという回答が最も多くなりました。

週休3日制、労働時間と給与どちらを優先したいか

(週休3日制、労働時間と給与どちらを優先したいか – ビッグローブ株式会社)

(出典)お金に関する意識調査 – ビッグローブ株式会社

導入イメージ

新しい働き方として注目される「週休3日制度」について、労務管理のポイントを見ていきましょう。もともと「週休3日制度」は、一般的に正社員の週所定休日を3日とする制度を指します。そして「選択的週休3日制度」とは、社員の希望により週休3日制度を適用することを言います。

週休3日制度には、主に下記の2つのパターンがあります。

(1)パターン1:週の所定労働時間は変更せず、1日の労働時間を増やす

週の所定労働時間はそのままで、1日の労働時間を増やすパターン(例:8時間×週5日⇒10時間×週4日)。1日の所定労働時間が法定労働時間を超える場合、1か月単位の変形労働時間制などを導入する必要があります。1日あたりの労働時間は増えますが、給与の総額は変わらないため、店舗や工場などで運用しやすい制度です。

(2)パターン2:1日あたりの労働時間は変更せず、休日を増やす

1日の労働時間はそのままで、休日を増やすパターンでは、1日分の就労が減るので、その分給与はカットされるのが一般的です(例:「基本給×4/5」など)。給与は減っても、育児や介護、通院などに時間を使いたい従業員に歓迎されやすい制度でしょう。


パターン1
パターン2
 特徴
店舗や工場などで運用しやすい
育児や介護、通院などに時間を使いたい従業員に歓迎されやすい
注意点
1か月単位の変形労働時間制などを導入する必要があり
1日分の就労の減少分の給与はカットするのが一般的

導入に当たって労務担当の注意点

(1)(2)ともにメリット・デメリットがあります。また、給与総額はそのままで、単純に労働時間を減らすということも考えられます。どのような制度が適切か判断するには、まず週休3日制度を「どのような目的で」「誰のために」導入するのかを考える必要があります。

導入目的

  • 育児や介護、通院の時間確保(離職を抑制)
  • 兼業・副業の推奨
  • ワークライフバランスの向上

導入対象者

  • 子育てや介護を担う世代
  • 資格取得やスキルの習得を目指す従業員
  • プライベートを充実させ柔軟な働き方を目指す若手社員

デメリットは?

総労働時間が同じで給与総額を維持する(1)のパターンの場合、1日の労働時間が長くなるため、身体的・精神的な負担が増すことが懸念されます。集中力が落ちて生産性が下がってしまうのでは本末転倒です。

労働日を減らす(2)のパターンでは、労働日削減分の給与をカットするのが一般的ですが、収入が減る分、社会保険料の額も減るため、将来受け取れる年金給付などが減少します。基本給と退職金が連動している会社であれば、退職金にも影響が出るでしょう。また、労働時間が減ると、社会保険・雇用保険の加入条件に抵触する可能性もあります。

ほかにも、社内のコミュニケーションが取りにくくなったり、顧客対応の機会が制限される可能性があるデメリットもあります。また、選択的週休3日制度の社員とそうでない社員との間で、仕事に対する不公平感や軋轢が生まれることも考えられます。

導入ステップ

このようなトラブルを予防するために、まずは導入の目的を明確にしましょう。おすすめは、従業員に対して、導入に関するアンケートを行い、意見を聴くことです。

そのうえで制度設計を行い、対象者、労働時間、賃金、福利厚生などの処遇を定めましょう。1日の労働時間が法定労働時間を超えるパターンでは、変形労働時間制の導入が必須です。また、兼業・副業の推進を導入目的とする場合は、兼業・副業に関する規程や申請書などの作成も重要です。

おわりに

一方的な導入は従業員の反発を招く可能性があります。労使でよく話し合い、導入の際は個別に雇用契約書を巻き直すことを忘れないでください。兼業・副業と同様、いきなり全面解禁ではなく、まずは対象者や利用目的を絞った「スモールスタート」で進める方が、運用しやすいのではと思います。

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