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労働災害(労災)に該当するケース、しないケース。一体どう違うの?

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こんにちは。特定社会保険労務士の篠原宏治です。

労働者災害補償保険(労災保険)は、労働者が業務上の災害(業務災害)または通勤中の災害(通勤災害)に起因して負傷、疾病、障害または死亡に至った場合に、被災労働者や遺族を保護するために必要な保険給付を行う公的保険制度の一つです。

業務や通勤に起因しない負傷や疾病等については、健康保険や厚生年金保険(以下、「社会保険」という)から保険給付が行われますが、労災保険と社会保険のどちらから給付を受けるべきか判断に悩むケースが少なくありません。

今回は、労働災害(労災)に該当するケースと該当しないケースについて解説します。

なお、「労災」は、本来の労働災害である「業務災害」を指して用いられる場合(狭義)と「業務災害と通勤災害の総称」として用いられる場合(広義)がありますが、この記事内では全て後者(広義)として使用しています。

「労働災害(労災)」の基準

「労働災害(労災)」は、業務や通勤に起因する負傷や疾病であり、“業務中”や“通勤中”に発症したかどうかというタイミングには関係ありません。

労働者が業務中に脳梗塞や心筋梗塞などを発症したとしても、飲酒・喫煙・運動不足などの労働者の生活習慣が発症の主たる要因と認められる場合には、労災には該当しません。

一方、労働者が休日に脳梗塞などを発症した場合であっても、「慢性的な長時間労働が発症の主たる要因」と認められる場合には、業務に起因する疾病であることから、労災に該当することになります。

「業務災害」とは?

「業務災害」は、事業主の支配・管理下で現に業務を行っている際に発生した災害を言い、休憩時間や始業終業時刻の前後などに食事などの私的な行為を行っている際に発生した災害は、業務災害になりません。

ただし、休憩時間中の災害であっても、手すりが壊れて階段から転落して負傷した場合など、事業場の施設や設備の管理不備によって生じた災害の場合には、休憩時間中等に発生した災害であっても業務災害として認められます。

一方、出張中など、事業主の直接の管理下から離れていたとしても、事業主の命令を受けて業務を行っている場合には事業主の支配下にあるものとして業務災害となります。

ただし、飲酒等の積極的な私的行為が認められる場合には業務災害と認められません。

「通勤災害」とは?

「通勤災害」は、自宅と会社の間の往復中に発生した災害を言います。持ち家などの一戸建ての場合には敷地を出たところから、マンションなどの集合住宅の場合には自分の部屋を出たところから、それぞれ通勤として取り扱われます。

「合理的な経路及び方法」であれば、会社に届け出ている通勤手段以外であっても通勤災害となります。

例えば、会社には電車通勤として報告している労働者が実際には「自転車通勤」をしていたとしても、著しく遠回りをしている等でなければ通勤災害として労災保険の対象になり得ます。

ただし、会社から服務規程違反や通勤手当の不正受給を問われる可能性はありますので注意してください。

管理職の方は、メンバーからの連絡によって、労災に該当するか否かを判断するケースもあり得ます。適切に判断できるように、このタイミングで業務に役立つ労務知識を現場管理職の方に共有してみてはいかがでしょうか。

以下の資料にその内容をまとめましたので、ぜひご活用ください。

社労士監修!中間管理職が知っておきたい労務知識

通勤の「逸脱」と「中断」

「逸脱」は、就業や通勤とは関係ない目的で合理的な経路からそれることを言い、「中断」は、通勤の経路上であっても通勤と関係のない行為を行うことを言います。

逸脱や中断があった場合は、原則としてその後の移動は全て通勤として取り扱われません。例えば、会社終わりに同僚と飲酒して帰る途中の災害は通勤災害には該当しません。

経路近くの公衆トイレを使用する場合やたばこやジュースの購入する場合などのささいな行為は、逸脱や中断とは取り扱われません。

また、日常生活上必要な行為として厚生労働省が定めている行為を最小限度の範囲で行う場合には、逸脱、中断後に合理的な経路に戻れば再び通勤として取り扱われます。

「日常生活上必要な行為」としては、日用品の購入、病院での受診、選挙権の行使、継続して行われている家族の介護などがあります。なお、これらの行為であっても、逸脱または中断している間に起きた災害は通勤災害とは認められません。通勤行為に戻ってからの災害が通勤災害として取り扱われることに注意してください。

「不正受給」や「労災隠し」を疑われるケースも

労災であるにもかかわらず社会保険から給付を受けた場合や、逆に労災ではないにもかかわらず労災保険から給付を受けた場合には、誤って支給された保険給付の返還手続きや再度の給付申請手続きなどで手間を要することになり、最悪の場合、「不正受給」や「労災隠し」なども疑われることもあり得ます。

労災に該当するかどうか迷うケースについては、労働基準監督署に相談するようにしましょう。

お役立ち資料

【2023年版】人事・労務向け 法改正&政策&ガイドラインまるごと解説

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