1. 人事・労務
  2. 労務管理

知っておきたい「過労死ライン」の基準や「過労死等防止対策推進法」の基礎知識

公開日
目次

近年では1年間に3万件ほどの自殺が発生し、そのうち10%弱の方が「勤務問題を原因の一つとするもの」と厚労省が発表しています。

さらに自殺とは別に「脳・心臓疾患を原因とする過労死」の件数は2012年には842件と認定されており、認定されているだけでも合計数千人とかなりの人数にのぼっています。

過労死が起きた場合、法律上は労災給付と使用者(事業主など)への損害賠償の2つの救済方法があります。これらの救済が可能かどうかは、厚労省が決める労災給付の指針や、損害賠償請求が可能な条件を満たす必要があります。

逆に企業にとってはこれらの指針を知らないと最悪の場合、過労死を発生させ、損害賠償請求をされたり、信用の低下など企業にとって大きなリスクとなります。

改めて過労死についての基礎知識を紹介しますので参考にしてみてください。

厚労省が公表してる労災給付の指針

どのような場合に、過労死として労災給付が受けられるかは、先ほども書いたように厚労省が指針を公表しています。

大きくいうと、労務災害である認められること、すなわち、①対象疾病の発症、②業務起因性の2つの判断基準がポイントとなります。

対象疾病については、厚労省が、脳・心臓疾患(過労死)、精神疾患(過労自殺)それぞれについて労災認定の対象となる対象疾病を定めており、これらを発症したと認められることが要件となります。

また、業務起因性は、短期、中期、長期の期間内において、過重な業務や、どの程度の労働時間があったかが判断の基準となります。

例えば、疾患の発症前1ヶ月間において、おおむね100時間を超えるような時間外労働を行わせた場合や、発症前2ヶ月ないし6ヶ月間にわたり、1ヶ月あたりおおむね80時間を超えるような時間外労働をさせた場合には、業務と発症との関連性が強いと考えられています。

したがって、一般には、月80時間程度が過労死ラインといわれています。

また、時間外労働の長短以外にも、①不規則勤務、②長時間の拘束勤務、③泊りがけの出張、④深夜勤務、⑤騒音・時差といった職場環境、⑥精神的緊張を伴う、といった要素がある場合には、1ヶ月平均80時間以内の残業であっても過労死として認定される方向に働きます。

損害賠償の判断ポイント

民事の不法行為を使用者に問う場合には、因果関係、予見可能性、結果回避可能性が判断のポイントとなります。

①会社の安全配慮義務違反と過労死や過労自殺との間に相当因果関係が存在すること、②健康診断の実施等も含めて、労働者に対してどのような配慮、予見が可能であったか、③労働時間の短縮や業務内容の是正、担当者の変更や適切な人員配置といった措置を講じたか否か、を具体的にみて判断されることになります。

過労死等防止対策推進法の内容とは

一向に減らない過労死問題を受けて制定された過労死等防止対策推進法では、国・地方公共団体が過労死等防止のための対策を推進すること、企業がその活動に協力するよう努めることなどが法律で規定されました。ただし、企業に対する罰則規定はありません。

もっとも、いわゆる36協定で定めた時間を超過して働かせた場合、労働基準法第32条(労働時間)または労働基準法第35条(休日)違反となり、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。

過労死が起こった当該企業に対するイメージは大きく毀損され、信用低下となります。事業の継続性にも大きな悪影響を与えることとなります。

企業側としても適切な人員配置と労務管理が強く求められます。

人気の記事