社労士が解説! HRニュース 2021年7月振り返りと8月のポイント(雇用継続給付の受給手続簡素化、有給取得奨励など)


人事労務担当者の皆さま、お疲れ様です。
年度更新・算定基礎届の対応を終え、ようやくひと息つける時期になったのではないかと思います。

とはいえ、最低賃金の改定動向や雇用調整助成金に関する最新情報の把握等、人事労務部門の担当者としてキャッチアップしておきたい情報があります。

また、コロナ禍の続く中、従業員が安全に猛暑を乗り越えられるように配慮をすることも大切です。

この時期だからこそ、対応や検討しておきたいことを今回のニュースレターに整理してみました。

夏のビジネス街の写真

2021年7月のトピックの振り返り

(1)年度更新・算定基礎届

労働保険の年度更新・社会保険の算定基礎届については、対応がひと段落したと思います。このタイミングで、対応項目に抜け漏れが無いかや、後処理について確認をしてみましょう。

まず、労働保険の年度更新ですが、労働保険料の納付まで完了をしておりますでしょうか?

金融機関等の窓口を経由して紙で年度更新を行う場合には、その場で労働保険料の納付まで一気通貫で完了します。

この点、年度更新を電子申請で行っている場合は、労働保険料の納付手続は別途必要です。電子申請の後、Pay-easy(ペイジー)の納付番号が発行されるので、ネットバンキングやATMで振込をします。あるいは、紙の納付書を作成して金融機関に持ち込む形でも納付対応は可能です。

いずれにしても、年度更新を電子申請で対応する際には、保険料の納付を失念しないようご注意ください。

算定基礎届については、法定の期限である7月12日までに提出が済んでいれば、日本年金機構から順次、標準報酬月額の「決定通知書」が届き始めるタイミングです。

決定通知書を確認して、算定基礎届の対象者に漏れがなかったか、標準報酬月額が想定と異なる等級になっていないか等を確認しましょう。万一、漏れや誤りがあった場合には、訂正の手続を取るようにしてください。

なお、訂正手続は電子申請ではできません。紙の算定基礎届に二段書き(正しい事項を黒字で記入、誤っていた(取消す)事項を赤字で記入)して郵送等で申請する形になります。

(2)最低賃金の改定方針

7月14日、厚生労働省の諮問機関「中央最低賃金審議会」は、2021年度の地域別最低賃金(時給)の引き上げ幅について全都道府県につき、28円を目安とすることを決めました。

最低賃金を決める権限を持っているのは各都道府県の労働局長ですが、この「中央最低賃金審議会」の決定は、実務上大きな影響があります。まだまだコロナ禍の影響が続く中、今年度は各都道府県で最低賃金が大幅に引き上げられることは間違いないでしょう。

例えば、東京都の場合は、現在の1,013円に対し、28円を加算して1,041円となる見通しです。また、一部の都道府県でずれる場合はありますが、最低賃金のアップが適用されるのは通常10月1日からとなっています。

自社の賃金の支払い状況を確認し、引き上げ後の最低賃金に抵触する恐れのある従業員がいないかを今のうちからチェックをしておきましょう。アルバイト等の時給者はもちろんですが、月給者にも最低賃金は適用されます。

通勤手当、家族手当、各種割増賃金など法令で定められた手当を除いた月給額を月平均所定労働時間数で割り、月給額を時給換算します。この金額が最低賃金を下回らないように注意が必要です。

月給者の最低賃金のチェックでとくに気を付けなければならないのは、基本給に固定残業代を含んでいる場合です。

固定残業代に相当する部分の金額は、最低賃金から除かなければなりません。例えば、「基本給300,000円(ただし固定残業代50,000円を含む」という雇用契約の場合であれば、250,000円が最低賃金チェックを行う場合の基本給です。

「基本給300,000円(ただし固定残業代20時間分を含む)」という雇用契約の場合も、20時間分の固定残業代が何円に相当するのか計算した上で、その金額を除いた基本給で最低賃金チェックを行います。

参考:
令和3年度地域別最低賃金額改定の目安について

(3)雇用調整助成金

7月21日、政府は雇用調整助成金のコロナ特例が12月末まで延長する方針を打ち出しました。

もともとは現在の特例制度が9月末までの期限とされていました。しかし、最低賃金の引き上げによる企業の負担増やコロナ禍が落ち着かない現状に鑑み、年内いっぱいまで延長するということです。

雇用調整助成金について補足をしておきますと、雇用調整助成金の支給を受けている期間中に従業員を昇給させることが禁止されているわけではありません。

10月1日以降については雇用調整助成金を受給中の従業員についても、最低賃金を下回ることとなった人は、昇給をさせた上で昇給反映後の休業手当にもとづき、雇用調整助成金を申請することは可能です。

ただし、これを拡大解釈した理由による昇給は雇用調整助成金の不正受給とみなされる恐れがあります。例えば、正当な理由が無いにもかかわらず、もっぱら雇用調整助成金を多くもらいたいという理由で昇給をさせることなどです。そのような理由による申請は絶対に行わないようにしましょう。

参考:
雇用調整助成金の特例措置等を延長します|厚生労働省

2021年8月のトピック

(1)雇用継続給付の受給手続簡素化

雇用継続給付とは、育児休業や介護休業で会社から賃金が支給されない場合や定年退職者が再雇用等で一定割合以上賃金が低下した場合に雇用保険から支給される金銭です。

従来は、「育児休業給付金」「介護休業給付金」、「高年齢雇用継続給付金」の初回の支給申請にあたり、申請書の記載内容を確認するため「払渡希望金融機関確認書類(通帳やキャッシュカードの写し等)」の提出が必要でした。

また、「高年齢雇用継続給付金」の支給申請に当たっては、被保険者の年齢を確認する書類として「運転免許証や住民票の写し等(以下、添付書類)」も提出が必要とされていました。

電子申請の申請時には、これらの書類をPDFで添付しなければなりませんでした。

今回の運用変更により、8月1日より通帳等の写しの添付が原則不要になりました。そして、ハローワークにマイナンバーを届出済の場合には、高年齢雇用継続給付金の支給申請時、運転免許証等の添付も不要となります。

この運用ルールの変更により、各種雇用継続給付の申請手続において、会社側にとっても本人側にとっても工数削減を期待できます。

参考:
雇用保険制度 |厚生労働省

「令和3年8月1日から、育児休業給付金、介護休業給付金、高年齢雇用継続給付金の手続の際、通帳等の写しを原則不要にします。」(PDF)

(2)有給取得奨励

皆さまの会社では、従業員の年次有給休暇の取得状況はいかがでしょうか?

2019年4月より、年次有給休暇の年5日の取得が義務化されています。法律上で義務付けられていなかったとしても、年次有給休暇を従業員が安定的に取得できることは、従業員満足度の維持向上やワークライフバランスの観点からも重要なことです。

8月はお盆などもあり、業種や職種によるかもしれませんが、比較的休暇が取得しやすい時期ではないでしょうか。

人事・労務担当者は、従業員の年次有給休暇の取得状況を確認しましょう。そして、取得が進んでいない従業員には、夏季休暇とつなげた大型連休として年次有給休暇の積極的な取得を促してみてください。

なお、年次有給休暇は本人の希望にもとづいた取得が原則ですが、法律上の取得義務の5日に達していない従業員に対しては、会社は業務命令として年次有給休暇を取得させることが可能です。

(3)オフィスや在宅勤務の冷房対応

8月は暑さがピークを迎える時期です。

オフィスでは当然冷房を入れることになりますが、逆に冷房の効きすぎにより体調を崩すことにも注意を払いましょう。

空調自体を一人ひとりに合わせることはできませんが、可能な対策を取るようにしたいものです。

すでに多くの会社で対応済だと思いますので、あらためて書くことではないかもしれませんが、対策をご紹介します。

例えば、勤務時の服装を緩和して、暑すぎる人についてはネクタイや上着を脱いでのクールビズを推奨するなどにより対策できます。また、寒すぎる人については、ブランケットの持参などを認めるといったことが対策の1つになるでしょう。

業務内容として可能であれば、フリーアドレス制を導入して、従業員が自分に合った温度の席を選び、仕事をできる環境づくりなども考えられます。

(4)テレワークの光熱費

テレワーク制度のある会社では、自宅で各自が冷房の温度を調整できるので、健康管理に問題はないと考えるかもしれません。

とはいえ、在宅勤務で冷房を付け続けると電気代も高額になります。費用負担を軽減ために冷房の温度を高めに設定したり、冷房を使わない従業員も出てくることにも考慮する必要があります。

テレワーク手当が無い場合やテレワーク手当の金額が少額の場合には、電気代に見合うように臨時テレワーク手当を支給したり、テレワーク手当を一時的に増額したりすることも考えられるのではないでしょうか。

人事労務ホットな小話

冒頭で申しあげたように、8月は人事労務担当者にとって比較的落ち着いた時期になると思います。

今年は、この時期に対応が必要な大きな法改正対応等もありません。人事労務担当者は、自分自身も夏季休暇を取得したり、年次有給休暇を消化したりして、しっかりとリフレッシュをしていただきたいと思います。

その上で、比較的ゆとりのある時期だからこそ、今回のニュースレターで述べた「冷房」をはじめ、職場環境の改善や従業員のテレワーク環境のチェックなどに目を向けてみても良いかもしれません。

予算の範囲にもよりますが、ウォーターサーバーや冷蔵庫の設置、しっかり食べて夏バテを防止できるようOKANやOFFICE DE YASAIのような栄養のある社食やサイドメニューの福利厚生サービスを活用するなど、さまざまな角度から従業員の健康管理に資する福利厚生施策を検討できると思います。

まとめ

危険な猛暑日はまだまだ続きそうです。オフィス勤務にせよ、テレワークにせよ、従業員の皆さまの体調管理には会社としても気を配り、会社全体として健康にこの夏を乗り切りたいですね。

 

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  • 介護休暇の時間単位取得義務化など法案改正情報の解説
  • 新型コロナウイルスに関連した労災給付についての解説
  • 在宅勤務者への安全配慮義務についての解説

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
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