社労士が解説! 今月のHRニュース 2021年6月編(東京オリンピックへの対応、ワクチン職域摂取、熱中症への配慮など)


人事労務担当者の皆様、年度更新、算定基礎届の対応お疲れ様です。

繁忙期の真っただ中かと思いますが、7月は東京オリンピック開催が控えています。それに伴い、企業としてテレワークへの対応や新型コロナウイルスワクチンの職域接種が本格化 しつつあり、コロナウイルス関連の大きな動きに対して対応を考え始めなければなりません。

人事労務担当者にとっては忙しい夏になりそうです。

2021年6月のトピックの振り返り

(1) 年度更新・算定基礎届

皆様の会社では、年度更新・算定基礎届の対応状況はいかがでしょうか?

どちらも、7月12日(月)までが期限となっています。特に、年度更新は、保険料の納付(3分割の場合は1回目の納付)まで含めての期限なので、遅延の無いように対応を進めてください。

また、1点追加で情報提供となりますが、昨年度までは算定基礎届に添付して提出する必要があった「総括表」が、今年度から廃止となっています。

日本年金機構から茶封筒で郵送されてきた資料の中に「総括表」が入っておらず「あれっ?」と思った人事労務担当者の方もいらっしゃるかもしれません。こちらは、提出自体が不要になったため入っていないということですので、ご安心ください。

(2) キャリアアップ助成金の賃金アップ要件の審査厳格化

キャリアアップ助成金は、有期契約で採用した従業員を6ヶ月以上雇用し、正社員に登用し、さらに6ヶ月継続勤務した場合に支給されます。多くの会社が活用している雇用関係の代表的な助成金です。

昨年度までは、正社員登用前後6ヶ月の固定的賃金の総額を比較して5%以上昇給していなければならないところ、今年度は、3%以上の昇給でいいことに緩和されていました(ただし、賞与を含められなくなったことに留意が必要です)。

ところが、6月7日付で更新された「キャリアアップ助成金Q&A」で、3%昇給の「中身」が従来以上に厳しく審査されることが明らかになりました。

具体的には、正社員登用前後6ヶ月の固定的賃金が、総額で3%アップしていたとしても、単月で見た場合、転換後の固定的賃金が転換前より下がっている月がある場合には、助成金が不支給になる場合があるということです。

上記Q&Aの該当箇所(P22下部)を抜粋すると、次のように記載があります。

なお、転換前6ヶ月間の賃金と転換後6ヶ月間の賃金を比較して3%以上の賃金増額達成していたとしても、転換前6か月間で最も高い月の「基本給+諸手当」と転換後6ヶ月間で最も低い月の「基本給+諸手当」を比較して低下しているまたは増加していない場合は支給対象にならない場合があります。また、3%以上の賃金増額については転換前後の「基本給+諸手当」の賃金総額を比較することになりますが、転換前の「基本給」「諸手当」を引き下げる場合は、合理的な理由である必要があります。

正社員登用後に成果主義的な賃金体系になる場合や、キャリアアップ助成金の審査対象期間中に人事考課による降格が行われる場合などは要注意です。

どのような場合が「合理的な理由」になるかは労働局の審査に委ねられますので、今後のキャリアアップ助成金の審査における争点の1つになりそうです。

(3) 雇用調整助成金の不正受給による逮捕

雇用調整助成金の不正受給でついに逮捕者が出ました。

参考:社会保険労務士らと共謀、コロナ助成金詐欺未遂の男逮捕 容疑で岡山中央署(山陽新聞デジタル) – Yahoo!ニュース 

雇用調整助成金は、コロナ禍から労働者の雇用を守るため、大幅に申請書類が簡素化され、審査も迅速に行われています。

一方で、審査が緩められることによる不正受給について懸念がされていました。残念ながら、そのような事案が発生しました。

今回の逮捕の対象となった事案では、企業経営者と社会保険労務士が共謀し、実際には休業をしていないにも関わらず、休業をしたものとして出勤簿を偽造し、雇用調整助成金を詐取しようとしたということです。

逮捕にまで至っていない案件や、発覚をしていない案件を含めると、氷山の一角なのかもしれません。しかし、実際に逮捕にまで至る事件が発生したことで、改めて、助成金の不正受給は許さないという行政の強い姿勢が示されたと思います。

助成金の不正受給は犯罪であるということを改めて認識し、事件化すればこのように大きな社会的制裁を受けることも踏まえ、決して不正受給を行わないようにしましょう。

2021年7月のトピック

(1) 東京オリンピックへの対応

東京オリンピックは7月23日に開幕を迎えようとしています。

首都圏の会社は、東京オリンピック開催期間中の自社の対応を検討しなければなりません。

公共交通機関などにおいて混雑を避け、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を安全安心な大会とすることを目的に、7月19日から9月5日までテレワークの推奨を呼びかける、テレワーク・デイズ2021を実施すると政府が発表しています。

参考:テレワーク・デイズ公式サイト(総務省)

東京オリンピック開催期間中は、海外からの来日者含め、多くの人の動きがあります。従業員の健康と安全を確保するという点からも、可能な限りテレワークを活用したいものです。

また、プライベートな時間についても、一律に外出禁止にするなどの強制力を持たせることはできません。とはいえ、東京オリンピック開催期間中の行動基準について、ガイドラインを定めて従業員に周知をすることが望ましいでしょう。

また、東京オリンピック開催に伴い、7月・8月の祝祭日は例年とカレンダーが変わりますので、この点についてもご注意ください。

首相官邸HPより抜粋

(2) 新型コロナワクチンの職域接種対応

新型コロナワクチンの職域接種は6月8日より受付を開始し、実際の接種は6月21日からスタートしています。

職域接種とは、ワクチン接種に関する地域の負担を軽減し、接種の加速化を図っていくため、企業や大学等において、職域(学校等を含む)単位でワクチンの接種を行うものです。

参考:新型コロナワクチン職域接種の開始について(厚生労働省)

職域接種は従業員1,000人以上の企業が対象とされていますので、中小企業では関係ないという印象があるかもしれません。

しかし、大企業がグループ会社や取引先にも声をかけて職域接種を行うケースも増加するかもしれません。複数社が連携して1,000人以上の規模になれば職域接種の実施が可能になるからです。

それに伴い、経営者や人事労務担当者は次のようなことを検討する必要があります。

  • 自社が職域摂取に参加するかどうかの検討
  • 参加の場合、従業員への声掛け方法
  • 摂取時間を労働時間として取り扱うか
  • 接種後の特別休暇付与の有無

上記のように、検討すべき項目は多岐にわたります。

その他にも、自社が大企業の立場の場合の事例もあります。ソフトバンクグループが福岡ソフトバンクホークスファンクラブ会員も職域接種の対象に加えた上、2回目接種まで終えた人に観戦チケットを半額で提供することを発表しました。この事例のように企業独自の社会貢献を検討する余地もあるでしょう。

なお、職域接種に参加をしない場合であっても、従業員は地方自治体の実施するワクチン接種の対象になります。ワクチンを接種する際に特別休暇を与えるのかなど、全ての会社が、新型コロナワクチン接種に対する労務管理上の対応を検討する必要があります。

ちなみに、実例として、株式会社SmartHRでは以下の記事のように対応しているようです。

参考:新型コロナワクチン接種時の対応について|SmartHRオープン社内報

(3) 熱中症への配慮

新型コロナワクチンを接種しなかった人はもちろんですが、接種した人についても感染予防が確実でないことや他者への感染防止のため、厚生労働省は引き続きマスクの着用を求めています。

参考:厚生労働省 新型コロナワクチン Q&A「ワクチンを接種した後も、マスクは必要ですか。」

ですから、今年も昨年に引き続き「マスク着用の夏」になりそうです。

これから本格的な夏を迎えるにあたり、職場においても、熱中症の対策を行っていかなければなりません。

屋外作業や倉庫作業など、気候や気温の影響を受けやすい業務の場合は特に注意が必要です。こまめに休憩を促し、単独作業の場合にはマスクを外すことを認めるなど、職場ごとの環境に合わせた配慮が大切です。

もちろん、単独作業でマスクを外す場合であっても、工具を複数人で使い回すなら都度消毒をルール化したり、作業者が入れ替わるときには換気したりするなど、マスク以外の感染対策を怠らないようにしてください。

オフィス業務においても、たとえば普段は休憩時間以外飲食を認めていないという事業所であっても、水分補給は自由に認めるようにするなど、一定の配慮は必要となるでしょう。

人事労務ホットな小話

人事労務担当者は、この夏、東京オリンピック開催期間中の勤務制度への対応、新型コロナワクチン接種への対応など、絶対的な正解が無い課題に対して向き合い、会社としての対応を決めていかなければなりません。

従業員が納得・安心できる対応できるかどうかが、今後の労使の信頼関係やモチベーション、採用活動などに大きく影響してくることは間違いないでしょう。

人事労務担当者が経営陣と従業員の間に入って、調整や折衝を行うシーンも発生するかもしれません。ハードな仕事になりますが、信念を持って取り組んでみてください。

ただし、人事労務担当者自身が仕事を無理に抱え込んみ、心身にストレスを溜めることは望ましくありません。必要に応じ、弁護士や社会保険労務士等の社外の専門家のアドバイスを活用するなど、柔軟な対応を心がけてください。

まとめ

年度更新、算定基礎届により、ただでさえ繁忙期の中、東京オリンピックや新型コロナウイルスワクチン接種への対応等も重なり、人事労務担当者にとっては、本当に大変な夏になりそうです。

無理をせず、健康に気を付けて、この夏の繁忙期を乗り越えてください。

 

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  • 介護休暇の時間単位取得義務化など法案改正情報の解説
  • 新型コロナウイルスに関連した労災給付についての解説
  • 在宅勤務者への安全配慮義務についての解説

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
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