社労士が解説! 今月のHRニュース 2020年6月編(雇用調整助成金/社会保険算定届/ロクイチ報告など)


こんにちは。特定社会保険労務士の榊です。

緊急事態宣言が解除され、経済活動が徐々に戻りつつあります。新型コロナウイルス(COVID-19)は、爆発的な感染再拡大こそしていないものの、明確に終息に向かっているわけでもないので、「新型コロナウイルスと共存していく」ことが目下の現実的な選択肢なのかもしれません。

今月も、新型コロナウイルス関係の最新トピックと、人事労務の時事トピック、そして、夏が近づき気温も高くなってきましたので、この季節に職場での労災防止や快適な職場環境を維持するために必要なことにも触れていきたいと思います。

2020年6月のトピックの振り返り

(1)雇用調整助成金の支給額上限が1日あたり15,000円/人に

6月12日(金)に令和2年度の第2次補正予算が可決され、雇用調整助成金の支給額上限が、1日あたり15,000円/人に引き上げられました。

多くの企業が、従業員の生活を守るため、法定の下限である平均賃金の60%を上回る休業手当を支払い、100%の給与補償を行う企業も珍しくない中、従来、雇用調整助成金の1日あたりの上限は、8,330円/人にとどまっており、その差額は、企業の「持ち出し」になっていました。

1日あたりの上限が15,000円に引き上げられ、また、解雇を行わない場合の助成率が業種を問わず10/10(大企業は3/4)に引き上げられたことで、企業は、支払った休業手当の大部分を国からの雇用調整助成金でカバーできるようになりました。

詳細は以下の記事をご参照ください。

【6/22更新版】新型コロナ 特例雇用調整助成金についてQ&Aで社労士が解説

(2)直接給付制度も正式決定

先月のトピックでも触れていた、勤務先から休業手当が支給されない従業員に対する直接給付制度ですが、こちらも、第2次補正予算で正式に導入が決定されました。

(1)で触れたように、雇用調整助成金が大幅に拡充されているものの、雇用調整助成金は、企業から従業員へ休業手当の支払いを先に行っていることが条件なので、足元の資金繰りが厳しい企業は利用することができない“落とし穴”がありました。

その結果、最終的に不利益を被るのは、休業手当の支給を受けられず、生活の糧を失う従業員ですので、そのような従業員を救済する仕組みが、この直接払い制度です。

制度概要を確認すると、勤務先から休業手当の支払が行われなかった中小企業の従業員に対し、休業前賃金の80%(ただし上限は33万円)を、国が直接従業員に支払うものになります。

国は、遅くとも7月末までに直接払い制度による給付をスタートさせることを目指しています。引き続き最新情報をチェックしましょう。

出典:厚生労働省「雇用調整助成金の拡充と新たな個人給付制度の創設について

(3)雇用調整助成金のオンライン申請は再度トラブル

5月20日から稼働を予定していた雇用調整助成金のオンライン申請ですが、システムトラブルにより稼働直後にシステム停止となりました。

その後、6月5日に再稼働をしたものの、同日中にシステムトラブルが再発して、6月18日現在もシステムが停止している状況です。

いつからオンライン申請が再開するのか、再開した場合に今度こそ本当に大丈夫なのかは未知数ですので、オンライン申請を待たず、申請書類が整い次第、郵送で申請を済ませるほうが現状においては無難かもしれません。

(4)労働保険の年度更新・新年度の住民税

先月のトピックで取り上げた、労働保険の年度更新の緑色の封筒と、新年度の住民税の特別徴収の税額の通知書ですが、みなさまのお手元には既に届いておりますでしょうか?

6月末や7月の上旬になっても届いていなければ、事務処理のエラーや、郵送事故などが想定されますので、万が一届いていない場合は状況確認をしてください。

確認先は、労働保険の年度更新に関しては各都道府県の労働局、住民税の通知書に関しては各従業員の居住する市区町村の役所となります。

チェックしておきたい主なHRトピック

(1)社会保険の算定基礎届の提出

6月中旬から下旬にかけ、社会保険の算定基礎届が入った茶色の封筒が、日本年金機構から届きます。関東ITソフトウェア健保など健康保険組合に加入している会社の場合は、健康保険組合からも算定基礎届の封筒が届きます。

算定基礎届とは、4月~6月に支払われた給与額を年金事務所(および健康保険組合)に報告し、その年の9月分から1年間の社会保険料(健康保険料および厚生年金保険料)を決定するための手続きです。

年の途中で大幅に固定給の増減があるなどで、月額変更届による随時改定に該当しない限り、残業代や歩合給などで総支給額に変更があったとしても、今回の算定基礎届により決定された社会保険料を1年間定額で控除し続けることになります。

算定基礎届は、7月1日から7月10日の間に所轄の年金事務所または事務センターへ提出する必要があります。算定基礎届に関しては、新型コロナウイルスの影響による提出期限の延長はありませんので、ご注意ください

(2)高年齢者・障害者雇用状況報告書の提出

従業員数が31人以上の事業主は「高年齢者雇用状況報告書」を、従業員数45.5人以上の事業主は「障害者雇用状況報告書」を、それぞれ所轄のハローワークへ提出する必要があります。高年齢者・障害者雇用状況報告は、6月1日時点での情報を報告するため通称「ロクイチ報告」とも呼ばれます。

これらの報告書は、毎年6月1日現在の高年齢者、障害者の雇用状況を国に報告するための内容となっています。

対象となる事業主には、6月上旬に所轄のハローワークから申請用紙が郵送されることとなっていますが、今年度に関しては、新型コロナウイルスの影響もあり、一部地域で郵送に遅れが出ているようです。

提出期限は、例年は7月15日ですが、今年度に関しては、8月31日までに延長されています。

なお、「高年齢者雇用状況報告書」「障害者雇用状況報告書」は、電子申請による提出も可能です。

以下の記事では、記入方法を解説しております。

ロクイチ報告における「高年齢者・障害者雇用状況報告書」の書き方を社労士が解説

(3)テレワークの労災防止

新型コロナウイルスの影響で、引き続きテレワークを続けている方も多いと思いますが、これからの時期、暑さが増してきますので、健康管理には充分に気を付けてください。

オフィスにいるときには、全館で空調が効いてきたと思いますが、テレワークでは、エアコンの温度設定などを自分の最適な温度に設定できるとはいえ、全面的に自己管理が必要となります。

冷やし過ぎたり、逆に電気代を気にして、冷房を我慢するということが無いように気を付けてください。パソコンは熱を発しますので、パソコンを使って事務作業を行っているときには、とくに注意しましょう。

既にテレワーク手当を導入している会社も少なくないと思いますが、春先とは違い、これからはエアコンが必要な季節となり、テレワークによる従業員の光熱費の負担も増えてきます。テレワークに対して、まだ何も手当を支払っていない会社は、少なくとも光熱費相当額だけでも、手当を検討してみてはいかがでしょうか。

加えて、今後もテレワークを続けていく予定の場合は、従業員がダイニングやリビングのテーブルで、不自然な姿勢のままパソコン作業を長期間続けていると、首や肩に負担がかかり、痛みの原因となったりします。テレワーク用にデスクやチェアの購入費を補助するという福利厚生も、積極的に検討をしていくのが望ましいでしょう。

(4)テレワーク以外の労災防止

先ほどはテレワークでの労災防止について触れましたが、今年の夏は、様々な職種で労災に対する特別の注意が必要です。

と言いますのも、今年の夏は、マスクを着用して仕事をすることになると思いますので、高温多湿の中でマスクを着用していると、熱中症のリスクが高まります。小まめに休憩を取ったり、水分補給をしたりするなど、熱中症の予防に留意してください。

会社としても、休憩を認める回数を増やす、普段はペットボトルや水筒の持ち込みを禁止している職場でも一時的に認めるようにするなどの配慮が必要です。

人事労務ホットな小話

先ほど述べましたよう、これからの季節は高温多湿となってきますが、withコロナ時代、アフターコロナ時代の働き方においては、テレワークにせよ、テレワーク以外にせよ、労災の防止には、細心の注意が必要となってきます。

労使で力を合わせて、新型コロナウイルスに負けない快適な職場づくりを目指し、この夏を無事に乗り越えてください。共に知恵を絞ってコロナを乗り越えた経験は、会社を強くし、また、労使の信頼関係をより強固なものとするでしょう。

おわりに

ようやく国の雇用調整助成金も、申請書類の大幅な簡素化や上限額の引き上げなど、使いやすい制度として整備されてきました。新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大も、何とか抑えられています。

個々の会社としても、急場をしのぐ時期は過ぎ、アフターコロナ時代、withコロナ時代の新しい働き方の実現に向け、体制を整備していく時期に来ています。強い会社、生き残る会社となるために、1社1社がそれぞれ、自社ができることを考え、取り組んでいかなければならないと思います。

特定社会保険労務士 榊 裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
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