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【社労士が解説】自転車通勤の労務管理と導入のポイント

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こんにちは。社会保険労務士の山口です。

コロナ禍が長期化する中、感染リスクの低い移動手段の1つとして注目を集めているのが「自転車通勤」です。国土交通省も、企業における自転車通勤推進のための優良企業認定制度を創設するなど、自転車通勤の導入を奨励しています。

健康増進効果も期待できる自転車通勤には考慮すべき点も多くあり、例えば事故のリスクや駐輪場の確保などです。そこで、この記事では自転車通勤の労務管理について考慮すべきポイントや対応方法についてまとめました。

自転車通勤の制度導入で考慮すべきポイント

警視庁の発表によると、2021年に発生した東京都内の自転車関与事故の件数は13,332件。交通事故全体に占める割合を示す「自転車関与率」は、43.6%です。

「業務・通勤・通学」目的での事故は 3,717件で、前年より416件増加しています。ある程度、事故のリスクを想定したうえで制度を設計するのが、自転車通勤制度導入の実務ポイントと言えます。

自転車通勤制度を実施する際の対応

まずは、自動車通勤と同じように「自転車通勤規程」を作成し、「利用目的は通勤に限ること(業務上利用をしないこと)」をしっかり明記しましょう。

民法に定める使用者責任が認められた場合には、従業員と連帯して損害賠償義務を負う可能性があります。自動車と同様、任意保険の加入義務及び保険金額について規定することも重要なポイントです。

  1. 許可基準(1年更新制とし、都度適性を確認)
  2. 任意保険の加入義務及び保険金額(最低1億円はつけたい)
  3. 遵守事項(自転車の整備義務、ヘルメット着用、飲酒運転やスマホ運転の禁止)
  4. 駐輪場所(会社で確保できない場合は、どこに停めるか)
  5. 事故が起きた際の対応(救助方法、連絡先など)
  6. その他(通勤ルートの確認、通勤手当との調整など)

策定の際は各都道府県で定めている、自転車に関する条例を確認するようにしましょう。

東京都の条例において、一般事業者は、自転車通勤をする従業者向けの駐輪場を確保することや駐輪場所の確認が義務付けられています。

また愛知県は、自転車通勤者がいる企業に対し、損害賠償責任保険に加入しているか確認する義務を課しています。

確認できない場合、従業員に対して、加入可能な保険の情報提供をしなければなりません。自転車通勤においては、道路交通法のみならず、自治体の条例が関わってきますので注意が必要です

従業員から自転車通勤の申し出があった場合の対応

従業員から自転車通勤の申し出があった場合は、申請書を提出させ、規程に則ってチェックして許可を出すようにしましょう。

特にチェックしたいのは「通勤にかかる距離と時間」です。時間が過度にかかれば疲弊し、業務に支障をきたす従業員もいるかもしれません。そうした場合、片道10キロ~15キロを目安とするのが良いようです。それに加えて、適切な損害賠償責任保険を案内する、点検整備や交通ルールの講習を行うことも検討しましょう。

また、対応の際に見落としがちなのが通勤手当との調整です。自転車通勤でも通常の公共交通機関利用と同じように通勤手当を支給するかどうかは会社の定めによります。自社の通勤手当に関する規定がどうなっているかを確認しておきましょう。

まとめ

健康面などのメリットが大きい自転車通勤は、事故のリスクが高いのも事実です。自転車は、道路交通法上は「軽車両」に分類されます。違反すれば罰則が科せられる可能性もあります。「たかが自転車だから……」と軽く考えず、自動車通勤と同様、しっかりと管理するようにしましょう。

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