これからの時代の、企業と人の関係性。SmartHRを牽引してきた二人が、今考えること【WORK and FES 2021】

2022.02.17 ライター: SmartHR Mag. 編集部

「Relationship(関係性)」をテーマに、12月11日に開催されたオンラインフェス『WORK and FES 2021』。多数のセッションを通して、“働く”を取り巻くさまざまな関係性を見直しました。

この記事では、SmartHRの経営メンバーである宮田昇始と芹澤雅人が登場したセッション、『これからの時代の、企業と人の関係性。SmartHRを牽引してきた2人が、今考えること』で語られた内容をご紹介。

2人が考える「これからの企業と従業員の関係性」「よい組織のつくり方」、そして「経営者の役割」とは?

■宮田 昇始 株式会社SmartHR 代表取締役 CEO

2013年に株式会社KUFU(現SmartHR)を創業。2015年に自身の闘病経験をもとにしたクラウド人事労務ソフト「SmartHR」を公開。登録企業数は公開後約5年で40,000社を突破。2021年にはシリーズDラウンドで海外投資家などから156億円の資金調達。

■芹澤 雅人 株式会社SmartHR 取締役・CTO

2011年よりナビゲーションサービスを運営する会社にて、経路探索や交通費精算、動態管理といったサービスを支える大規模な WebAPI の設計と開発に従事。2016年2月にSmartHR入社、開発業務のほか VPoE としてエンジニアチームのビルディングとマネジメントを行う。2020年11月現職に就任し、現在はプロダクト開発・運用に関わるチーム全体の最適化やビジネスサイドとの要望調整を担う。

【モデレーター】

■大室 正志さん 大室産業医事務所 代表

産業医科大学医学部医学科卒業。専門は産業医学実務。産業医実務研修センター、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社統括産業医、医療法人社団同友会産業医室を経て現職。メンタルヘルス対策、感染症対策など企業における健康リスク低減に従事。現在約30社の産業医業務に従事 。医療法人同友会顧問。社会医学系専門医・指導医。著書『産業医が見る過労自殺企業の内側』(集英社新書)。

(※プロフィールや記事内容は2021年12月時点のものです)

大室さん・芹澤さん・宮田さん

CEOは役割にすぎない

宮田:SmartHRは今から9年前に友人と一緒につくった会社になります。実は先週ちょうどCEOの退任を発表しまして、これからは取締役として、そして新規事業のために立ち上げた子会社の社長として、SmartHRに関わっていきます。

芹澤:私は2016年にエンジニアとしてSmartHRに入社しました。その後、2020年に取締役に就任、2022年からは代表取締役に就任します。

大室さん:まずは社長交代の裏側から伺います。あらためて宮田さん、なぜ社長の座を交代することにしたのでしょうか?

宮田:最近、従業員数が500名を超えたこともあり、人が増えるにつれて求められる役割が変化してきました。その都度、立ち振る舞いを変えてきたつもりですが、特にこの1年ぐらいはそれが難しく感じるようになったんです。

これはつまり、会社の成長に自分が追いつけなくなっているということ。それならば、会社をもっとうまく活かせそうな次世代のリーダーにバトンパスしようと考えました。

大室さん:CEOの立場を降りることに、寂しさはなかったのですか?

宮田:それはあまりなかったんですよね。実際、僕が会長になる案も出ました。そのほうが世の中的にも「何かあったのか?」と深読みをされづらいと思います。ですが、それでは結局誰がトップなのかがわかりづらいと思ったので、取締役ファウンダーというポジションに就くことにしたんです。

会社の創業者であること自体はずっと変わりません。CEOとは、役割にすぎませんから。求められていることが変われば担当者が変わるのも当然です。それが自然なことだと思っているので、社内の告知では「部署異動みたいなものだと思ってくださいね」と伝えています。

芹澤:その後に僕があいさつしたんですが、「部署異動でCEOになった芹澤です」というあいさつから始めました。ほんとに、それぐらいの感覚ですよね。

大室さん:最近では、CTOがCEOになる会社も増えているように感じます。やはり世の中にもそういった流れがあるのでしょうか?

宮田:企業の競争力の源泉として、テクノロジーが大きな比重を占めてきたことの表れかもしれません。もちろん今回の交代は芹澤さんが適任者である点が前提ですけどね。

大室さん:なるほど。テクノロジーが会社の中で重要視されるとなれば、芹澤さんはプレッシャーも感じるのでは? 社長になってからも、創業者である宮田さんの考えを過度にうかがってしまったりすることはないのでしょうか。

芹澤:それが、プレッシャーはほんとないんですよね。これまでがそうだったように、今後もフラットな関係性のうえ、要所要所では意見を言っていただきたいと思っています。

宮田:芹澤さんは、メンバーが3人しかいない時期に入社されたので、一緒に会社をつくってきた1人だと捉えています。当時からフラットに意見を言い合ってきたし、むしろ僕のほうが「芹澤さん、これどう思ってんのかな?」と気にするシーンが多かったように思います。

500名という従業員数に加え、今年はユニコーン企業にもなりました。かなり注目されていて普通の人はなかなか手を上げづらいポジションだと思うのですが、彼はその辺のプレッシャーにすごく強くて。自分から「やりたい」と言ってくれた彼に任せるのが、一番だろうと考えました。

長く走り続けるための、「文化祭2週間前」の空気感

大室さん:さて、メインのテーマへと移りたいと思います。ここ2年近く、コロナ禍の影響によって働き方にたくさんの変化が起こりました。

リモートワーク化や、副業の推進、ジョブ型雇用への移行などに関しては、コロナ禍以前から取り沙汰されていますね。ある意味、働き方の規制緩和が起こっている状態とも捉えられます。このような時代において、企業と人の関係性はどう捉えていくべきでしょうか?

宮田:会社を創業した2013年からは想像もできないほど、世間では働き方が注目されています。SmartHR社も今でこそフルリモートを取り入れていますが、コロナ禍以前はフル出社を前提としたような会社づくりをしていたんです。

大室さん:リモート化の動きは一過性のものではなく、ある程度不可逆的な流れかもしれませんね。実際のところ、リモートワークの利用率はどの程度でしょうか?

宮田:プロダクト側のメンバーはフルリモートにしていて、ビジネス側はいろいろ試している最中です。会社全体での出社率でいうと、1日あたりおよそ20パーセント程度です。1週間では、のべ350人ぐらいが出社している状況ですね。リモートが好きな人はずっとリモートですし、地方に引っ越した人もいます。

一方で、仲間と集まるのが楽しくて出社する人も結構います。実はこのオンライン配信イベントも、会社の別のスペースで集まったメンバーたちがパブリックビューイングしているんですよ。

大室さん:なるほど。書籍​『ビジョナリー・カンパニー』では、「先見性のある企業はカルトのような組織」という内容の項目があります。会社が宗教のように持っている価値観があり、そこから外れた人を病原体のように排除する組織であると。

ただし悪い意味ではありません。それくらい価値観のマッチングを重視しているという比喩です。フル出社が前提であれば、会社という場所でSmartHRの価値観を伝えていく機会は十分にあると思いますが、リモートワークの最中においてはどのようになさっていますか?

宮田:フルリモートにおいても、仕事を通して自然と伝わっていると思います。例えば、SmartHR社は、すごくオープンな会社と表現されることがあります。みんなが経営情報や、会社の銀行口座の残高を見られるようになっていたり、従業員の皆さんの給与テーブルと、それぞれのテーブルに何パーセントの人がいるかも開示していて。

それは経営会議がZoomになっても変わらず、むしろ聞きにだけ来ている参加者が毎回数十人いたり、Slackでほとんどのチャンネルがパブリックになっていたり。

思い返せば、初期のころからそういったスタンスでした。ロジックで考えると、情報をオープンにすることは、いいとも取れるし悪いとも取れます。最終的な判断基準は、「どっちのほうがカッコイイか」で判断するようにしています。

芹澤:うちの会社はカルチャーやバリューを重視していますが、明文化されていない風土に、「文化祭の2週間前で、バイトに行ってもギリ怒られないぐらいの空気感」といったものがあるんです。何かをつくろうとワクワクしているけど、ちょっとゆるいみたいな。その感覚、すごく好きですね。

大室さん:文化祭の2日前と言っている会社もありますよね。楽しいけど、1年ぐらいいると疲れちゃうような。

宮田:周りと違う行動を取れば爪弾きにされてしまうような環境ではなく、ある程度個人の自由もあるくらいの空気感を目指してきましたね。

大室さん:文化祭ノリっていう言葉は、昔から使われてきましたよね。いわゆるベンチャーと呼ばれる会社は、文化祭ノリを意識していることが多いと思うんです。一方で、燃え尽き型に繋がってしまうというデメリットもありますよね。あえて「2週間前」としたのは、文化祭ノリの永続性を考慮したのでしょうか。

宮田:そうですね。毎日文化祭2日前のノリではバイトにいくこともできません。するとお金がカツカツになっちゃうじゃないですか。2週間前ならバイトも行けるし、違う予定もこなせます。自由があるぶん、長く働ける状態を意識してきました。

SmartHRはSaaSと呼ばれるビジネスモデルで、ベンチャー企業の中ではマラソンに近いというか、長く続けていかなければならないんです。あまり根詰め過ぎないぐらいの働きやすさ、関係性がすごく向いているビジネスだなと、初期から思っていました。

芹澤さん・宮田さん

代表が変わっても、会社の“芯”は変わらない

大室さん:採用の場面でカルチャーフィットという言葉がよく使われますが、採用以降にカルチャーを浸透させるような努力や工夫はされているのでしょうか?

宮田:いくつかあります。1つは評価制度です。会社の価値観にマッチした行動をしている人が評価される仕組みにしました。

逆に、あえてやらないこともあります。よく、クレドみたいなものを朝礼で読む会社がありますよね。僕自身、そういう会社に在籍したことがあるんですけど、めちゃくちゃ嫌いで。入社前は「いいじゃん」と思っていたはずのクレドを、毎朝読まされることによって嫌いになっていくんですよ。だからそういう嫌な体験に紐づいてしまうようなことは、しないと決めていました。

大室さん:カルチャーを浸透させたいあまり、強制してはいけないんですね。例えば営業が強い会社なんかは、受注にかける熱量と、受注した際の喜び具合が派手だったりしますよね。SaaSの場合、少し違う感じなのでしょうか?

宮田:そうですね。前提としてSmartHRはあまり営業、営業している会社ではないかもしれません。例えば、僕が営業に出る機会も、ほぼないですし。でも、そんなうちの会社でも、一時期ドラを鳴らそうとしていたことがあります。

芹澤:エンジニアたちから「ちょっと、うるさい」とクレームがあって、すぐなくなりました。作業への支障があったのでしょう。

宮田:遊び心で、Amazonでワクワクしながら買ったのに、1、2回ぐらいで終わりましたね。今はSlackで受注報告をしています。いろんな人がSlackでリアクションをつけてくれるので、本人としては誉高いですよね。現代版におけるドラのようなものかもしれません。

大室さん:すごくスマートな会社なのに、ドラを鳴らしている時期もあったんですね。芹澤さんは、宮田さんの人となり延長にあったこれまでのSmartHRを、今後どのようにしていきたいですか?

芹澤:僕はこのカルチャーがすごく好きで入社しましたから、変えるっていうことはありえないと思います。まだ3人しかメンバーがいないころに入社して、すごく居心地が良かったんですよ。

成長の過程で、数カ月に1回くらいの頻度で新しい人が入ってくるんです。その度に、すごくドキドキしていて。この人が入ってきたら、カルチャーが変わるんじゃないかって、なぜか1人で心配していた時期があるんですよ。

でも、人が入っても入っても全然変わらなかったんです。むしろどんどん楽しくなってる。20人を過ぎた辺りからは、その心配もなくなりました。今後、会社が1,000人規模になったとしても、僕や宮田さんがいいと考えてきた会社の“芯”みたいなものを頑張って残し続けたいですね。

大室さん・芹澤さん・宮田さん

大室さん:新しい人が増えてもカルチャーが変わらなかったということは、かなり戦略的な採用をしていたのですか?

芹澤:カルチャーという意識だったかはわかりませんが、宮田さんが「この人とだったら働きたい」という、合う合わないのジャッジをしていたと思います。

宮田:そうですね。COO(チーフ・オペレーティング・オフィサー)と、CFO(チーフ・ファイナンス・オフィサー)という役職がありますが、採用する時点でこだわったのは、プロダクトを作っているチームとの相性でした。

そういう役割を担える人って、金融系やコンサル出身の方が多いのですが、面接でお会いしていると、どことなく偉そうな雰囲気を感じてしまうことが多くて。この人たちが入ってきたときに、プロダクト側の人たちに対して頭ごなしにものを言ってしまったり、否定してしまうのではないかと。

もちろん、そうじゃなかった方もたくさんいらっしゃったんですけど、ややそういう傾向が強いなと思ったんです。エンジニアたちと一緒に議論しながら物をつくったりとか、試行錯誤ができるような人に入ってきてほしいなと思ったので、COOとCFOはその点を重視して採用していました。

大室さん:COOの倉橋さんにはお会いしたことがありますが、人柄めちゃくちゃ良いですもんね。

宮田:倉橋さんはハーバードのMBAやマッキンゼーなど、キラキラな感じの経歴なんですけど、そういう雰囲気はみじんも感じさせないんですよね。

アフターコロナに、人が集まりたくなるオフィス作り

大室さん:SmartHRは現在となっては多くの注目を集めていますが、規模拡大にあたって壁を感じた時期はありましたか? 人数が増えるにつれ、会社のカルチャーに変化を加えなければならないようなこともあったのではないでしょうか?

宮田:会社の成長という観点では、壁を感じたことはありません。個人的に大きな変化が起こったのは、コロナ禍によってフル出社からリモート前提の会社に変わったことでした。

毎日顔を合わせていれば、努力をしなくてもお互いの人となりを理解し合えました。人も増え続けるなかで会社に行かないとなると、自己紹介のタイミングでしか顔を合わせることができなくなります。ですから、意図的に交流を促す努力が必要になったんです。

大室さん:いわゆる働き方のチェンジに、どう対応していくかと。

芹澤:そうですね。社員が10人以下だったころのオフィスはマンションのような小さな場所でした。そんな空間でさえ、デスクのレイアウトによって空気感が変わってしまうんですよね。「この仕切りのせいで意思の疎通がしづらくなっているんだ!」と宮田さんが話していたのを覚えています。

宮田:それは今でも覚えています。アクリル板程度の緩やかな仕切りなんですよ。でも、仕切りの左右で空気感が全然違うんです。それ以降のオフィスは、なるべく壁や柱がないことを意識して移転してきました。

芹澤:その哲学でやってきたら、コロナ禍は大きな壁なんですよね。

大室さん:フルリモートには、抵抗があったのでは?

宮田:僕はやっぱり、抵抗はありました。でも最初の緊急事態宣言が発令されたときは、どんなウイルスかも全然わかりませんでしたから、対策を取らざるを得なかったんですよね。嫌か嫌じゃないかの前に、やらなきゃっていう感じで。

大室さん:なるほど。オンラインならではのコミュニケーションの難しさってありますよね。例えば、人となりを知らない上司から「これ、どうなってますか?」というメッセージ来たとき、「この人、怒ってるのかな?」って思うことがあります。

実際には文字通りの質問かもしれません。人となりを知っていれば発生しないストレスに対して、どんな工夫をされていますか?

芹澤:僕が現時点で管掌しているプロダクトチームでいうと、Zoomなどでつなぐ機会を意図的に増やしています。お茶会を設けたり、チームごとに朝会をやっていたり。あと、みんなで集まって作業するモブプログラミングがすごく流行っていたりも。私の観測範囲内では、リモートになってから入社した人でも、スムーズに馴染んでいけているように思います。

大室さん:これまでの企業と人の関係性って、学校と生徒の関係性に非常に似ていたと思います。生徒たちは、毎日学校へ通って同じメンバーと部活もして、土日も同じメンバーで遊びます。会社員も、毎日オフィスへ通うし、定時後は会社の人たちと飲みにいくし、土日には一緒にゴルフをしたりもしますよね。

でもアフターコロナにおいては、人間関係をすべて会社に預けるというスタイルではなくなってくると思うんです。かといって家にいるだけでは人間関係を作りづらいものです。どのようにして、人間関係のポートフォリオを再構築していけばいいと考えられますか?

宮田:リアルにおける社員同士の関係性が、文化祭の準備をしながら会っていた感覚から、オフ会をやっているような感覚に変化していると思います。人間関係が希薄になるというよりは、温め方やつなげ方が変わっていくのかな

みんな、オフィスに来た日は写真を撮っていて、SlackとかTwitterとかにあげているんですよ。ちょっとした聖地巡礼みたいな感じになっているんです。

大室さん:ある種の象徴として機能する、SmartHR大聖堂ということですね。会社のカルチャーを表すうえでは、オフィスは今まで以上に象徴性を帯びると思うんですけども、場所作りにおいて考えたことはありますか?

芹澤:実は弊社はオフィス移転が下手なんですよ。移転の回数も多いし、レイアウトの正解もまだ見えていません。座席をどれぐらい確保し、フリースペースなどの交流広場をどんなものにすべきか、悩んでいる最中です。

宮田:今のオフィスは1,000坪ありまして、そのうちの4分の1がフリースペースになっています。そこにホシザキの大きい冷蔵庫が4台置いてあって、アルコールやノンアルコールのドリンクがパンパンに入っているんですよ。

その前にはスタンディングの長い机をたくさん置いて、仕事終わりに交流ができるようにしました。最近は、至るところでオフ会が開催されているような感じですね。これはコロナの前からやっていたことですが、ここに来て、活きてきた施策だと思っています。

大室さん・芹澤さん・宮田さん

白黒つけるより、細かなチューニング

大室さん:巷では、どれくらい出社をさせるかについて悩む会社が多い中で、SmartHRの場合は、来てもらうというより、「来たいと思ってもらえる感じにしている」ということですね。

宮田:ルールで縛ることがめちゃくちゃ嫌いな会社なんです。そもそも縛られるほうも、縛らなきゃいけない側も結構しんどいと思うんですよね。なるべく自然発生的に「これぐらいの比率で収まるといいな」というラインを決めて、収まっている限りは何もしないようにしています。

大室さん:その調整、とても難しいと感じています。経営者には「白、黒。うちはこうします!」っていうスタンスの人が多い中で、宮田さんは細かなチューニングを繰り返している感じがしました。かなりセンスに依存すると思います。

宮田:言われてみれば、そうですね。起業当初は他のリーダーみたいに、「白、黒」はっきり言えるタイプに憧れがあったのですが、どうにも苦手でした。軌道に乗るまで、自分の性格のせいで会社がうまくいっていないんだと思っていた時期もあったぐらい。今となっては、チューニングしていくスタイルがはまっているのかなと思いました。

大室さん:玉乗りをしているピエロって、一見止まっているように見えてもずっとバランスを取り続けていますよね。SmartHRも一見すると盤石なんだけど、細かなことをやり続けてきたんですね。

芹澤:なので今回の社長交代でも、そのカルチャーを僕が引き継いで行こうと強く思っています。長く働いていてきたぶん、カルチャーの理解はあると思うんです。一発でカルチャーが浸透するというような方法は絶対ないですよね。やったことが多すぎて、もはや言いきれない。オフィスの什器1つ取ってもそうですよね、宮田さん。

宮田:従業員の人たちに「今どんな感じですか?」といったサーベイを取っています。それをマネージャーの人たちで眺める会を毎月必ずやっているんですよ。「この数値が少し下がっているけど、何があったと思う?」と真剣に話し合って、対策を決めるんです。外から見るとあんまり分からないし、すごく地味な取り組みではあります。

芹澤:サーベイを分析する側も答える側の皆さんも、すごい本気でやってくださっていると感じますね。SmartHRはアンケートの回答率が高いらしいんですよ。

大室さん:要するに、お互いが本気だからこそ意味があるんですね。

宮田:一度「答える意義が分かんない」という意見が出ていた時期があったんですよ。なので、全社員向けに結果と対策を発表する会を設定したこともありました。それもまた、チューニングの1つかもしれないですね。

質問コーナー

大室さん:ここで視聴者さんからのご質問がきています。「芹澤さんが思う、一緒に働きたい人物像は?」とのことですが、いかがでしょうか。

芹澤:僕は割と誰とでも柔軟に働けると思うんですけど。その人なりのシーンや哲学があると好感を持てますね。朝言っていたことが夜変わるとかは全然良くて、そこにすべてロジックがあるかどうか。その人の考えに対して意見を言ったときに、真意を持って返してくれるみたいな人は、一緒に働いていて気持ちいいと思います。

大室さん:イエスマンじゃない方がいいんですね。

芹澤:そうです。なんでも頷かれてしまっては、「あれ? この人、何考えている人だっけ」みたいなふうに思ってしまいますね。

大室さん:でもなかなか難しいですよね。例えばDeNAでは、南場さんが出ている会議でも、若手社員が、「南場さん、それ意味なくないですか?」とか結構平気で言っているそうです。ロジックが立っていれば反対意見をいうことに慣れている人たちならではのコミュニケーションだなと思います。SmartHRでもそういう感じなのでしょうか?

芹澤:そういう建設的な意見交換はフラットにできていると思います。

大室さん:上司のイラっとした表情で引っ込めちゃうような空気の会社もありますから、すごいことですね。続いての質問ですが、「社長が変わることで、未来に向けてどんな変化がありそうでしょうか? 変化がないなら、そもそも交代する意味がないと思っています」というご質問です。

宮田:会社は今年、長年目標にしてきたユニコーン企業になりました。時価総額1,000億円以上で未上場の会社をユニコーン企業というのですが、日本では6社ぐらいしかいないらしいです。それくらい希少な存在になることができました。

それに合わせて、会社のミッションも変えちゃおうと思っているんです。実は今のミッションである「社会の非合理を、ハックする。」も2代目で、芹澤さんたちと一緒に2018年につくったものなのですが、「耐用年数3年間ぐらいだね」と最初から決めていて。

大室さん:なるほど。

宮田:恐らく「社会のインフラをつくるぞ」とか、そういう趣旨のものに変えていくと思うんです。現在のミッションからすれば、かなりスタンスが違う話だと思ってまして。

「社会の非合理を、ハックする。」って、カウンターというか、たてついてる感じがあるじゃないですか。でも「社会インフラになる」って、どちらかというと提供側に回っているような感じなんですよね。このスタンスの変化ってめちゃくちゃでかいと思っているんです。

僕は何かにたてついてるほうが気持ちいいし、自分を活かせているっていう感じがします。提供側に回った瞬間に、「なんか、つまんねえな」ってなっちゃうタイプの人間が、そのままリーダーを続けていくのは良くないなって思うんです。

大室さん:起業家って、ちょっとロックミュージシャンっぽいとこありますもんね。戦国武将のように、統治する側になるにつれキャラ変してかなきゃいけないと。

宮田:そのキャラ変が、僕はできないなと思ったんで、キャラ変できそうな芹澤さんにバトンタッチしていこうと思っています。

ご覧いただいてわかるかと思いますが、僕は瞬発力でパッと適当にしゃべれるんですよね。芹澤さんはじっくり考えてから話すタイプなんです。60点のものをパッとするやつと、95点のものをきちんと練ってから出すっていうタイプ。そういった性格面においても、これからは僕のフェーズじゃないなと感じています。

大室さん:ありがとうございます。もう1問あります。「社員の自己肯定感を向上させる取り組み、エンゲージメントを高める取り組みをもう少し教えてほしいです」とのことですが、何かありますか?

芹澤:1つ挙げると、SmartHRは積極的に権限委譲しています。現場の裁量がめちゃくちゃ高いので、自己実現型の人からすると働きやすいのかもしれません。形にして評価されて、自己肯定感が高まっていくという。宮田さんが昔ブログで「もしかしたら、うちの会社は能力主義なのかもしれない」といった趣旨の記事を書いていましたよね。裁量を与えて、そこで成果を出した人を評価しますというスタンスは、昔からあったんだと思います。

参考:SmartHRは、外から見えるより「実力主義」な会社かもしれない

大室さん・芹澤さん・宮田さん

宮田:加えて、うちの会社にはブログやnoteを書く人が多いんですよね。自分がやっている仕事を社会にオープンに言えるって素晴らしいこと。

この会社はきちんといい仕事をして、ユーザーに対して誠実に向き合っていると、オープンに語れるような会社にしたいなと思ってきたのでしたが、今それが叶っていて。誉れというか、自己肯定感を上げることにはつながっているかなと思います。

大室さん:会社でやっていることに誇りが持てるようにしたいと。ありがとうございます。では最後に一言ずつ、お願いできますでしょうか。

芹澤:今回のテーマは関係性ですが、人間って本当にソーシャルな動物で、1人じゃ絶対機能しないじゃないですか。集まってこそやっていけるから、関係性は切っても切り離せないものだと思っています。

特に今の時代、企業に対する考え方が見直されはじめているなかで、今日みたいなイベントができてすごく楽しかったと思っております。僕自身はロールが変わるタイミングで、自分と組織の関係を見つめ直しているところでした。

芯にあるのは、「働くことが楽しくあってほしい」という願いです。この会社はもちろん、日本の社会全体がそうなったらいいなと思っています。

宮田:僕はいろいろな選択肢が並んでいる世の中になったらいいなと思っています。関係性といえば、例えば夫婦がこうあるべきだとか、会社と社員の関係はこうあるべきだとか、何かの「べき論」が強く根付いていますよね。

「未上場のうちに社長がバトンタッチします」という決断にも、批判をいただくことがありました。それも結局べき論に流されているにすぎないと思っていまして。

「そういう選択肢もありだよね」と思い合えるような社会が作れれば、会社とそこで働く人たちの関係性ももっと多様になって、より働きやすくなっていくんじゃないかと思いました。

大室さん:ありがとうございます。今日のセッションを通して、宮田さんからは白黒よりもグラデーションを重んじるようなみたいな発言を多くいただきましたが、選択肢を増やしたいというお考えも、そこに結びついているなと感じました。非常に面白かったです。これにてこのセッションは終わりたいと思います。皆さん、ありがとうございました。

【執筆・まえかわ ゆうか】
エディター / ブランディングプランナー / カレー屋さん。アパレルからビジネス分野まで幅広い分野でクリエイションを提供する。専門分野は食。

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