なぜ話を聴いてもらうと楽になるのか? 実例から考える【Smart相談室】Vol.3 セミナーレポート

2022.06.14 ライター: 廣嶋祐治

2022年5月18日、オンラインカウンセリングサービス「Smart相談室」を提供する、株式会社Smart相談室主催のオンラインセミナー「なぜ話を聴いてもらうと楽になるのか? 実例から考える」では、企業でのカウンセリング経験も豊富なSmart相談室スーパーバイザーの鵜飼 柔美氏をお迎えして、企業労務担当者向けに企業内でさまざまな相談に対応する際のヒントをお話しいただきました。

労務担当者も多く受講されている産業カウンセラー資格の養成業務に長く携わるなかで見出した、社内相談窓口を設置する際のポイント、運用時のノウハウをはじめ、さまざまなテーマについてご紹介。今回は、全7回を予定されているセミナーの第3回目の講演です。

<セミナー講師> オフィスファーロ 代表 鵜飼 柔美 氏

<進行> 株式会社Smart相談室 CEO 藤田 康男 氏

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社内相談窓口を設置する際のポイント、運用時のノウハウとは?【Smart相談室】Vol.1 セミナーレポート

▼第2回目のセミナーレポートはこちら

労務相談担当者としての初めの一歩 ストレスケアの基礎知識とは?【Smart相談室】Vol.2 セミナーレポート

コロナ禍でよくある相談事例

藤田:本日は2万件以上のカウンセリング経験をお持ちの鵜飼さんにお話をお伺いします。いろいろな相談に日々対応されていると思いますが、「なぜ話を聴いてもらうと楽になるのか?」を、実例から考えていくというセミナーです。

鵜飼さん:本日は、「なぜ、話を聴いてもらうと楽になるのか」というところから、「効果的な聴き方と効果がない聴き方」、「聴き方よりも、その前に姿勢」が重要であることなどをお話ししていきます。

まず、事例を想像していただければと思います。コロナ以降の何人かの方のご相談に共通する内容を組み合わせているので、個人を特定できる内容ではありません。守秘義務に反さずにやっておりますので、ご安心ください。

相談者はAさん、40代の方、女性で、管理職です。

相談内容:オンライン会議の際に責められて以来、仕事に行くのが辛い

この事例を頭に留めておいていただけたらと思います。簡単にまとめますと、コロナ禍に応じて変えなくてはならないところに着手し、風当たりも強いなかで結果も出した。ところが、会議では感情的なアンチが現れる。冷静に対応していたけれども、「大勢対自分ひとり」のような感覚に陥ってしまった。ニュースで見た暴行を受けた高校生はこんな感じだったのか、とも想像した。以来、会社に行くのがつらい。そういうご相談ですね。

あふれる想いを「カウンセラーの心の壺」に移し替える

鵜飼さん:ポイントの1つ目は、あふれる思いを受け止めることです。つらい、苦しい、という気持ちで、心の壺がいっぱいになっているわけですが、それをカウンセラーという壺に、少し入れ替えるような感じです。私たち大人は社会性が高ければ高いほど、隠したり、恥ずかしいと思って自分の本音を言えません。

頑張ってきた「のに」創意工夫をした「のに」、結果も出してきた「のに」という気持ちや、みんながみんな自分の味方じゃないことはわかっていた「けど」、助け舟を出して欲しかった「のに」という気持ち。胸の中にあふれている色々な想いを引き出してあげるのです。

胸の中にあふれている色々な想いを引き出すことが第一歩になる

ポイントの2つ目は、それらを理解され、ひとりじゃないという気持ちになれること。たとえば、昇進したばかりで大変ななかで頑張ったことをわかってもらえる。手探りでものごとを進める難しさや、目的をぶらさずに手段を変える創意工夫の大変さをわかってもらえた。

すべての人に賛同を得るのは難しいと思いながら、自分を鼓舞してきたことも、TPOに反している相手に冷静に対応しようと感情をコントロールしてきたことも、わかってもらいたいのです。

これらのことがわかってもらえると、ひとりじゃないという気持ちになってもらえます。聴くことによってあふれるような思いを吐き出させるのです。

聴いてもらうことで自分を客観視することができる

藤田:届いている質問を少しずつ挟ませていただきます。「あふれる想いをうまいこと吐き出せないと、病気になるというイメージでいいのでしょうか」これが1つ目の質問です。

鵜飼さん:あふれるような想いとは「ストレス」に値しますが、耐えられる度合いは人によると思います。ストレスをわかってくれる人など、緩衝要因の有無やその人自身の考え方にもよるので、「あふれること=病気」にはならないと思います。ただ孤独感やストレスに長く晒されていると、不眠や食欲低下などの変化が体に出ることはあります。

藤田:2つ目の質問です。「ご本人があふれそうなのかどうなのかを、外見から判断することが、第三者として可能なのでしょうか」とのことですが、いかがでしょうか。

鵜飼さん:これも個人差があります。表情に出たり態度に出る方と、どんなこと考えているかわからない方がいらっしゃいますから、難しいんじゃないかなと思います。

でも普段のその方の様子を見ていると、「少し元気がないな」「口数が少なくなってるな」「なんかしんどそうだな」と見て取れるかもしれません。大人になればなるほど、自分の気持ちよりも相手や環境に配慮する気持ちが勝って自分を抑えてしまう人が多いので、自分自身の感情にも気づかないことも、多分にあるかと思います。

藤田:もう1つ質問をご紹介させてください。「ひとり」について質問がきています。「ひとりが好きな方もいますが?」という内容です。

鵜飼さん:それは多分、ひとりで耐えられる状態なんだと思います。このケースは「好き」を超えてしんどいというストレスになってしまっていますね。ひとりが悪いわけではないですが、誰かにわかってもらいたい気持ちのとき、わかってくれる人がいることが心の支えになるのだと思います。

藤田:ありがとうございます。

効果的な「聴き方」とは?

鵜飼さん:カウンセラーが聴く時間、それはつまり「相談者の方がお話をする時間」です。聴く耳があるから話をするわけです。同時に、相談者の方は自分の言葉を自分の耳で聴くことにもなりますから、少し客観的に捉えられるようになります。

モヤモヤの中にいる状態から、それを手に持つような感覚です。少し離れて見ることができれば、手放せるようになり、自分の中から解決策が出ます。こういうふうにやってみよう、こう考えてみよう、と視野が広がるんです。このような余裕を持ってもらうための効果的な聴き方と、効果のない聴き方をお話しします。

日本語では「きく」という漢字がたくさんあります。3つの「きき方」を辞書で調べてみると、ちゃんと違いがありました。

3つの「きく」の違い

「聴く」は「聞こえるものの内容を理解しようという姿勢で聴く」と書いてあります。音や言葉だけでなく、その中身を理解しようという形で聴きますので、イメージ的には前のめりな感じですね。

「聞く」は、「聞こえる」というときに使う「きく」だそうです。BGMのように、耳に入る音や声を感じている、音が流れてるなど認めるときです。BGMで突然好きな歌手の曲が流れたりとか、雑踏の中で名前が呼ばれたときにピクッとすることってありますよね。それを「カクテルパーティ効果」といいます。「聞く」で聞いていて、何か自分に関連する、あるいは自分の関心のある言葉が来ると、前のめりになる耳偏の「聴く」に変化することもあるのです。

「訊く」は、質問するときの「きく」です。きき手主導で相手に尋ねて答えを求める状況ですね。たとえば、ドクターが症状を尋ねるのは「訊く」になります。

効果的な聴き方は「話し手の世界で」話を進めることです。相談者の方の置かれている事情や事実、表現された感情、そして表現されていない心情を「話し手の世界」で理解しようとします。

事情、感情、心情を「話し手の世界」で理解することがポイント

先ほどの事例ですと、奮闘して結果も出したのに、大勢の前で否定され続けた、晒されていた時間があったという事情、事実がありました。そして、出社するのがつらい、人と目を合わせるのが怖いという感情をもっています。さらに暴行を受けた高校生のニュースをたとえに表現した、孤独感、理不尽さ。そういうものを、この人になったかのように、この人の世界で理解しようと聴くのが、聴き方のコツです。

藤田:カウンセラーの方は、話し手の世界をどこまで理解しているという認識で話を聴いていらっしゃるんですか?

鵜飼さん:「わかった」まではいかず、「わかろうとして」いますね。事柄、事実を聴き、どんなストレスを感じたのか、どれくらいしんどいことだったのか。目を合わせてくれない場合は、その理由を推察したりとかですね。

効果的な聴き方の5つのポイント

効果的な聴き方の2つ目は、事実、表現された感情、心の奥の心情を話し手の世界で理解しようと「努めて」聴くことです。

日常のコミュニケーションとはちょっと違って、話しやすい場になるような雰囲気を私たちが努力してつくります。「さあどうぞ。お話しください」と言われても、自分の中にあるネガティブな気持ちを出すのに抵抗がある方は多いです。

そして話し始めたら、さえぎらないこと。聴き手側の勝手な興味や関心で話を横道にそらさずに、今、話したいことを中心に聴きます。もう1つは聴き手の経験と重ね合わせて「あるよね、そういうこと」とか「自分だったら、もっとこうだったよ」と発さないことです。そして、安易にアドバイスをしない。まずは気持ちの理解に徹しましょう。

藤田:「経験とかアドバイスは、言ってあげたほうがよいようにも思いますが」という質問もきていますが、いかがですか?

鵜飼さん:言ってあげたほうがよい場合と、言っても意味がない場合がありますね。

アドバイスをしても「それはあなたの経験ですよね」「それよりも自分の方がつらかった」と思われたり、「不幸自慢ですか」とマウント取りのように思われることがあるので注意が必要です。

アドバイスが効果的な場合もあると思いますけれども、心の壺に感情があふれているときは、入っていきません。求められたときにアドバイスするのが一番よいと思います。的を得ていてもカタルシスが得られてないと、あまり効果がないのです。

「聞く」や「訊く」ではなく「聴く」ことが重要

これらに留意して話を聴くときに、「聞く」「訊く」のきき方をしないように気をつけましょう。無関心だったり、自分が引っ掛かったところだけ聴くというのは、「聞く」になりますから、効果はあまりありません。

「誰かに相談したんですか?」「どうなりたいですか?」など、第三者のほうに振り分けたり、わかりきった答えを引き出すような発言も効果はありません。

やはり、「聴く」でなくてはなりません。相談者が事情や表現された感情、心の奥の心情を、話し手の世界で理解しようと努めてください。

「あぁ、それつらいよね」みたいな他人事、対岸の火事を見るような感じではなくて、まるで自分がその痛みを感じているかのように。誰も助けてくれない孤独や見捨てられたつらさのようなものを一緒に味わおうと寄り添い理解します。

自分が痛みを感じているかのように、一緒に味わおうと寄り添うことが大切

聴き続けていくと、相談者は「同じ感覚で聴いてくれてるな」と感じ、さらなる表現が出てきます。この方の場合は「公開処刑をされているような感じでした」とおっしゃったんですね。

藤田:「話しやすい場が大事とお話しされていましたが、何か工夫できることはありますか。他人に聞かれないところで聴くのは当たり前だと思いますが、社内の人間じゃないほうがいいのかななんて思ったりすることもあります」というご質問がきています。

鵜飼さん:話しやすい場、空間を確保するというのは、すごく大事なことです。社内の人か社外の人かについては、聴き手との関係性や話の内容にもよるかと思います。

今回のテーマは「聴き方」ですので、物理的なものよりは聴き手の態度や姿勢の部分をお話しできればと。「何を話しても大丈夫ですよ」という空気を感じさせるために、まゆをしかめたり、不満げな顔をせずに、温かい表情や、ゆったりした態度を見せます。

藤田:ありがとうございます。社外の人間が適切だと判断された場合には、ぜひSmart相談室を使っていただければ。ほとんどの方は「会社の人に言いづらいから」という理由で使われます。会社や人が嫌いという意味ではなく、「会社の人もこんなこと言われたら困るだろうな、気が引けるな」という方が多いです。

鵜飼さん:利害関係のない第三者というのは、すごくいいと思います。Smart相談室のカウンセラーはみんな、秘密を守ります。発言が公になったり噂になることがない安心感も話しやすさにつながると思います。

「中核三条件」にもとづいた「聴く姿勢」を持つ

効果的な聴き方のコツを3つ挙げましたけれども、すべて小手先のテクニックというよりも、重要なのは態度・姿勢です。相談者の方が楽になる、モヤモヤがなくなる、どうすればいいかを考えられるようになるというような、その方に変化が起こることを、専門用語では「パーソナリティ変容」といいます。その変化が起こるには、必要十分な条件があると考えられています。

1つ目は「一致」。「純粋性」とか「誠実さ」とも言い換えられます。何かと何かをくっつけるということではなく、聴き手側が誠実で真摯に耳を傾けようとしている態度です。

2つ目は「受容」。話し手の世界で、聴き手の価値観や良し悪しに関係なく、ありのままを受け容れてくれていることです。

3つ目は「共感」。あたかも自分ごとのように感じ、痛みを分かち合う。

この3つの条件が、変容のためには必要だといわれています。

これをわかりやすく、ストーリーっぽく書いたのがスライドの下部です。一致、受容、共感でパーソナリティ変容を促す

悩みや問題を抱えた人が、安定して誠実に自分と向き合う支援者に出会い、否定や評価のない大きな包容力で、ありのままの自分を受け入れられる体験をします。

心を開いたら、奥底にある感情を吐露してくれるようになりますが、それすらも受容してもらう。そういう関係性によって気持ちが落ち着き、そう扱ってもらえる自分自身を大切だと思えるようになる。それによって人間が元々持っている自己成長力が発揮されると考えられています。

ですからテクニック的な話よりも、まず姿勢が大事なのです。この姿勢が体現されたものが、「聴き方」なのです。

真摯に聴く姿勢が伝わる応答モデル

鵜飼さん:私たちカウンセラーは、日常とは違う方法でコミュニケーションをします。真摯に聴く姿勢によって、話し手の方が変わるような聴き方です。

それを体現する技法として、あいづちやうなずきがあります。それらは話しやすさや、安心安全な場づくり、話しやすさを促進することになります。

それから、伝え返し。相談者の方がわかってほしい重要なキーワードのところを繰り返します。たとえば「しつこく糾弾してきて」と言ったら「しつこく」と繰り返しましょう。あいづちやうなずき、伝え返しで積極的に相談者を理解する

傾聴における質問は、「訊く」とは違って、積極的に相談者を理解するための質問です。話の内容や心情をもっと正確に理解しようとする姿勢で、「どれくらいの時間、攻撃され続けてたんですか」「そんなに長い時間だったんですね」などと問いかけます。あるいは、「時間は大したことなかったんですけど、すごく長く感じました」と言っていたなら、「みんなが沈黙して見てる間は、それくらいつらかったということですね」につながるような質問を。現状の出社状況を正確に把握するために、「出社されるんですね」という質問をすることもあります。

藤田:なるほど。さらに質問が届いています。「伝え返し、感情への応答に関して、うまく相談者さんの言葉を拾えないケースがあります。聴き手として工夫する部分はありますか」とのことです。

鵜飼さん:「しなきゃいけない」と思わないことがコツです。うまくできないなら、しなくて大丈夫です。その分、相談者の方に話してもらいましょう。何かしようと思っている間は、自分のことを考えてしまいますよね。そんなことを考えるぐらいだったら、相手の世界を理解しようと集中しているといいと思います。

「感情への応答」と「要約」で相談者の想いを共感したことを伝える

「感情への応答」と言われている技法もあります。表出された感情を伝え返したり、伝わった感情を表現するという聴き方です。「出社するのがつらい」と言ったら「つらい」と繰り返したり。「公開処刑をされているようでした」と言ったら、公開処刑されているって、どんな気持ちだろうと想像しながら、自分もその感情を味わってみます。今まで読んだ小説や映画とかを思い出しても結構です。

「要約」は、語られた事実と感情が伝わったことを共有するという技法です。事例では、課長になってすぐのコロナ禍で今までどおりのやり方ができないなか、必ずしも追い風ばかりとはいえない状況で結果を出してこられた。それにもかかわらず、オンライン会議で援護もなく攻撃され続け、出社がつらいとおっしゃっていました。これをしっかり把握したことを伝えるんです。

聴いてもらうことで楽になる4つのメカニズム

最後に、なぜ聴いてもらって楽になるのかをまとめます。

聴いてもらうことで楽になる4つのメカニズム

まず1つ目は、壺の中にあふれるような想いを吐き出すことによる爽快感。「こんな話をしていいんですか」とカウンセリングで言われたら、「ここは心のお手洗いだと思ってください。私たちにお気づかいなくお話しください。ちゃんと終わった後に流していくので大丈夫ですよ」とお伝えしています。

2つ目は、自分の言葉を自分の耳で聞き、客観視をしてもらうこと。そして状況を少し離れて見ることができるようになっていただきます。

3つ目は、理解してもらえたという心強さ、4つ目は人に支えてもらっている、ひとりぼっちじゃないんだなという温もり。これらを感じてもらうことが、楽になることにつながります。

藤田:ありがとうございます。聴いてもらって楽になる4つのメカニズムは非常に参考になりますね。ぜひご参考にしていただけたらと思います。本日のセミナーは以上で終了となります。皆さんご清聴ありがとうございました。

※記事で紹介した他にもたくさんの質問に回答いたしました。ご興味があればぜひ次回のセミナーにご参加ください。

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【執筆:まえかわ ゆうか】

株式会社SmartHR コンテンツマーケティングユニット所属。雑誌編集者、クリエイティブディレクターを経験したのち、2021年3月より「SmartHR Mag.」「SmartHR ガイド」の編集に携わっています。
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