「労務を明るく面白く。」キャディが挑む、製造業バックオフィスのアップデート

2020.06.29 ライター: 大久保志朗

経費精算や勤怠管理、労務管理などにおいて、紙やハンコを必要とする業務で溢れているバックオフィスの働き方。特に、歴史ある業界ではその傾向が強く、労働人口減少に伴って、バックオフィスの業務効率化は避けては通れない課題となっています。

町工場が多く存在する東京都台東区に拠点を置くキャディ株式会社は、「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに、わずか創業2年半ほどでサービスの利用社数が5,000社を突破する急成長スタートアップ。

前回の記事では、キャディの「経営管理本部」の立ち上げを担当したのち、COVID-19対策医療物資支援室  副室長を務める柿澤 仁さんのインタビューをお届けしました。

後編となる本稿では、「さらに組織成長を促進させ、バックオフィスから製造業を盛り上げるためのビジョン」について、キャディ経営管理本部マネージャー 伊藤 達也さん、労務担当 森田 美夏さんに語っていただいています。

左から、キャディ 伊藤さん、森田さん、柿澤さん

「従業員が本質的な業務に集中できる体制」を築く

――前回は、キャディの経営管理本部立ち上げのお話を伺いました。まず、バックオフィスの人数も増えたこれからのキャディは、どのようなビジョンを描いていくのかをお伺いしたいです。

伊藤さん:キャディのバックオフィスは立ち上げ時は柿澤の1名のみでしたが、今は3名となりました。柿澤はビジネスサイドに移り、今は私が経営管理本部マネージャーを担当し、労務領域は森田が担当しています。

以前よりは整備されてきましたが、バックオフィスはまだまだ至らないところだらけです。まだ40名程度だった1年前と比べて、今は80名を超えるなど、急激に成長しているため、常に新しい課題が発生しています。ですから、まずは、事業成長に耐えうる強固な土台の構築が欠かせません。

そのためにも、バックオフィスが主体となり、従業員の満足度が上がるような、本質的な業務に集中できる体制作りに注力していきます。

――「従業員の満足度が上がるような、本質的な業務に集中できる体制」……。具体的にはどのようなイメージなのでしょうか。

伊藤さん:たとえば、従業員が契約書や各種の手続きをするにあたって、不明点があったとします。バックオフィス担当者が質問に対応していくと思うのですが、これを1つ1つ対応するだけでは、また同じ質問が生まれた際に対応せねばならず、根本的な解決にはならないんですよね。

同じ質問が来ないように社内向けのQ&Aページを作る、情報経路を整備するなど、「仕組み」を作ることで従業員にとって無駄な時間を削減できるんです。バックオフィス担当者自身の工数確保にも繋がりますよね。

このように、業務に集中し、成果を出せるような仕組みを整えることで、従業員満足度も上がり、好循環が生まれていくと考えています。

――再現性のある「仕組みをつくる」ことが、バックオフィスの大切なミッションのひとつということですね。

テクノロジーとアウトソース活用によって業務を効率化

――急成長するキャディでは、どのような戦略で「本質的な業務に集中できる体制」を構築していくのでしょうか。

伊藤さん:基本的な方針としては「無駄をなくす」「自分たちで解決できない業務についてはアウトソーシングする」。この2点ですね。

弊社では合計8種類ほどHRテクノロジーを導入して、業務効率化を図っています。

社員情報・各種手続き:SmartHR
勤怠管理:KING OF TIME

経費精算:Dr.経費精算
会計:freee
法務:クラウドサイン・Hubble
業務管理:Backlog
ナレッジマネジメント:DocBase
パスワード管理:Keeper

また、社労士さんや税理士さんに一部の業務を委託しているほか、会計領域では「Dr.経費精算」を導入するなど、自分たちだけでは解決できない業務については積極的にアウトソーシングしていますね。

やはり「仕組み」を作るクリエイティブな業務に集中するためには、テクノロジー活用は欠かせません。

――かなり多くのサービスを活用されているのですね。今は世の中にサービスが溢れていて、どれを導入するか悩む方も多いかと思いますが、どのような観点でサービス導入を検討されているのですか?

伊藤さん:当たり前のようではありますが、中長期でのコストとリターンを比べ、ROI(投資利益率)によって判断していますね。今は、年間数千万円するようなソフトウェアを使うよりは、自社にあったクラウドサービスを複数連携して運用する時代になってきているように感じています。ですから、サービスの導入検討時は、他の領域のサービスも含めたエコシステムの全体像を考えていますね。

このように、今後のバックオフィス担当には、効率化のために自社にマッチしたサービスを導入し、APIを活用するなどサービス同士を柔軟に連携させて、最適なエコシステムの設計図を描く役割が求められるんじゃないかなと。まるでシステムのプロダクトマネージャーのように、全体を俯瞰して、従業員体験を設計するスキルが必要になると思います。

――たしかに、デジタルシフトが進む中で、テクノロジー観点を持った上でいかに「働き方」を設計するかが大きなポイントになりそうですね。

製造業におけるバックオフィスの新たなスタンダードを牽引

――それでは、今度は労務を担当されている森田さんに質問です。キャディのバックオフィスはテクノロジー活用によって効率化を進められていますが、効率化を進めた先に目指す姿はありますか?

森田さん:伊藤が語ったように、まずは自社において「本質的な業務に集中できる体制」をいかに作るかが最重要ではあるのですが、ゆくゆくは製造業のバックオフィスの新たなスタンダードを築いていけたらと思っています。

製造業は、業態的に請求書が多い割に、紙とハンコでのやり取りがほとんど。まだまだアナログな世界です。

キャディが先陣を切って、業界内の他の企業がお手本にしたくなるようなバックオフィスを作り、ナレッジを積極的に発信していくことで、製造業全体に貢献していきたいです。

――自社だけではなく、業界全体を盛り上げる。とても素敵な考え方ですね! どのようにして、「製造業のバックオフィスの新たなスタンダードを築く」というビジョンを描くに至ったのですか?

森田さん:「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」というコーポレートミッションがベースにありますね。自社プロダクトの「CADDi」は、独自のアルゴリズムで3D図面を解析をするなど、これまでにない「新しい仕組み」で日本のモノづくりをアップデートしていく思想が元になっており、バックオフィスでも同様に、伝統的な業界を変えていく仕組みを作っていきたいと考えています。

新しいことをやっていくと「そんなの無理だよ」「できっこない」と言われることもありますが、キャディのカルチャーとして明文化されている「青臭くピュアな理想を持ち続ける」「仕組みで非連続をつくる」などの価値観を体現するべく、前向きに取り組んでいます。

コミュニケーションの工夫で、「労務を明るく面白く」

――企業カルチャーがプロダクトにもコーポレートにも浸透しているのが伝わります。ちなみに、先程まではテクノロジーの話がメインでしたが、労務担当者として従業員とコミュニケーションをとる上で、森田さんがこだわっているポイントはありますか?

森田さん:できるだけ労務関連の情報発信において、親近感を持ってもらうようなコミュニケーションを心がけていますね。たとえば、Slackで勤怠関連の連絡をする時にemojiやテキストで少しだけクスリと笑えるような要素を混ぜるんです。そうすることで、固くなりがちな連絡が注目されやすくなったり、従業員からの反応がよくなったりします。もちろん、シチュエーションによって伝え方は変えています。

森田さんのツイート

――これは目に留まりますね(笑)。こういった、人間味のあるコミュニケーションの工夫ひとつで従業員さんの反応も変わりそう……!

森田さん:そうですね。実際に「森田のユニークな連絡によって、以前より『しっかり勤怠やらなきゃ』と思うようになった」といった声もいただいています。労務って、従業員からすると一見難しく見えがちな領域だからこそ、いかに明るく面白くしていくかがポイントかなと。

私は、採用から労務に異動してきたのですが、異動当初、社労士さんから「あなたがこれから担当する労務の仕事は、地味で暗い作業が多いので……」という書き出しのメールをいただいたことがあります。

それを見た瞬間、「私が労務を明るくするぞ!」と強く思いました。実際担当してみてわかりましたが、労務はすごくクリエイティブな仕事です。まだまだ至らない点は多いですが、製造業の労務を明るくできるように、精進していきたいと考えています。

――最後に、伊藤さん、森田さんから一言ずつ今後の抱負をいただけますでしょうか。

伊藤さん:以前、Slackの使い方についてのnoteを書いた際に、同じ製造業の方から、「あれ、どうやってるの?」とたくさん反響をいただいたんです。

このように、製造業ではまだまだITに詳しい人たちが少ないので、まずはキャディが事例を作り、ノウハウを業界全体に浸透させて、盛り上げていきたいです。コロナの影響で少しずつ「今のやり方じゃまずい」と危機感を持った経営者の方も増えているので、いろんな人と力をあわせて、新しいバックオフィスのあり方を追究していきたいです。

森田さん:自社の話だと、社員一人ひとりが自分自身に関わる労務については、ひととおり理解できている状態を目指したいですね。社会保険や住民税、勤怠の計算方法など、労務領域ってすごく自分の生活に密着しているのに、どうしても理解されにくいことが多いと思います。だからこそ知識の浸透や、それによる課題抽出を通じて、働きやすい環境を作っていきたいです。

――伊藤さん、森田さん、ありがとうございました! 

【編集後記】キャディの経営管理本部はここがスゴい!(後編)

キャディの大事にする価値観がまとめられたカルチャーブック

前編に引き続き、インタビューを終えて、キャディの人事の「ここがスゴい!」と感じたポイントをまとめてみました。

  • 8種類ものHRテクノロジーとアウトソーシングによって、業務効率化を進めている
  • 点ではなく、HRテクノロジーの「エコシステムの全体像」を考えた運用
  • 自社だけでなく、「業界」を主語にナレッジを届ける視座の高さ
  • テクノロジーに強いだけでなく、従業員コミュニケーションにおいて、労務を身近に感じてもらえるような社内発信の実践
  • 「青臭くピュアな理想を持ち続ける」「仕組みで非連続をつくる」などの企業カルチャーの浸透

自社の成功だけでなく自らが事例となって、業界全体に貢献していくという、バックオフィスをひとつの「モノづくり」のように捉えている点にキャディらしさを感じました。

また、テクノロジーによる仕組み化と、従業員コミュニケーションにおける「人間くさい工夫」を両立されている点も魅力的です。テレワークによってテキストコミュニケーションがメインになる時代においては、こういった遊び心のある発信ができるかどうかで、従業員の反応も大きく変わるのではないでしょうか。そして、従業員コミュニケーションの話をされる際に、森田さんや伊藤さん自身がすごく楽しそうだったのが印象に残りました。

これからのキャディ経営管理本部のご活躍に、ぜひともご期待ください!

最大2週間かかっていた入社手続きが、1日で完了。「コーポレート3.0」実現に不可欠な存在

大久保志朗

SmartHR Mag. 編集長。リラクゼーションサロン運営会社、デジタルマーケティング支援会社、フリーランスの編集者・ライターを経て2019年SmartHRにジョイン。カレーとインターネットをこよなく愛する。
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